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プレスリリース

日本ロレアル株式会社

ロレアル リサーチ&イノベーション第33回国際化粧品技術者会連盟(IFSCC)バルセロナ大会にて世界各地の研究拠点における研究結果を報告

(PR TIMES) 2023年10月20日(金)18時45分配信 PR TIMES


世界最大の化粧品会社ロレアルグループの研究開発部門であるロレアル リサーチ&イノベーション(所在地:パリ、フランス、所長:バーバラ ラベルノ)は、2023年9月4-7日にスペインで開かれた「第33回国際化粧品技術者会連盟(IFSCC)バルセロナ大会」に参加し、世界各地にある研究拠点(フランス、アメリカ合衆国、日本、中国、ブラジル、インド、南アフリカ)で行われた最新研究の結果やイノベーションを報告しました。

世界各国の化粧品技術者や研究者が一堂に会するIFSCC大会は、最新の研究成果の発表および討論の場となっています。本年バルセロナで行われた大会の基本テーマは「再考する(リシンキング)」:「科学を再考する」、「美を再考する」、「自然を再考する」。それぞれのテーマの下で発表が行われました。

ロレアル リサーチ&イノベーション(以下、ロレアルR&I)はメインスポンサーの一つとして大会をサポートし、未来&グリーンサイエンス担当バイスプレジデントであるアナ・クルジュイックによる「グリーンサイエンス:美の未来を創出する技術と自然の交差点」と題するキーノート・スピーチ、ワークショップでの講演2件、口頭発表4件、ポスター発表34件を以て参加しました。このうち、2件のポスター発表「AhR経路1)を介したアトピー性皮膚炎における痒みのコントロール:皮膚の微生物由来の天然物質を用いた有望な方法」と「自然化粧品のパラダイム:単純な置換で解決できない場合の処方デザインを再考する」が優秀ポスター10件に選ばれています。展示会場のブースでは「製品の背後にある技術」、「ビューティー・テック」、「グリーンサイエンスの4つの柱」というタイトルでロレアルR&Iの技術紹介がなされ、ラウンドテーブルディスカッションやインタビューが行われました。

また、今回初めて、ロレアル R&Iはスペイン化粧品化学会(Sociedad Espaola de Quimicos Cosmeticos)と協力して、「IFSCCサステナブルチャレンジ」を開催しました。 化粧品やビューティーに関するサステナブル材料、製造技術、製品デザインなど、化粧品産業へのソリューションを持つスタートアップや企業が参加し、ファイナリスト7社がIFSCC バルセロナに招待され、それぞれのソリューションについて審査員とディスカッションした後、リグニンからの高機能アップサイクル製品を提供するリグノベーションズ(Lignovations, オーストリア)と温度や日光によって色を変えるヘア製品を開発したジ・アンシーン・ビューティー(The Unseen Beauty)の2社が受賞しました。

日本のリサーチ&イノベーションからは菅友美研究員らによる「特異な構造を示す新規ポリイオンコンプレックス2)技術を用いた化粧品処方」および、堀星子研究員らによる「北アジアの消費者のまぶたを立体的に見せる単色アイシャドウの新技術」という主題でポスター発表を行いました。

ロレアル リサーチ&イノベーションは「世界をつき動かす美」を創造するために、全世界3,900人の研究員によって開発されたこれらの技術を、ロレアルブランドの様々な製品に応用していきます。

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【参考資料】
優秀ポスター10件に選ばれたポスター発表

「AhR経路1)を通したアトピー性皮膚炎における痒みのコントロール:皮膚の微生物由来の天然物質を用いた有望な方法」
著者:タムトゥヌール・サミラ、ブリマニ・アミナ、プレヴォ-ゲギニア・アメリ、ロベール・ジュリアン、ロゾ・ロジェ、ペルチエ・パスカル、カスティエル・イザベル、ベルナール・ドミニク、モロー・マガリ
研究内容:アトピー性皮膚炎(AD)などの皮膚障害を緩和する手段として、皮膚常在菌が生産する トリプトファンの代謝産物、インドール-3-カルボキシアルデヒド(IAld)は、皮膚そう痒症を軽減する天然分子として注目されています。本研究では、ADの炎症を抑制するIAld類縁体の効果をイン・ビトロモデル3)で検討しました。その結果、2つのIAld類縁体がADにおいて、副作用を誘発することなく、局所適用によってかゆみを緩和する可能性を示しました。ロレアルは、この2つの誘導体によって誘導される経路の違いをさらに調べています。これらの知見は、より健康になるための次世代化粧品開発の基礎となるものと考えています。

