プレスリリース
1本の光ファイバで4倍の大容量化を実現する、マルチコア光ファイバ技術の建設・運用・保守技術をラインナップ化 〜世界初の自動回転調心接続や既存光ファイバとの分岐/接続技術を確立〜
発表のポイント:
マルチコア光ファイバ(MCF)*1の商用導入に向けて課題であった、実フィールド環境における建設・運用・保守技術の課題解決に大きく前進しました。
具体的には、MCFの自動回転調心接続技術、MCFと既存光ファイバ間の合分岐技術、MCFケーブルと既存光ケーブル間の接続・分岐技術、並びに局内MCF収容・配線技術をラインナップ化しました。
これにより、IOWNの大容量光伝送を支えるMCF光伝送路の実用化・国際標準化の更なる加速が期待できます。
日本電信電話株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:島田 明、以下「NTT」)は、1本の通信用光ファイバで現在の光ファイバの4倍の大容量化を可能とする、4コアのマルチコア光ファイバ(MCF)光伝送路の商用導入に不可欠な、オンサイトでの建設・保守・運用技術をラインナップ化しました。本成果により、光ファイバ心線数の需要が指数関数的に増大し続けているデータセンタ間光通信や、光ケーブル内の光ファイバ実装空間に制約を有する海底光伝送区間において、4コアMCF光伝送路の実用化が加速すると期待できます。
本研究成果の一部は、2024年11月25日〜29日に開催されるNTT R&D FORUM 2024 ―IOWN INTEGRAL*2に展示予定です。
1.背景
NTTは、Well-beingな世界の実現をめざすIOWN構想*3の大容量光伝送基盤を実現する要素技術の1つであるMCFの研究開発を進めており、これまでに現在の光ファイバと同じ細さのガラスの中に、4個の光の通り道を多重した4コアMCFの研究開発を推進しています(図1)。これまで、実際に4コアMCF光伝送路を商用導入する段階の課題として、オンサイトで利用できる建設・保守・運用技術の確立がありました。例えば、MCFは光ファイバ断面内の中心以外の場所にコアが存在するため、MCF同士を接続するためには回転方向の調心を行い対応する4個のコアの位置を揃えることが必須となります。また、MCF光伝送路の陸上光伝送システムへの導入初期では、既存の1個のコアを有する光ファイバとの相互接続技術が不可欠です。
さらに、不慮の事故や故障に迅速に対応するためには、これらの相互接続技術がオンサイトで利用可能なレベルで確立されていることが求められます。
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2.4コア光伝送路の建設・保守・運用を実現する要素技術
今回、4コアMCFの設計、光ケーブルへの実装に加え、オンサイトでの建設・保守・運用を可能とする接続・分岐技術、並びにそれらを用いたケーブル接続・分岐技術、局内のMCF収容・配線技術をラインナップ化しました(図2)。
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4コア光伝送路の中核技術である、現在の光ファイバと同じ細さのまま4個のコアを多重したMCF技術、並びに直径約20mmの中に最大8,000コア(4コアMCF2,000心)までを実装可能とする細径高密度光ケーブル技術に加え、MCFの接続・分岐に関する2つの要素技術を確立しました。
側面画像調心技術*4:
対向する2本の4コアMCFの側面画像を観測・解析することで4つのコアの位置を特定し、自動で対向するコアの位置を回転調心します。本技術を汎用的な光ファイバ融着接続器に組み込むことにより、実験環境や工場だけでなく、オンサイトでMCF同士の恒久接続を実現することができます。
FIFO(Fan-in-Fan-out)デバイス技術*5:
NTTイノベーティブデバイス社との連携により、石英系PLC(Planar Lightwave Circuit)導波路を積層した独自の2層構造を用い、1本の4コアMCFと1個のコアを有する既存光ファイバ4本との合分岐を実現しました。石英系PLC導波路は既存の光伝送システムにおける光パワー分岐などにも広く利用されており、高信頼で量産性にも優れる特長を有します。
さらに、上述の接続・合分岐技術を活用し、地下管路内および局内における光伝送路の要素技術を確立しました。
MCFケーブル接続・分岐技術(地下クロージャ):
MCFを実装した細径高密度光ケーブル同士、もしくは既存の光ファイバ(SMF: Single Mode Fiber)ケーブルとの、地下設備内における接続・分岐を実現します。4コアMCFは既存光ファイバと同じ細さのため、MCFケーブルの外径も既存光ファイバケーブルと統一でき、地下クロージャのMCF化においても既存の地下クロージャの基本構造を効率的に流用することができます。
