プレスリリース
〜GCNJ会員の半数以上が気候変動のリスクと機会を特定して戦略・計画に統合、ジェンダー平等に関わる取り組みは、政府の政策や法令に強い影響を受けている〜
公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES=アイジェス)および一般社団法人グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン(GCNJ)は、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」について、GCNJ会員企業・団体の進捗度を記載した「SDGs進捗レポート2022」を2022年2月28日(月)に公開しました。
本レポートでは、2021年10〜11月に行った調査結果の集計・分析に基づき、会員企業・団体のSDGsの認知・浸透度のほか、国連グローバル・コンパクトが重視するSDGsのゴール5、8、13、16と、日本企業で取り組みの加速が期待されるゴール12の計5つのゴールの取り組みの進捗について、各分野の専門家による分析・考察が含まれています。5つのゴールの分析・考察にあたり主題にしたテーマは、企業・団体の活動にとって重要な「ジェンダー平等」、「はたらきがい・人権」、「気候変動」、「腐敗防止」、「循環経済」になります。
今回、2016年から行ってきたSDGs実態調査を刷新し、企業・団体が調査結果により自らのSDGs進捗度を測り、活動を推進させることに役立てられる内容となりました。企業・団体において、SDGsは年を追うごとに広く認知され、情報収集や共有は活発化しつつありますが、一方でSDGsをどのように実践していくかについては手探りの状況が続いています。SDGsの達成に向けた取り組みを着実なものとしていく上で、SDGsの実施をモニタリングし、レビュー(評価)し、その結果に基づいて取り組みの改善を図るプロセスは非常に重要と見做されています。そのソリューションの1つとして回答企業・団体には、個別に5つのゴールについての「フィードバックシート」を送付し、「何の項目について、何が課題となっており、何を取り組みとして加速させればいいか」の手がかりを得られるものを作成・配信しました。今後も企業・団体がSDGs達成に向けて取り組みを加速できるよう、我々もSDGs活動を推進してまいります。
【「SDGs進捗レポート 2022」のハイライト】
<SDGsの認知・浸透度>中間管理職と従業員の認知度の低さが長く課題となっていたが、それぞれ40%近く増加し、約8割に到達。ようやく企業・団体の内部にまでSDGsが認知・理解されてきた。
<ジェンダー平等>女性活躍推進法等の国内法令に対する「コンプライアンス」として、制度構築や情報開示などは進んでいる。一方、SDGsで求められている「ジェンダー平等」の取り組みとは、社会・経済に構造化された性差別の撤廃であり、性別役割分業を前提とした仕組みや意識の変革である。「女性活躍」からジェンダー平等推進にシフトチェンジすることにより、グローバルに通用する実効性の高い取り組みを着実に実行できるようになる。それは、「女性活躍」「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)」の基盤づくりとしても有効である。
<はたらきがい・人権>「国連ビジネスと人権に関する指導原則」(指導原則)で示した方針・コミットメント、是正・救済について何らかに取り組む会員企業・団体は90%に及んだ。ただし、人権デューディリジェンスへの取り組みについては約75%の会員に留まる。人権尊重は労働者だけでなく、消費者、地域住民も含めた課題であることの認識が全体として弱いため、まずは指導原則内に具体的に示す項目の実施、見直しを喫緊の課題として示した。
<循環経済>多くの企業がメーカーと小売業の連携等を通じた使用済容器・製品の回収、そしてリサイクラーと連携した再資源化、容器包装のリサイクル素材や再生資源への切り替えを実施。今後は、シェアリングや製品のサービス化などの消費パターンの変化も含む、3Rを超えたさらなる循環ループや新たなビジネスモデルの構築実現に取り組むことが期待される。
<気候変動>会員企業・団体の約7割が2050年に向けたネット・ゼロ目標を設定し、約8割がスコープ1とスコープ2の温室効果ガス排出量を把握。半数以上が気候変動のリスクと機会を特定して戦略・計画に統合しており、気候変動関連情報開示の高まりに対応しつつある。今後は、脱炭素化にかかるコスト削減や技術的な課題の解決への支援が必要である。
<腐敗防止>腐敗防止対応は、方針明確化や規程類作成など書類上の対応を超えて、内部通報制度や違反者への懲戒手続きなど組織的対応にまで取り組みが進んでいる。一方、国内・海外のグループ社員へのヒアリング調査や、サプライヤーやサードパーティへのデューディリジェンスおよび教育トレーニングの実施が遅れており、サードパーティのリスク評価と管理体制強化が望まれる。
