プレスリリース
コロナ禍を経験したことによる気持ちの変化として、9割以上が「感染症には国境がない」と実感。7割以上が「保健ODAを増加すべき」と回答。
● 2022年2月、全国15歳〜69歳の計1,578名に対し、意識調査を実施
● 感染症分野の国際協力に対する関心や支持の世代間格差、そして保健ODAを増加することへの期待について、一般の意識と実際のODAとの大きなギャップが判明
(公財)日本国際交流センター グローバルファンド日本委員会は、2022年2月、「世界の感染症に対する日本の国際協力に関するアンケート調査」と題し、新型コロナウイルス感染症(以下新型コロナ)のパンデミックを経験したことによる感染症への理解の変化や、開発途上国の感染症や保健医療分野に対する国際協力について、一般の人々の意識を把握し、政策提言活動の基礎資料とする目的で全国意識調査を実施致しました。
主な調査結果は下記の通りです。また、回答者属性などを含む詳細はフルレポートに掲載しています。こちら(
https://fgfj.jcie.or.jp/topics/2022-03-23_perception_survey)をご覧ください。
調査結果サマリー 主要4点
新型コロナ感染症の経験をうけた気持ちの変化として、9割以上(93.2%)が「感染症には国境がないということがわかった」を選択。地域別にみると、「そう思う*」と回答した人の割合は、「九州・沖縄地方」が最も高い。( *「とてもそう思う」、「そう思う」のTop2計)
回答者の7割以上が、感染症や保健医療分野の国際協力を支持。 ・新型コロナ以外にも世界には多くの感染症が流行していることを述べた後、「日本は開発途上国の感染症に対して支援を行うべきだと思うか」との質問に対し、回答者の78.5%が「行うべきだと思う」(*同上)と回答。
・「日本は保健分野のODAを増やすべきだと思うか」との問いに対し、72.2%が「そう思う」(*同上)と回答。
・開発途上国のコロナ対策支援を増やした結果、2020年の日本の保健分野ODAが前年の約3倍に増えたことに対して、72.4%が「良いことだと思う」(*同上)と回答。
男女を比較すると、女性の方が開発途上国の感染症に関する関心が高く、保健医療分野の国際協力への支持も高い。特に、女性は、ODAでの取り組みが重要な分野として保健を選択(複数回答)した人の割合が、全世代にわたり最も高い。
年代別では、若い年代(特に男性の15〜39歳)の関心値が特に低い。「開発途上国のコロナの情報は聞いたことがない/わからない」と答えた人(全体では11.95%)を年代別で見ると、男性20代と男性30代で回答した人が最も多く、いずれも22.3%である。また、新型コロナのワクチンや検査、治療について、先進国と途上国の間で深刻な不平等があるといわれていることについて、「知らなかった」と答えた人の割合を職業別に見ると、学生が最も多く、30.9%である。
公益財団法人日本国際交流センター執行理事でグローバルファンド日本委員会事務局長を務める伊藤聡子は、本調査について以下のように述べています。
感染症分野の国際協力に対する関心や支持の世代間格差がみられます。60代は男女ともに関心が高く支持する人の割合も高い一方、若い世代(特に10代~30代の男性)は関心が低く、支持する人の割合は他の世代より低い結果となりました。
世代間格差がなぜ生まれるのかについて、特に感染症分野については、若い世代に届くようなメッセージが欠如していること、若い世代に情報が伝わる経路が利用されていないこと、気候変動や環境問題のように若い世代の活動家が感染症分野にはいないことなどが原因として考えられます。今後、若い世代の理解と支持を得ていく工夫が求められると観察します。
保健ODAを増加することへの期待について、一般の意識と実際のODAとの大きなギャップがあることがわかりました。日本のODAは、インフラ、エネルギーが多く、保健分野のODAの割合は5.4%にとどまっているのが現状ですが、7割以上の人が、日本のODAにおける保健分野の支援の割合を増やすべきだと回答しています。他の先進主要国のODAは、保健、難民、人道支援、教育など社会開発や人道分野の支援が多い傾向で、日本のODAが顕著に異なっていることに注目しています。
他方、新型コロナ対策の支援増により2020年の保健ODAはおよそ三倍に増加したと推定され、変化の兆しがみられます。この増加した実績に対しても、本調査では7割以上が「良いこと」と好感度が高いことも特徴です。
総括として、伊藤は以下のように述べています。
「新型コロナ感染症を経験し、感染症による危機は、医療にとどまらず経済や社会に甚大な影響を及ぼすことが自明になりました。現在、国際社会では、危機時の資金動員と、二度とパンデミックを起こさないための平時からの備えの拡充の双方で、保健への「投資」の拡大が喫緊の課題となっています。それは、気候変動と同様な地球規模課題の解決に向けた国際的な連帯であり、またひるがえって自国の安全保障への投資でもあります。日本政府には、2020年の保健ODAの増額を一過性の緊急対応に終わらせず、引き続き抜本的な資金の拡充、より費用対効果の高い支援方法の模索、さらにODA以外の公的資金や民間資金の動員の検討など、グローバルな感染症問題に対するコミットメントの強化を期待します。」
調査概要
目 的:公益財団法人日本国際交流センター グローバルファンド日本委員会(FGFJ)では、新型コロナウイルス感染症のパンデミックを経験したことによる感染症全般への理解の変化や、開発途上国の感染症や保健医療分野に対する国際協力について、一般の人々の意識を把握するため、オンライン調査を実施した。グローバルな感染症問題を解決する上で日本がより積極的な役割を果たせるよう政策提言活動の基礎資料とする。
調査主体:公益財団法人日本国際交流センター グローバルファンド日本委員会
調査方法:スマートフォンユーザーを対象とするインターネット登録モニターを用いたウェブ調査。令和2年国勢調査人口等基本集計(2020年10月)における全国15〜69歳の日本人人口より人口構成比を算出し、性・年代ごとの回収数を設定した。
調査対象者:全国15歳〜69歳
有効回答数:1578名
調査時期:2022年2月24日(木)〜2月26日(土)
世界エイズ・結核・マラリア対策基金(グローバルファンド)について
グローバルファンドは、低・中所得国の三大感染症対策を支える官民連携基金。G7を初めとする各国の政府や民間財団、企業など、国際社会から大規模な資金を調達し、低・中所得国が自ら行う三疾病の予防、治療、感染者支援、保健システム強化に資金を提供しています。2002年の設立以来、グローバルファンドの4400万人の命が救われた2020年以降の新型コロナ対策では、ACTアクセラレーターの主管機関として、検査、保健システム、治療で大きな役割を担っています。2000年のG8九州・沖縄サミットで、議長国日本が感染症対策を主要課題として取り上げ、追加的資金調達と国際的なパートナーシップの必要性についてG8諸国が確認したことが、グローバルファンド設立の発端となりました。このことから、日本はグローバルファンドの「生みの親」のひとつと言われています。https://www.theglobalfund.org/en/
グローバルファンド日本委員会(FGFJ)について
グローバルファンド日本委員会は、世界エイズ・結核・マラリア対策基金(グローバルファンド)を支援する日本の民間イニシアティブ。グローバルファンドに対する理解を促進するとともに、感染症分野における日本の役割を喚起し、政策対話や共同研究、国際シンポジウム、視察プログラム、一般向けの意識啓発などを実施しています。(公財)日本国際交流センターのプログラムとして運営されています。
グローバルファンド日本委員会 http://fgfj.jcie.or.jp/
(公財)日本国際交流センター https://www.jcie.or.jp/japan/
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