プレスリリース
大阪商工会議所は、会員企業における技能実習制度および特定技能制度の活用状況と両制度の課題を把握し、事業運営、要望等の基礎データとするため調査を行い、このほど結果を以下のとおり取りまとめました。
調査の概要
◆調査期間:2021年11月17日(水) 〜 12月3日(金)
◆調査方法:調査票の発送は郵送、ファクシミリ、メール。回収はファクシミリ、メール。
◆調査対象:大阪商工会議所の会員企業および事業利用企業のうち、主として特定技能制度の対象産業分野、技能実習制度の対象職種・作業に関連する企業 5,436 社
◆有効回答数(回答率):765社(14.1%)
調査結果のポイント
I.特定技能制度の活用状況
○特定技能制度の活用実績がある企業は1割超(11.4%)。
○現在の制度の担い手は、技能実習修了者等の日本に在留する外国人材が中心。
○特定技能外国人材に対しては、実務経験や日本語コミュニケーション力など、即戦力としての期待が高い。
II.特定技能外国人材を雇用しない要因
○技能実習制度の対象職種・作業と特定技能制度の対象産業分野との不一致。
・技能実習制度のみ活用実績のある企業が、自社で技能実習を修了した外国人材を特定技能制度で継続雇用しない理由は、「自社の産業分野が特定技能制度の対象外であること」(37.3%)が最多。
○特定技能制度の内容やメリット等の周知が不十分。
○技能実習制度による受け入れ定着による特定技能制度活用ニーズの低さ。
III.今後、特定技能制度の普及に必要な施策
1.特定技能制度の活用実績がある企業のニーズ
○在留期間の延長、家族帯同の拡大
○特定技能外国人材のマッチング
2.特定技能制度を活用していない企業のニーズ
○特定技能制度活用のインセンティブとなる施策
・受け入れに関する支援策の拡充(助成金、専門家による指導等)
・優良な支援機関の推奨
3.技能実習制度のみ活用実績がある企業のニーズ
○在留期間の延長
○特定産業分野の対象拡大
・回答企業から要望があった主な分野は、製造業(縫製、プラスチック加工、段ボール製造、印刷)、建設業(施工管理、建築塗装、タイル張り、配管)、介護(訪問介護)等。
調査結果
I.技能実習制度の活用状況について
1-1. 在留資格「技能実習」による外国人材の採用状況
〜技能実習生の採用実績がある企業は2割強
○技能実習生の採用実績がある企業は2割強(21.1%)(「現在採用しており今後も採用予定」(14.4%)、「現在採用しているが、今後は採用しない」(2.1%)、「過去に採用したが、現在は採用していない」(4.6%)の合計)となった。
1-2. 自社での技能実習を修了した外国人材への対応
〜4割台半ばが特定技能制度を活用し外国人材を継続雇用
○技能実習生の採用実績がある企業に対して、自社での技能実習を修了した外国人材への対応について尋ねたところ、4割台半ば(43.5%)が「『特定技能』の在留資格を申請し、自社で継続雇用する」と回答。「『特定技能』以外の在留資格を申請し、自社で継続雇用する」(16.8%)、「自社の海外拠点で雇用する」(12.4%)を含め、技能実習を修了した外国人材を継続雇用する企業は半数を超えた(56.5%(※1))。
○資本金規模別にみると、「『特定技能』の在留資格を申請し、自社で継続雇用する」(3億円以下46.7%、3億円超26.9%)、「自社の海外拠点で雇用する」(3億円以下10.4%、3億円超23.1%)などの回答で、企業規模により差が見られた。
○一方、「自社との雇用契約を終了し、実習生を帰国させる」(60.9%)と回答した企業の中には、自社の業種が特定技能制度の対象産業分野に該当しないため技能実習修了者の継続雇用を断念するケースもあった。
(※1)本問は複数回答となるが、「『特定技能』の在留資格を申請し、自社で継続雇用する」、「『特定技能』以外の在留資格を申請し、自社で継続雇用する」、「自社の海外拠点で雇用する」のいずれかを1つ以上選択した企業数を集計すると、161社中91社(56.5%)となった。
II.特定技能制度の活用状況について
2-1. 在留資格「特定技能」による外国人材の採用状況
〜採用実績がある企業は1割超