<5ゴール以外の重要課題への取り組み状況>5ゴール以外のゴールでマテリアリティ(重要課題)と位置づけ、具体的な数値目標を設けて取り組んでいる事例で多かったのは、ゴール3、7、9、11など。企業が特定のSDGゴールの達成に継続的に取り組み、社内外のステークホルダーに理解・共感されるためには、事業の持続可能性とSDGゴールの社会課題とを組み合わせたストーリーづくりと発信が重要である。横断的考察からは、以下の点を指摘できる
経営戦略にSDGsを組み込んでいる」を選択した会員企業・団体は8割以上であったが、SDGs達成のための行動としてはまだ不十分。特にゴール5、8、16が対象とする「ジェンダー平等」、「はたらきがい・人権」、「腐敗防止」の取り組みにおいては、前提としての基礎レベルの項目の進捗度に課題が見られた。とりわけ、今後グローバルでの事業展開を目指す企業は、取り組みの見直し・改善が期待される。
女性活躍や3Rなどに見られるように、企業・団体の取り組みは政府の政策や法令に強い影響を受けている。それらを超えて、やるべき事を理解し、SDGsに取り組む必要がある。
5つのゴールに共通して、バリューチェーン/サプライチェーン上のステークホルダーの声を聞き、データを集め、戦略やアプローチを強化すること、およびそのための体制を整備することが、今後の取り組みの鍵となる。
グローバルに事業を展開する大企業と中小規模の企業・団体とでは、取り組みに大きな差がある。各企業・団体がそれぞれの強みを活かし、置かれた環境や取り組みの進展状況に応じて政府やNGOの支援も適宜活用すること、および企業同士が協調・協力することが重要である。
コロナの感染拡大によって大幅な後退を余儀なくされたSDGsを達成へと近づけるために、あらゆるセクターでギアを入れ替える必要。もはや自己の基準でSDGsに貢献していると言うだけでは不十分な時代が間近に迫っている。社会の持続可能性に組織の持続可能性を一致させていくことこそが、SDGsの達成に真に貢献する企業・団体になるための重要なステップとなる。
【「SDGs進捗レポート 2022」の概要】
SDGsに関する国内外の動向
SDGs実態調査の結果と解説
「SDGsの認知・浸透度」
「ジェンダー平等」(ゴール5)
「はたらきがい・人権」(ゴール8)
「循環経済」(ゴール12)
「気候変動」(ゴール13)
「腐敗防止」(ゴール16)
「上記ゴール以外の重点課題への取り組み状況」
まとめの考察
Annex:回答企業一覧、回答集計データ
【調査概要】
■調査目的
・GCNJ会員企業・団体が、調査結果により自らのSDGs進捗度を測り、活動を推進させることに役立てる。
・会員企業・団体の現状のSDGs取り組み・浸透の進捗と課題を分析し、SDGs達成に貢献する。
■調査スケジュール:<実査>2021年10月4日〜11月18日
■調査対象:437企業・団体(2021年9月30日現在のGCNJ会員すべて)
■調査回答:223企業・団体
■設問数および内容:
昨年までの「SDGs認知度・浸透度の進捗」に加えて、SDGsの5つのゴールの進捗度等、計約50問。
対象とした5つのゴールは、国連グローバル・コンパクトが重視するSDGsのゴール5、8、13、16と、日本が特に進捗が期待されているゴール12。それぞれ企業・団体の活動にとって重要な「ジェンダー平等」、「はたらきがい・人権」、「気候変動」、「腐敗防止」、「循環経済」を分析・考察の主題とした。
今年をスタートとして、会員に毎年回答いただくことでSDGs目標達成に向けた、進捗度を測るガイドラインあるいはチェックリストとして活用いただくことを期待している。
【一般社団法人グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン(GCNJ: Global Compact Network Japan)について】
国連グローバル・コンパクトは、各企業・団体が責任ある創造的なリーダーシップを発揮することによって、人権、労働、環境、腐敗防止の10原則とSDGsを実践し、持続可能な成長を実現するための世界的な組織。GCNJは、2003年12月に日本におけるローカルネットワークとして発足し、2022年2月現在会員数は457。SDGsの達成に向けて会員の皆様や関連機関と共に推進する活動情報等はこちら。
【公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES: Institute for Global Environmental Strategies)について】
IGESは、アジア太平洋地域における持続可能な開発の実現に向け、国際機関、各国政府、地方自治体、研究機関、企業、NGOなどと連携しながら、気候変動、自然資源管理、持続可能な消費と生産、グリーン経済などの分野において実践的な政策研究を幅広く推進。1998年、日本政府および神奈川県の支援により設立。本部は神奈川県葉山町に所在し、約150名の研究者を擁し、その3分の1強が外国籍。関西(兵庫県)、北九州、北京、バンコク、東京の各センター・事務所と共に、グローバルおよびアジア太平洋地域のネットワークを生かした戦略研究を展開。
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