• トップ
  • リリース
  • 人工知能(AI)を用いた頭痛診断モデルを開発 糸魚川総合病院・富永病院頭痛センター・埼玉精神神経センター共同研究

プレスリリース

  • 記事画像1
  • 記事画像2

新潟県厚生農業協同組合連合会 糸魚川総合病院

人工知能(AI)を用いた頭痛診断モデルを開発 糸魚川総合病院・富永病院頭痛センター・埼玉精神神経センター共同研究

(PR TIMES) 2023年01月31日(火)14時15分配信 PR TIMES

―問診票を記載するだけで91%の精度で片頭痛を診断―

糸魚川総合病院 脳神経外科 (新潟県糸魚川市)、富永病院 頭痛センター (大阪府大阪市)、埼玉精神神経センター (埼玉県さいたま市)の共同研究チームは、頭痛問診票で得られる17項目の情報のみから、片頭痛、緊張型頭痛、三叉神経・自律神経性頭痛、その他の一次性頭痛、脳血管障害などの二次性頭痛、の5種類の頭痛を、正解率76%、感度56%、特異度92%で診断できる人工知能(AI)を開発しました。特に専門医の治療が必要な片頭痛の診断精度は91%、三叉神経・自律神経性頭痛の診断精度は84%でした。このAIを用いることで非頭痛専門医の頭痛診断精度は46%から83%まで向上しました。

本研究は国際頭痛学会の公式医学雑誌「Cephalalgia」に掲載されることが2023年1月27日に決定しました。
 
【背景】
日本における片頭痛の年間有病率は8.4%で、20-40歳代の若年女性に多いと言われています。片頭痛を含め頭痛の大半は命に関わることはなく軽視されがちですが、片頭痛による欠勤や休業、学業や労働のパフォーマンス低下などによる間接的経済損失は1人あたり176万円/年と言われています。片頭痛を含め頭痛の多くは、1.痛いときに飲む「痛み止め」の適切な選択と使用 2.痛くなって困らないように頭痛の重症度や頻度を改善する「予防薬」の使用 の2本柱の治療により、生活への支障を最小限にコントロールすることができます。そのため、月に2回以上頭痛があるなど、頭痛によって普段の生活に支障をきたしている場合は医療機関で適切な診断・治療を受けることが、患者さん自身の生活の質の向上および日本の経済発展のために重要です。
[画像1: https://prtimes.jp/i/115401/5/resize/d115401-5-b250ce8b167b33a09957-0.png ]


特に生活に支障を及ぼす片頭痛は、2021年に登場したCGRP関連製剤を含む予防治療で大部分のコントロールが可能です。片頭痛でお困りの患者さんを正確に片頭痛と診断し、頭痛専門医や脳神経内科・外科医などによる専門的治療介入を行うことが求められています。また緊張型頭痛や三叉神経・自律神経性頭痛は片頭痛と治療方法が異なるため、誤った頭痛の診断は治療の遅れや増悪に繋がります。しかし、約1000万人以上いると推測される片頭痛患者さんに対し、頭痛専門医はわずか949名しかおらず、片頭痛患者さんの多くは非頭痛専門医によって診断・治療されています。頭痛の診断を正確に行うためには長時間の問診が必要なため医師の負担が大きく、患者さんの多くは医療機関の受診を躊躇し、正しい頭痛の診断がされないまま痛み止めだけを使用している現状があります。頭痛に対する正しい治療を行わず痛み止めを使いすぎると、慢性片頭痛や痛み止めの使いすぎによる頭痛(薬剤の使用過多による頭痛、薬物乱用頭痛)を発症し、難治性になります。

 頭痛診療に携わる医師の負担を軽減し、正しい頭痛の診断をサポートするために、問診票を入力するだけで頭痛診断をするAIの開発を行いました。

【方法と結果】
富永病院頭痛センターの4000名の匿名化された問診データおよび頭痛専門医による5種類の診断名(片頭痛、緊張型頭痛、三叉神経・自律神経性頭痛、その他の一次性頭痛、脳血管障害などの二次性頭痛)のうち、2800名のデータをAIに学習させ、問診票の17項目を入力することで5種類の診断のそれぞれの確率を提示するAIを開発しました。1200名のデータで精度を検証したところ、正解率76%、感度56%、特異度92%でした。
このAIの有効性を検証するために、非頭痛専門医5名に、50名の頭痛患者さんを問診票にもとづき診断をしてもらいました。頭痛専門医による診断名を正解とし、非頭痛専門医の診断精度を検証しました。AIなしでの頭痛診断精度は46%でしたが、AIを用いることで83%に向上しました。非専門医間での診断一致率も改善しました。とくに専門的治療が必要な片頭痛と三叉神経・自律神経性頭痛のAIによる診断精度は100%でした。

【今後の展望】
●頭痛患者さんへの希望
今回開発したAIは問診票17項目だけで5種類の頭痛診断を行うことができ、放射線学的検査や血液検査などを必要としません。オンライン診療やスマートフォンアプリなどに組み込むことで、より広く利用していただき、誤った診断や自己判断などで正しい頭痛の診断が得られていない患者さんが、正しい頭痛の診断を得られるきっかけとなる可能性があります。
[画像2: https://prtimes.jp/i/115401/5/resize/d115401-5-b1ddc41ca5713e257057-1.png ]


●頭痛診療医の負担の軽減
頭痛患者さんの問診にかかる時間を削減し、頭痛専門医・非頭痛専門医にかかわらず負担を軽減できる可能性があります。また専門医の治療が必要な片頭痛や三叉神経・自律神経性頭痛の患者さんを見落とすことを防ぎ、プライマリーケア医と専門的頭痛治療センターとの連携促進につながる可能があります。

●実地検証
今後、複数の医療機関や企業などにおいて、今回開発したAIの有用性をさらに検討していく予定です。

(論文情報)
論文名 Developing an Artificial Intelligence-Based Headache Diagnostic Model and Its Utility for Non-Specialists' Diagnostic Accuracy
著者 Masahito Katsuki, Tomokazu Shimazu, Shoji Kikui, Daisuke Danno, Junichi Miyahara, Ryusaku Takeshima, Eriko Takeshima, Yuki Shimazu, Mitsuhiro Matsuo, Takao Takeshima
掲載誌 Cephalalgia https://headachejournal.onlinelibrary.wiley.com/
DOI 10.1177/03331024231156925
プレプリント 10.13140/RG.2.2.24307.20008

共同研究グループ
糸魚川総合病院 脳神経外科
 勝木将人
富永病院 頭痛センター 脳神経内科
 竹島多賀夫
 菊井祥二
 團野大介
 宮原淳一
埼玉精神神経センター 脳神経内科
 島津智一



プレスリリース提供:PR TIMES

このページの先頭へ戻る