○特定技能外国人材の採用実績がある企業は1割超(11.4%)(「現在採用しており今後も採用予定」(8.2%)、「現在採用しているが、今後は採用しない」(1.4%)、「過去に採用したが、現在は採用していない」(1.8%)の合計)となった。
○一方、今後特定技能外国人材を採用予定の企業は1割台半ば(14.9%)(「現在採用しており今後も採用予定」(8.2%)、「今後採用予定(または検討中)」(6.7%)の合計)となり、現状から若干の増加が見込まれる。
2-2. 採用する特定技能外国人材の採用ルートについて
○特定技能外国人材の採用実績がある企業に対して、採用する外国人材の採用ルートについて尋ねたところ、7割超(71.6%)の企業が自社・他社人材を含めた「日本に在留する技能実習修了者(修了見込含む)」と回答。「日本に在留する『特定技能試験(※2)』合格者」を採用する企業も5割弱(47.7%)となり、現在の特定技能制度の担い手は、日本に在留する外国人材が中心となっている。
○一方、海外に在留する外国人材の採用状況については、「海外から来日する『特定技能試験』合格者」(29.5%)、「海外に帰国した技能実習修了者」(23.9%)が共に2割台となった。
(※2)在留資格「特定技能」の取得に必要な日本語能力試験及び技能試験(以下同じ)
2-3. 今後採用したい特定技能外国人材の採用ルートについて
〜日本に在留する外国人材への期待が高い
○特定技能外国人材の採用実績がある企業に対して、今後採用したい特定技能外国人材の採用ルートについて尋ねたところ、4社に3社(75.0%)が「日本に在留する技能実習修了者(修了見込含む)」と回答。「日本に在留する『特定技能試験』合格者」と回答した企業も6割超(61.4%)で、上記2-2.と同様に、日本に在留する外国人材への期待が高い。
○他方、上記2-2.と比較し、「海外から来日する『特定技能試験』合格者」(30.7%)、「海外に帰国した技能実習生修了者」(29.5%)と回答する企業の割合は若干増加した。
2-4. 特定技能外国人材の採用要因
〜実務経験や日本語コミュニケーション力など、即戦力としての期待が高い
○今後採用したい特定技能外国人材の採用要因について尋ねたところ、7割弱(68.2%)が「実務経験があり即戦力として期待できる」と回答。「日本語での円滑なコミュニケーションが期待できる」(53.4%)も半数を超え、特定技能外国人材に対しては即戦力としての期待が高い。
○また、約半数(47.7%)が「日本居住経験があり生活面の不安が少ない」と回答。外国人材の生活サポートの負担が軽減される点も特定技能外国人材を採用する主要因となっている。
III.技能実習制度活用企業が特定技能制度を活用しない要因
3-1. 自社が受け入れた技能実習生を特定技能制度で継続雇用しない要因
〜最大の要因は、自社の産業分野が「特定技能」の対象外であること
○技能実習制度のみ活用実績がある企業に対して、自社が受け入れた技能実習生を特定技能制度で継続雇用しない理由を尋ねたところ、「自社の産業分野が「特定技能」の対象外であること」(37.3%)が最多であった。
○以下、「『特定技能』の内容やメリットがよくわからない(行政などによる制度の周知が不十分)」(16.4%)、「『特定技能』人材は転職が可能となるため、人員計画を立てにくくなる」(13.4%)、「『特定技能』に移行すると人件費コストが上昇する」(11.9%)が上位となった。
3-2. 新たに外国人材を受け入れる際に特定技能外国人材を雇用しない要因
〜3割超の企業では技能実習生の受け入れ定着により、特定技能制度の活用ニーズが低い
○「『技能実習』の受け入れが定着しており、今後も『技能実習』人材を受け入れたい」が3割超(31.3%)で最多となり、以下、「『特定技能』の資格を満たす候補人材が少ない」、「『特定技能』の資格を持つ人材の採用ルートが分からない」(共に10.4%)が続いた。
○他方、「その他」(29.9%)では、回答した20社中6社が、自社の産業分野が特定技能制度の対象外であることを理由に挙げた。
IV.特定技能制度活用企業が技能実習制度を活用しない要因
4-1.技能実習生を雇用しない要因
〜「『特定技能』人材の方が、即戦力として期待できる」が4割で最多