局内MCF収容・配線技術(局内接続架):
MCFケーブルを局内設備で終端し、上述のFIFOデバイスを介して既存光ファイバとの相互接続を実現します。また、接続架の収容単位をMCFとしFIFOデバイスをブラックボックス化することで、収容面積を4分の1以下に集積化することもできます*5。
3.成果の適用領域
本成果は使用光ファイバ心線数が指数関数的に増大し続けているデータセンタネットワーク、さらには実装可能な光ファイバ心線数に空間制限を有する海底光ケーブルへの適用が期待されます(図3)。データセンタネットワークでは数千本の光ファイバを実装した光ケーブルに対する需要が顕在化していますが、実装光ファイバ数の増大とともに光ケーブルの直径も拡大傾向にあり、例えば、地下管路では敷設可能なケーブル直径の上限に迫りつつあります。また、海底光ケーブルに実装可能な光ファイバの本数は数十本が限界で、最新の光海底システムでは既に収容可能な光ファイバ心線数の上限に達しています。このような領域に4コアMCFを適用することで、陸上システムの心線需要、並びに海底システムの大容量化需要に柔軟に対応することが可能になります。
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4.今後の展開
今回の研究成果は4コア光伝送路のオンサイトでの建設・保守・運用を可能とするものであり、4コア光伝送路の実用展開を大きく加速すると期待されます。今後、2027年頃を目途とした4コア光伝送路技術の実用展開および国際標準化の推進をめざします。
【用語解説】
※1:マルチコア光ファイバ(MCF: Multi-core fiber)の研究開発例
https://group.ntt/jp/newsrelease/2017/08/08/170808b.html
※2:「NTT R&D FORUM 2024 ―IOWN INTEGRAL」公式サイト
https://www.rd.ntt/forum/2024/
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※3:IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)構想
https://www.rd.ntt/iown/index.html
※4:側面画像調心技術(参考1)
4コアMCFのように、光ファイバの中心以外の位置にコアを配置する場合、光ファイバ同士の接続を行うためには回転軸方向の調心を行う必要が生じます。これまでは、光ファイバの端面を直接観察して回転軸方向の調心を行うことが一般的でしたが、端面観察のための光学系を組み込む必要があり、小型・可搬型の融着接続器への組み込みは困難でした。本成果では、4コアMCFの側面画像から得られる輝度分布を解析し、対向する4コアMCF同士の輝度分布が一致する回転角度を自動で導出することを可能としました。また、4コアMCFの接続では断面内における各コアに番号付けを行うためにマーカーと呼ばれる基準点が必要になりますが、提案技術はマーカーも含めた自動回転調心を実現することが出来ます。これにより、既存の小型・可搬型の融着接続器に画像解析の仕組みを組み込むだけで、4コアMCFの融着接続が行えるようになりました。
https://ieeexplore.ieee.org/document/7537268
※5:FIFO(Fan-in-Fan-out)デバイス技術と局内MCF収容・配線技術(局内接続架)(参考2)
石英系PLC導波路はガラス基板平面に2次元光導波路を形成する技術で大量生産が可能です。このため、FTTH(Fiber to the home)システムにおいて1本の光ファイバの信号を複数の方路に分岐するデバイスなどで広く利用されています。本成果では、石英系PLCを高さ方向に積層し、1層目と2層目でそれぞれ2コアずつを合分岐する構成を実現しました。本技術を局内の接続架に組み込み4コアMCFを直接コネクタ接続することにより、接続に要する断面積を既存光ファイバの場合に比べ4分の1以下に省スペース化できます。
https://journal.ntt.co.jp/backnumber2/0505/files/jn200505016.pdf
https://ieeexplore.ieee.org/document/7121461
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