• トップ
  • リリース
  • 集団適応を促す精神科作業療法プログラムは,精神疾患入院患者退院後の社会活動参加に貢献する

プレスリリース

  • 記事画像1
  • 記事画像2

集団適応を促す精神科作業療法プログラムは,精神疾患入院患者退院後の社会活動参加に貢献する

(Digital PR Platform) 2024年09月13日(金)20時05分配信 Digital PR Platform



杏林大学医学部付属病院精神神経科(当院)では,保健学部作業療法学科(現リハビリテーション学科作業療法学専攻)開設以降,精神科作業療法を開設して精神科リハビリテーションを推進するとともに,精神科作業療法の治療効果と評価判定の有効性について共同研究を行ってきました.本研究はその共同研究の成果の一つで,保健学部リハビリテーション学科作業療法学専攻長島泉講師が筆頭・責任著者としてまとめたものです.
当院の精神科作業療法では,4つのプログラムが用意されており,その一つに集団適応を目的としたプログラムがあります.当院に入院し精神科作業療法に参加した患者を対象として,退院後の社会活動状況などをカルテから調査し分析したところ,入院中により多くの集団適応を目的としたプログラムに参加した患者ほど,退院後に社会活動に参加したことが明らかになりました.また,退院後に社会活動に参加するためには,より強く,集団適応を目的としたプログラムへの参加を促す必要がある患者属性を示しました.なお、本研究はJSPS科研費(22K17615)の助成を受けて行われたもので,研究成果はFrontiers in Psychiatry誌Mental Health Occupational Therapyセクションの電子版に,2024年8月26日に先行公開されました.
掲載URL:https://doi.org/10.3389/fpsyt.2024.1421390




筆頭・責任著者 長島泉(杏林大学 保健学部リハビリテーション学科作業療法学専攻 講師)

1 研究のハイライト
・ 本研究では,入院治療が必要な重症精神疾患患者が退院後に社会活動に参加するためには,入院中に集団適応を目的とした精神科作業療法プログラムにより多く参加できるよう促す必要があることを明らかにしました.
・ 加えて,入院時に一切の社会活動ができておらず,かつ結婚経験のある患者は,特に集団適応を目的とした精神科作業療法プログラムへの参加を促すことで退院後の社会活動参加が可能になることを示しました.
・ 精神科作業療法は,精神科を標榜する病院において,一般的に精神科診断名を問わずに行われている集団を用いるリハビリテーションです.精神科作業療法の診断名ごとの効果は示されていますが,一般的に行われている精神科作業療法の効果は,これまで十分に明らかにされていませんでした.本研究の結果は,あらゆる精神疾患に対して広く行われている従来の精神科作業療法の効果を示したとともに,患者の個別性に対応する付加的リハビリテーションの検討を可能にすることで,精神疾患からのリカバリーに貢献します.

2 研究概要
杏林大学医学部付属病院精神神経科(当院)では,保健学部作業療法学科(現リハビリテーション学科作業療法学専攻)開設以降,精神科作業療法を開設して精神科リハビリテーションを推進するとともに,精神科作業療法の治療効果と評価判定の有効性について共同研究を行ってきました.本研究はその共同研究の成果の一つで,保健学部リハビリテーション学科作業療法学専攻長島泉講師が筆頭・責任著者としてまとめたものです.
当院の精神科作業療法では,4つのプログラムが用意されており,その一つに集団適応を目的としたプログラムがあります.当院に入院し精神科作業療法に参加した患者を対象として,退院後の社会活動状況などをカルテから調査し分析したところ,入院中により多くの集団適応を目的としたプログラムに参加した患者ほど,退院後に社会活動に参加したことが明らかになりました.また,退院後に社会活動に参加するためには,より強く,集団適応を目的としたプログラムへの参加を促す必要がある患者属性を示しました.なお、本研究はJSPS科研費(22K17615)の助成を受けて行われたもので,研究成果はFrontiers in Psychiatry誌Mental Health Occupational Therapyセクションの電子版に,2024年8月26日に先行公開されました.
掲載URL:https://doi.org/10.3389/fpsyt.2024.1421390

