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アグロデザイン・スタジオ

アグロデザイン・スタジオ、Preferred Networksとの共同研究で、除草剤抵抗のある変異酵素に有効な阻害剤を創出

(PR TIMES) 2022年03月07日(月)09時45分配信 PR TIMES

日本農薬学会第47回大会で共同研究の成果を発表

農薬スタートアップの株式会社アグロデザイン・スタジオ(本社:千葉県柏市、代表取締役社長:西ヶ谷有輝、以下アグロデザイン)は、株式会社Preferred Networks(https://preferred.jp、以下PFN)との共同研究として、新規除草剤の創出を試みております。2021年4月の研究開始以降、両社の持つタンパク質構造解析技術、AI創薬技術、バイオアッセイ技術を組み合わせることで、農薬の作用点として知られるアセト乳酸合成酵素(Acetolactate synthase:ALS)を分子標的とした低分子化合物の創出を行い、複数の農薬リード化合物※1の創出に成功しております。今回、本リード化合物がアセト乳酸合成酵素の除草剤抵抗性変異に有効であることが酵素アッセイによって確かめられましたので、現在開催中の日本農薬学会第47回大会にて発表いたします。
近年、農薬は安全性基準の厳格化に起因する開発期間の長期化(11年以上)や開発費の増大(平均300億円以上)が課題となっており※2、より効率的な創農薬技術が求められています。

こうした背景から、安全性の課題を解決する手法として、分子標的農薬が有望視されています。分子標的農薬は、防除対象生物(雑草・害虫・植物病原菌など)が持つ酵素など特定のタンパク質分子を標的として結合することで、その酵素の働きを阻害し、結果として除草・殺虫・殺菌をする農薬です。標的分子として、対象生物のみが持つ酵素を選定することで、ヒトや動物に対する毒性リスクの低い農薬の開発が可能となります。

本共同研究では、除草剤の標的分子として植物のアセト乳酸合成酵素に着目しました。アセト乳酸合成酵素は、ロイシンなどの分岐鎖アミノ酸の生合成経路においてアセト乳酸を合成する重要な酵素です。この酵素を標的にすることで、低薬量で高い除草作用を示す農薬の開発が可能です。また、この酵素自体が動物には存在しないため、この酵素を標的とした農薬は安全性の高い農薬となりえます。実際、1970年代からスルホニルウレア系除草剤をはじめ多数の剤が開発されており、除草剤の中では大きな分野を占めています。一方、これら既存薬に対する抵抗性雑草の出現が深刻となっており、その原因としてアセト乳酸合成酵素を構成するアミノ酸残基の点変異があげられます。そのため抵抗性雑草対策剤として、変異型アセト乳酸合成酵素に効果のある新規化合物が望まれています。

そこで、2021年4月より両社でアセト乳酸合成酵素を標的とした新規除草剤の創農薬に関する共同研究を開始しました。この共同研究において、アグロデザインによる結晶構造解析※3と酵素および植物に対する試験技術、PFNのAI創薬プラットフォームによるin silicoスクリーニング※4などを組合わせて、約半年間で複数の新規な農薬リード化合物の創出に成功しております(一部成果は、2021年11月5日の第94回日本生化学会大会にて発表済)。


今回、それら新規リード化合物を対象に、抵抗性変異型酵素に対する阻害効果の解析を行いました。その結果、新規ケモタイプ(化合物骨格タイプ)である複数のリード化合物が、アセト乳酸合成酵素の抵抗性変異体(アミノ酸の点変異体)に対して有効であることが、in vitro(試験管内)試験で判明しました。特に、より有効な阻害剤が求められているW574L変異型アセト乳酸合成酵素に対して、野生型(変異がないタイプ)の酵素と同等に効果がありました。このことは、本共同研究で行った一連の創農薬アプローチによる新規ケモタイプ取得が、抵抗性対策にも有効だということを示唆しております。


今後、投資やパートナー農薬関連会社を募集することにより、実用化に向けた研究を加速させていきます。なお、本共同研究の成果の一部は、現在開催中の日本農薬学会第47回大会において発表いたします。


-----講演情報-----------------
日本農薬学会第47回大会(オンライン開催)
講演番号:Da05
講演時間:2022年3月8日10:10〜10:25
演題:タンパク質立体構造情報を利用した新規 ALS 阻害型除草剤の探索
講演者:田中良樹(アグロデザイン・スタジオ)
オーサーおよび所属:
田中良樹1、氏原一哉2、坂井直樹3、武本瑞貴2、森脇寛智1、佐藤 匡史1、JK Stanfield1、平田邦生3、竹下浩平3、石谷隆一郎2、山本雅貴3、力丸健太郎2、西ヶ谷有輝1
1 株式会社アグロデザイン・スタジオ
2 株式会社Preferred Networks
3 理化学研究所 放射光科学研究センター
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【備考】

リード化合物:本格的な創農薬過程に進むのに十分な性質を有することが実験で示された化合物。リード化合物の特定は創農薬の出発点で、その後に薬効や安全性を高める過程(最適化)に入ります。
参考資料:農薬工業会ウェブサイト
アセト乳酸合成酵素と薬剤の複合体構造の解析実験には、自動化により迅速なタンパク質結晶化・X線回折実験・データ解析処理が可能な『SPring-8リガンドスクリーニングパイプライン(理化学研究所 放射光科学研究センター)』を利用しました。
in silicoスクリーニング:コンピューター(シリコンチップの中)で行う化合物探索。


●株式会社アグロデザイン・スタジオについて
https://www.agrodesign.co.jp
新規な農薬原体(有効成分の化合物)の研究開発を行うことを目的に、2018年3月に創業。防除対象生物(害虫・雑草・病原菌など)がもつ『ヒトには無いタンパク質』を薬剤標的とすることで、分子標的農薬というコンセプトの毒性リスクが低い農薬を開発中。
住所:〒277-0882 千葉県柏市柏の葉6-2-3 東京大学 柏IIキャンパス 産学官民連携棟306
代表取締役社長:西ヶ谷 有輝(にしがや ゆうき)
設立日:2018年3月30日

プレスリリース提供:PR TIMES

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