「自然化粧品のパラダイム:単純な置換で解決できない場合の処方デザインを再考する」
著者:ビガンスク・オルガ、アニャウ・レダ、マリオン・カトリーヌ、マニャン・アン
研究内容:地球規模の危機的状況において、私たちは従来の製品と同様に感覚的に効果的な、自然で持続可能な製品を開発する責任があります。配合されている合成原料のひとつひとつを天然の同等品に置き換えるのではなく、配合設計全体を見直すという、まったく新しいアプローチを開発しました。天然鉱物のヘクトライトは水媒体中でゲルを形成し、そのマトリックス中に油相(UVフィルターなどの親油性の物質を含む)を均一に分散することができます。このゲルは、皮膚に塗布した後、皮膚表面に長時間持続する化粧膜を形成します。厳密なプロセスにより選択したそれぞれの役割(安定性、官能性、保存性)を果たす成分を、ヘクトライトと組み合わせることによる、化粧品設計の新しい方法を提案しました。

日本からのポスター発表

「特異な構造を示す新規ポリイオンコンプレックス2) 技術を用いた化粧品処方」
著者:菅 友美、五十島 健史、河西 毅彦、ジラン・フラビー、ティライ・ディーパ、ソン・ユエンユエン、ワン・ダイアナ、淺沼 秀彦、小池 徹
研究内容:化粧品に用いられているフィラーと呼ばれる粉体は軽い質感やテカリ防止など、特定の効果を発揮します。みずみずしい感触と高いSPFを両立させるため、油の中に水が分散する構造を採用したサンスクリーン剤を開発しました。ほとんどの場合、環境に優しい天然/バイオベースのフィラーは親水性で油相に分散することが難しいことがあり、フィラーの特性を生かしきれないのですが、IFSCC 2021メキシコで報告されたPGP (Polyion complex Gel Particles) 技術を応用した新しいポリイオンコンプレックス製剤(疎水化PGP)は、その特異な3Dネットワーク構造によって、親水性フィラーを油相に効果的に分散させ、フィラーの性能を十分に発揮させることができました。
この技術を用いた化粧品処方は、塗布後の皮膚表面に生成される微細な凹凸が汗や皮脂にさらされることでさらに増大し、光の乱反射が増加することにより長時間マットな外観を保ちます。また、従来の処方よりもフィラーの分散性が向上したため、SPFが向上するなど製品の性能を高めることができました。さらに、この処方のノンオイリーでべたつかない感触と軽いテクスチャーは、消費者に高く評価されました。

「北アジアの消費者のまぶたを立体的に見せる単色アイシャドウの新技術」
著者: 堀 星子、一階 文良、山本 枝摩、横山 恵美理、林 玲奈、ジャスパース・アレクサンダー
研究内容:北アジアの消費者に好まれる「3Dルック」と呼ばれる、大きく自然な彫りの深い目元をメイクアップで実現すために、従来のアイシャドウでは、複数の色と重ね付けのテクニックが必要でした。今回、自動車の塗装技術からヒントを得て「3Dルック」を実現する主な要素を検討し、ハイライト効果を示す高反射材料とシャドー効果を示す低反射材料を組み合わせ、明るさのコントラストと自然なグラデーションを実現するための材料粒度の調節によって、単色でも簡単に「3Dルック」を実現することができるアイシャドウを開発しました。また、この研究過程において実際のまぶた上で「3Dルック」を評価する方法も開発しました。
開発された単色のアイシャドウは、まぶたの上での「立体感」を標ぼうするこれまでの単色アイシャドウや多色のアイシャドウよりも、はっきりとした「3Dルック」を示すことが示されました。この技術はシュウ ウエムラのアイシャドウに応用されています。

