プレスリリース
〜酢の摂取からタンパク質やビタミンの摂取量を推定できる可能性を示唆〜
藤田医科大学 医学部臨床栄養学 飯塚勝美教授、株式会社Mizkan Holdings中央研究所 らの研究グループは、従来評価が困難であった酢(以下:酢酸) の摂取量を評価する新しい方法を開発しました。
従来のアンケートによる酢酸摂取量の評価は、マヨネーズなどの調味料の摂取量に基づいているため、過小評価につながる可能性がありました。研究グループは、食事レシピに基づいて栄養価を推定する食事記録アプリを用いて、推定された栄養素摂取量と酢酸摂取量の関係を明らかにしました。我々の結果からは、酢酸の摂取量と摂取頻度はともに、タンパク質とビタミンの摂取量と正の相関を示しました。調味料として酢酸を用いることで食事が進むことを反映していると考えられます。
本研究成果は、学術ジャーナル「Nutrients」で発表され、併せてオンライン版が2024年9月3日に公開されました。
論文URL : https://www.mdpi.com/2072-6643/16/17/2977
<研究成果のポイント>
食事記録アプリで7日間以上記録した結果を解析したところ、酢酸の摂取量の日差変動(日による違い)は非常に大きいことが分かった。
エネルギーや年齢、BMI、性別で調整し解析したところ、酢酸の摂取量や摂取頻度はタンパク質摂取量と関連した。
酢酸の摂取量はビタミンB1、B2、ナイアシン、ビタミンB6、B12、葉酸、ビタミンD、ビタミンEと関連した。
酢酸の摂取頻度はビタミンB1、ナイアシン、ビタミンB12と関連した。
酢酸の摂取を見れば、タンパク質やビタミンの摂取量が推定できる可能性がある。
<背 景>
酢酸は調味料として広く使用されています。古くから、消化を助ける作用、抗菌作用、咳を鎮める作用などが知られていました。酢酸を飲むことで、血圧が高めの方や肥満気味の方に対して 血圧降下、肥満予防、血糖改善に効果があるという報告もあります。酢酸は健康を改善させるものとして経験的には知られていましたが、実際の食事での酢酸摂取量と疾患予防のデータは必ずしも十分ではありませんでした。その理由として、様々な種類の食品に酢酸を含む調味料が含まれるため、知らず知らずのうちに酢酸を摂取していることがあげられます。そこでメニューに含まれる食材から栄養素を推定する方法を用いている食事記録アプリに注目しました。
<研究手法・研究成果>
月に7日以上、食事記録アプリを利用した計141人(男性48人、女性93人)を対象に解析したところ、酢酸の1日平均摂取量は0.16±0.19g、平均摂取頻度は2.77±1.66日/週でした。年齢、性別、BMI、摂取エネルギーで調整した多変量回帰分析の結果、酢酸の摂取量は、タンパク質(β=11.9、p<0.001)、コレステロール(β=80.7、p=0.04)、ビタミンKを除くすべてのビタミンの摂取量と有意かつ正の相関がありました。酢酸の摂取頻度は、タンパク質(β=1.04、p = 0.015)、ビタミンB1(β=0.3、p = 0.031)、ナイアシン(β=0.5、p = 0.032)、ビタミンB12(β=0.4、p = 0.002)の摂取量から、酢酸を頻繁に摂取する人は、より多くのタンパク質といくつかのビタミンを摂取する傾向があることが示唆されました。
酢酸の摂取量を見れば、タンパク質やビタミン摂取が十分にできているか定量的に評価できる可能性があります。
<今後の展開>
酢酸の摂取量を調べる方法が明らかになったことで、この方法を活用し、今後より多くの人数を対象とした研究でもこの方法が有効か検証する必要があります。高齢者や病気の人の多くに食欲不振がみられますが、今回の検討を通して、酢酸を使った料理が体に良い栄養素を摂れる可能性があり、酢酸による健康メニューの開発に取り組んでいきたいと考えます。
<文献情報>
●論文タイトル
Associations of Acetic Acid Intake with Protein and Vitamin Intake Estimated via a Food Recording Application
●著者
出口香菜子1 、吉本 靖東2、和田理紗子1、後田ちひろ1、柳ことね3、岸 幹也2、成瀬寛之4、飯塚勝美1
●所属
1 藤田医科大学 医学部 臨床栄養学講座
2 株式会社Mizkan Holdings中央研究所
3 藤田医科大学 健康管理部
4 藤田医科大学 医療科学部
●DOI
10.3390/nu16172977
本件に関するお問合わせ先
学校法人 藤田学園 広報部 TEL:0562-93-2868 e-mail:koho-pr@fujita-hu.ac.jp