プレスリリース
〜和製英語部門は「ライバー」、「伝わらない英語」部門はHumishige Naka body 〜
日本の英語を考える会(会長:鶴田知佳子)は、日本独自の「和製英語」と、誤訳や不自然な英訳による「伝わらない英語」の中から、2022年を象徴するワードをツイッター上で一般公募(期間2022年11月1日〜19日)。集まった約30の候補ワードやフレーズの中から、「日本の英語オブザイヤー2022」を選出しました。
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「和製英語」部門: 「ライバー」 次点として「メタい」、「リアル開催」
「伝わらない英語」部門:「Humishige Naka body」 (原文は『中文繁体』)次点として「inundation」 (原文は『浸水』)
【選評と解説】
「和製英語」部門
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「ライバー」とはライブ配信を行う人。Youtube、Instagram、Tik Tokなどライブ配信プラットフォームは今や多岐にわたり、なかにはライブ配信で生計を立てている人もいます。このような人々のことを英語ではonline streamer 、あるいは live streamerと言います。和製英語である「ライバー」をそのまま英語表記しようとすると「liver」となりますが、レバー、すなわち肝臓の意味になります。
次点には「メタい」と「リアル開催」が選出されました。
「メタい」はアニメやドラマなどで登場人物が読者・視聴者視点で発言する手法(「紙面の都合で、今週はここまで」と作中キャラクターが発言する、など)のこと。英語に接尾語「い」をつけて和製英語化するのはよくあるパターンで、たとえば「エモい」などもその一例です。
もう一つの次点「リアル開催」は、オンラインではなく対面でのイベントや会議が徐々に再開されるようになった今年、見聞きすることの多いワードでした。 英語ではin-personと言います。
「伝わらない英語」部門
選出された
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「Humishige Naka body」の日本語原文は「中文繁体」。台湾で使われている、中国語の旧字体のことで、英語ではtraditional Chineseです。ウェブページの言語選択オプションの「中文繁体」が、機械翻訳によって 「文繁」→フミシゲ、「中」→ナカ、「体」→ボディーへと誤訳された事例です。
機械翻訳の普及は多言語コミュニケーションを飛躍的に容易にしましたが、その精度にはまだバラつきがあります。機械翻訳まかせにせず、人間による校閲を組み合わせる必要があるでしょう。
次点に選出されたのは「inundation」。気象庁HPなどで「浸水」の訳語として採用されていますが、本来のinundationは「人や物であふれている、覆いつくされている」といった意味合いです。河川の氾濫はfloodまたはfloodingのほうが英語としては一般的です。台風やゲリラ豪雨など日本特有の気象状況を英語で適切に表現することは難しく、原文の意味するところを汲んで慎重に訳語を選ぶことが望まれます。また災害警報においては正確さやわかりやすさが極めて大切であり、inundationとfloodの違いはなにか、訳語の定義を明確にすることも必要でしょう。
本結果を受けて、「日本の英語を考える会」の鶴田知佳子会長は以下のようにコメントしています。
「外国語を自在に取り込むのは日本語の特質ですが、『和製英語』はそのまま英語として使うと意味が通じないことが多々あります。また、昨今は、さまざまな文書、看板、ウェブサイトなどが日英併記となっていますが、日本語を母語としない人にわかりやすく意味を伝えることが英語併記の本来の目的であるにも関わらず、不自然な英訳のために誤解や混乱を生む例が多くあります。今回の『日本の英語ワードオブザイヤー2022』選出が、日本における英語表記をより一層伝わりやすいものとする契機となれば嬉しく思います。」
【日本の英語を考える会】について
公共の場における「日本の英語」を「伝わる英語」へと改善していくことをめざし、2020年発足。日英同時通訳の第一人者である鶴田知佳子(東京女子大学教授、東京外国語大学名誉教授)が会長を務める。内外主要メディアへの発信や、行政・自治体への英語表記改善提案等を行っている。
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