用語解説

1) AhR経路:環境汚染物質であるダイオキシン類や多環芳香族炭化水素類の受容体であるアリール炭化水素受容体(AhR, Aryl hydrocarbon Receptor)を介した生体反応経路。遺伝子転写を活性化する経路が以前から知られていたが、近年その経路とは別に、炎症反応にかかわる様々な細胞内シグナルや転写因子の活性化が誘導される経路が存在することがわかった。
2) ポリイオンコンプレックス:陽電荷9を持つポリマーと陰電荷を持つポリマーを混合すると、それぞれのポリマー中の陽電荷と陰電荷がイオン結合を形成し複合体(コンプレックス)を構成する。この複合体は、イオン結合近傍の親水性部位と高分子鎖が集合している疎水性部位が不均一に分散して存在する構造を持ち、近年新しい機能性素材として注目されている。
3) イン・ビトロモデル:in vitro(イン・ビトロ)とは、“試験管内で(の)”という意味で、ヒトや動物の生体によらず、それらの組織あるいは培養された細胞を用いて、体内と同様の環境で薬剤などの外部刺激による生体反応を検出する方法である。この研究では、ヒト培養ケラチノサイトを用い、アトピー性皮膚炎と同様な症状を示すヒト再構築表皮モデルを作成して試験に用いている。

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ロレアルグループについて


ロレアルは110年以上にわたり美容・化粧品業界のリーダーとして、世界の消費者の美の希求とニーズに応えることに専念してきました。当社のパーパス「世界をつき動かす美の創造」は、社会に対しても、環境に対してもサステナブル、インクルーシブ、倫理的かつ寛大な形で美を通じて貢献していくという私たちの美への姿勢を包括的に表現するものです。36の国際ブランドを初めとする多様で幅広いブランドポートフォリオと、持続的発展と環境を守るための取り組みである「ロレアル・フォー・ザ・フューチャー」プログラムを通じ、美の無限の多様性を賛美し、世界のすべての人々に最高水準の品質、有効性、安全性、誠実さ、責任をお届けします。当社は、87,400名の従業員を擁し、地理的にもバランスの取れた拠点展開と、すべての流通網(eコマース、マスマーケット、百貨店、薬局、美容室、ブランドおよび旅行小売)における販路を有しています。2022年のグループ売上高は382億6千万ユーロにのぼります。世界11ヵ国に20の研究開発と研究開発拠点を置き、4,000人以上の科学者と5,500人以上の技術系の専門家を擁するロレアルは、美の未来を創造し、ビューティーテクノロジーを推進してゆくことを重要視しています。詳細については、以下をご参照ください。https://www.loreal.com/en/mediaroom

日本ロレアル リサーチ&イノベーションセンターについて


日本における研究開発は 1983 年にスタートし、現在、日本ロレアル リサーチ&イノベーションセンター (所在地:川崎市、所長:アミット・ジャヤズワル)として、戦略的なイノベーション拠点としての役割を担っています。数ある外資系化粧品企業においても、もっとも歴史ある研究開発部門であり、いち早く日本の文化、歴史、社会を深く理解し、200 名以上の研究員が、ラグジュアリーブランドをはじめ、グループの各ブランドおよび様々なカテゴリーの製品開発を行っています。代表的なブランドはランコム、シュウ ウエムラ、キールズ、イヴ・サンローラン・ボーテ、ケラスターゼ、ロレアル プロフェッショナル、メイベリン ニューヨーク、TAKAMIなど。
https://www.loreal.com/ja-jp/japan/articles/science-and-technology/beauty-research-and-innovation

国際化粧品技術者会連盟(IFSCC)について


国際化粧品技術者会連盟(IFSCC)は1959年に設立され、現在では世界各地81地域におよぶ51の化粧品技術者会が加盟し、総会員数は約16,000名に上ります。毎年、各地域の技術者会が主催する学術大会(Congress) には、各国の化粧品技術者が一堂に会し、最新の研究成果を発表し活発な討論が行われています。
https://ifscc.org/





プレスリリース提供:PR TIMES

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