○特定技能制度のみ活用実績がある企業に対して技能実習制度を活用しない理由を尋ねたところ、4割(40.0%)が「『特定技能』人材の方が、即戦力として期待できる」と回答。以下、「自社に『技能実習』の対象職種・作業がない」(33.3%)「『技能実習』は国際貢献を趣旨とし、『特定技能』は外国人の就労を認めた制度である」、「『技能実習』制度自体に様々な問題点がある」(共に26.7%)が続いた。
V.今後特定技能制度の普及に必要な施策
5-1.“全企業”を対象とした集計結果
〜「受け入れに関する支援策の拡充」や「優良な支援機関の推奨」など、特定技能制度活用のインセンティブとなる施策が上位
○全企業を対象とした集計では、「受け入れに関する支援策の拡充(助成金、専門家による指導等)」(31.5%)、「在留期間の延長」(29.5%)、「優良な支援機関の推奨」(22.1%)が上位となった。
○本調査の回答企業の75.2%(※3)は技能実習制度、特定技能制度のいずれも活用していないことから、特定技能制度の活用のインセンティブとなる施策を挙げる企業が多数となった。
(※3) 表1で「技能実習」による外国人材を「今後採用予定(または検討中)」、「採用を検討したが断念した」、「採用したことがない」と回答し、かつ表3で「特定技能」による外国人材を「今後採用予定(または検討中)」、「採用を検討したが断念した」、「採用したことがない」と回答した企業は、全回答企業765社のうち575社(75.2%)となった。
5-2.“特定技能制度の活用実績がある企業”を対象とした集計結果
〜「在留期間の延長」、「家族帯同の拡大」の回答割合が属性別で最多
○特定技能制度の活用実績がある企業を対象とした集計では、6割弱(58.0%)が「在留期間の延長」と回答。次いで「特定技能1号への家族帯同の拡大」(31.8%)、「受け入れに関する支援策の拡充(助成金、専門家による指導等)」(30.7%)が上位となった。
○また、「企業と『技能実習』修了者とのマッチング」、「企業と『特定技能試験』合格者とのマッチング」(共に20.5%)の回答割合が2割を超え、他の属性と比較して特定技能外国人材のマッチングに関するニーズも見られた。
5-3.“特定技能制度の活用実績がない企業”を対象とした集計結果
〜特定技能制度活用のインセンティブとなる施策が上位
○特定技能制度の活用実績がない企業を対象とした集計では、「受け入れに関する支援策の拡充(助成金、専門家による指導等)」(32.0%)が最多。以下、「在留期間の延長」(26.3%)、「優良な支援機関の推奨」(22.7%)、「受け入れに関する相談窓口の拡充」(18.9%)が続き、特定技能制度の活用のインセンティブとなる施策が上位となった。
5-4.“技能実習制度のみ活用実績がある企業”を対象とした集計結果
〜「特定産業分野の対象拡大」の回答割合が属性別で最多
○技能実習制度のみ活用実績がある企業を対象とした集計では、「在留期間の延長」(35.6%)が最多となった。【表7-a】で特定技能制度の活用実績がある企業と同様、外国人材の受け入れ実績がある企業においては、「在留期間の延長」による外国人材の長期的な活躍を期待する傾向が見られた。
○他方、「特定産業分野の対象拡大」(25.6%)の回答割合は他の属性と比較して最も高く、特定技能制度の活用への潜在的なニーズも見られた。なお、自由記述回答で対象分野拡大の希望が複数あった業種は、製造業(縫製、プラスチック加工、段ボール製造、印刷等)13社、建設業(施工管理、建築塗装、タイル貼り、配管等)7社、介護(訪問介護)3社。
VI.技能実習制度、特定技能制度に対する企業の声
○技能実習制度、特定技能制度全般について自由記述で意見を求めたところ、様々な回答が得られた。特に技能試験の出題内容と実際の業務内容との乖離を指摘する声が複数あり、実情に即した試験内容の見直しも今後の課題として挙げられる。
○外国人材の受け入れにあたっては、技能実習制度や特定技能制度の活用実績がある企業からは前向きな意見が多数ある一方、両制度の活用実績がない企業を中心に、慎重な対応を求める意見もあった。
○よって、今後特定技能制度を普及していく上では、企業の利便性を高めるよう制度改善を行うとともに、外国人材の受け入れに慎重な声にも耳を傾け、広く国民の理解を得られるような制度としていくことが必要となる。
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