3 研究背景・目的
精神疾患からのリカバリーにおいて,就労や就学,ボランティア活動を含む社会活動への参加は重要な要素の一つです.残念ながら,精神疾患患者が社会活動に参加することは簡単なことではないため,精神科リハビリテーションサービスが必要とされています.
精神科作業療法は,精神科リハビリテーションサービスに不可欠なもので,うつ病患者の症状改善のほか,特に慢性統合失調症患者の認知機能改善や対人スキルの向上などに対する効果が示されています.しかし,このような効果は,研究のために特定の診断を受けた精神疾患患者のみを集め,研究用に組み立てたプログラムを実施することによって得られたものでした.実際に臨床現場で行われている精神科作業療法では,診断名を限定して行われているものは非常に少なく,精神疾患患者全体を対象として集団で実施しているものがほとんどです.そのため,実際に臨床現場で行われている精神科作業療法の効果については,十分に明らかにされていないといえます.加えて,精神科作業療法は広く精神疾患患者全体を対象とするため,特にどのような患者が,どのような内容のリハビリテーションが必要であるのかについての理解は不十分です.本研究では,従来行われている精神科作業療法のプログラムが,患者退院後の社会活動参加に貢献したかを確認するとともに,精神科作業療法実践を強化すべき患者を特定することを目的としました.



4 研究成果
本研究では,2016年4月から2020年3月までに当院に入院し,精神科作業療法の処方がされた524名の患者のうち,検査入院患者などを除外した247名分の情報が分析対象となりました(表1).精神科作業療法の4つのプログラムへの参加率のほかに,性別や学歴,入院時と退院後の社会活動状況などを含む患者の一般的情報と,精神科診断名や処方薬などを含む医学的情報をカルテから収集し,統計学的解析を行いました.
解析の結果,入院時に社会活動に参加できていて,結婚経験がなく,集団適応を目的とした精神科作業療法プログラムにより多く参加した患者は,そうではない患者よりも,退院後に社会活動に参加したことが明らかとなりました.さらに,集団適応を目的とした精神科作業療法プログラムにより多く参加を促すべき患者は,入院時に社会活動に参加できておらず,結婚経験のある患者であることが示されました(図1).
本研究は,これまで不十分であった従来の精神科作業療法の効果を示したことと,精神科作業療法実践を強化すべき患者を特定しえたことで,個別化された付加的リハビリテーションを検討するために必要な情報を提供するという点で意義があると考えます.




5 掲載論文
5.1 発表雑誌名
Frontiers in Psychiatry

5.2 論文タイトル
Factors encouraging participation in social activities after hospital discharge in people with severe mental illness who received occupational therapy

5.3 著者
Izumi Nagashima, Tomonari Hayasaka, Koji Teruya, Miku Hoshino, Masami Murao, Yasuyuki Matsumoto, Taku Maruki, Takeshi Katagiri, Yayoi Imamura, Mariko Kurihara, Yuki Oe, Takashi Tsuboi, Koichiro Watanabe and Hitoshi Sakurai

5.4 著者(日本語表記)
長島泉1,2,3)*,早坂友成1,2,3),照屋浩司4),星野未来3),村尾昌美2,3),松本泰幸2,3),丸木拓2,3),片桐建志2,3),今村弥生2,3),栗原真理子2,3),大江悠樹2,3),坪井貴嗣2,3),渡邊衡一郎2,3),櫻井準2,3)*
*責任著者

5.5 所属
1) 杏林大学保健学部リハビリテーション学科作業療法学専攻
2) 杏林大学医学部精神神経科学教室
3) 杏林大学医学部付属病院精神神経科
4) 杏林大学医学部・保健学部

6 用語の解説,注釈
・ 精神科作業療法:作業療法の源であり,手工芸,芸術,運動などの作業を手段として,集団や環境を調整しながら行われるリハビリテーションです.
・ リカバリー:「人々が生活や仕事,学ぶこと,そして地域社会に参加できるようになる過程であり,ある個人にとってはリカバリーとは障害があっても充実し生産的な生活を送ることができる能力であり,他の個人にとっては症状の減少や緩和である」と定義されています.
・ 集団適応:集団の中で楽しく過ごせることだけが適応なのではなく,集団が苦手なままでも上手く対処しながらストレスを軽減し,集団の中に安心していられるようになることも適応であると考えています.
・ 社会活動:患者が担いたい,もしくは担うことを期待されている役割によって,社会活動の定義は異なります.ある患者は大学に通うことであり,ある患者は仕事をすることであり,ある患者は自治会の活動であったりします.本研究では,他者との交渉がそれなりに必要とされるような活動を,社会活動と定義しました.

研究内容に関する問い合わせ先
杏林大学保健学部 リハビリテーション学科作業療法学専攻
講師 長島 泉(ナガシマ イヅミ)
TEL: 0422-47-8000(代表)
E-mail: nagashima@ks.kyorin-u.ac.jp

取材に関する問い合わせ先
杏林大学 広報室
TEL: 0422-44-0611 Fax: 0422-44-0892
Email: koho@ks.kyorin-u.ac.jp


【リリース発信元】 大学プレスセンター https://www.u-presscenter.jp/

このページの先頭へ戻る