プレスリリース
エステー株式会社と近畿大学東洋医学研究所は、共同研究において、月経前の不調(PMS)に対するトドマツ精油の香りによる緩和効果を世界標準の症状評価方法により科学的に確認しました。
月経前に生じる身体的・精神的な症状は、月経前症候群(Premenstrual Syndrome,PMS)と呼ばれ、女性の社会生活に影響を及ぼす可能性があるとして認知が進んでいます。PMSには、腹痛や体の不快感、腫れや浮腫み、食欲変化やイライラや不安な気持ちといった気分の変化など種々の症状が含まれます。
2023年12月の研究発表(※1)では、スティック型の練香水を用いて、バーベナ調、ミント調、ラベンダー調の3種類の香調について評価を行い、いずれの香調の練香水を使用した場合にも有意にPMS症状が緩和されることを確認しました。針葉樹の香りにはストレス緩和効果などが報告されている1,2)ことから、本研究では練香水にトドマツ(針葉樹の一種)精油を配合することによって、PMSの緩和効果に差異が生じるかを検証しました。
(※1)月経前の不調(PMS)への香りによる緩和効果を確認
https://www.st-c.co.jp/news/newsrelease/2023/20231208_002000.html
本検証では、PMSの自覚症状がある20〜39歳の女性100人を対象に、スティック型の練香水(ラベンダー調の香料、または、同香料にトドマツ精油を配合した香料)を月経前の期間に1日約4回程度の頻度で使用してもらい、日本語版DRSP3)(※2)を回答してもらいました。
その結果、トドマツ精油の有無にかかわらず、ラベンダー調の練香水を使用したときには、何も使用していない時(ブランク)よりも有意にPMS症状が軽くなっていることが確認されました(図2)。さらに、トドマツ精油の有無を比較すると、PMS症状の改善率はトドマツ精油を配合した練香水の方が有意に高いことが示されました(図3)。
(※2)DRSPは精神症状(気分の落ち込みや不安、怒り、集中力など)に関する設問と身体症状(空腹感や睡眠、乳房のはり、頭痛など)に関する設問、社会活動に対する影響に関する設問から構成されているPMS諸症状を科学的に評価/記録する世界標準のツールです。治療薬の厳密な効果判定においても使用されています。
練香水未使用時と使用時の症状を比較するため、それぞれ月経周期2周期ずつDRSPによる評価を実施しました。練香水を配布した20〜39歳の女性100人のうち、PMS有症状者(各解析項目に対してDRSPスコアが月経前後で30%以上の差があったモニター)かつ指定された5日間中4日以上正しく回答しているモニターを解析対象としました。
本研究から、トドマツ精油がPMS症状緩和効果を増強した可能性が示唆されました。今後、香りを用いた手軽に取り入れやすいウェルネス分野の商品開発に活かしていきたいと考えています。
なお、本結果は一橋大学で開催された「第52回 日本女性心身医学会学術集会(2024年8月31日〜9月1日)で発表しています。
【参考文献】
1)Doi, Takumu, et al. "Reduction of salivary cortisol after" Mokuiku" activities and exposure to the fragrance of sakhalin spruce(Picea glehnii) essential oil."(2020): 332-338.
2)Ikei, Harumi, Chorong Song, and Yoshifumi Miyazaki. "Physiological effect of olfactory stimulation by Hinoki cypress(Chamaecyparis obtusa) leaf oil." Journal of Physiological Anthropology 34(2015): 1-7.
3)Takeda T., et al.(2021) Psychometric Testing of the Japanese Version of the Daily Record of Severity of Problems Among Japanese Women. Int J Women's Health. 13, 361-367.
【近畿大学東洋医学研究所所長・教授 武田卓先生】
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PMSには心と体に関する様々な症状があり、細かいものも含めると症状は150種類以上あります。20歳〜49歳の日本人女性で中等度から重度のPMSやPMDD(※3)の症状がある方の中で、治療を受けているのはわずか5.3%という調査データもあり、多くの方は未治療と考えられます(※4)。ホルモンバランスが影響する生理不順とは原因が異なり、実は月経周期が不定期な人より順調な人ほど、PMS症状が強く出やすくなります。また、大人よりも思春期の方のほうが、重症度が高いことも報告されており、症状があってもPMSとして認識されていない場合も多いようです。
また、ストレスや不規則な生活がPMSの引き金にもなりやすく、働く女性が増えている昨今はPMSを抱える女性も増えていると考えられます。イライラ感や突発的な怒り、不安などの精神的症状は、対人関係に摩擦が生じやすくなり、ひどい場合は職場や家庭生活に支障が出ることもあります。
まずは自分に起こりがちなPMS症状やパターンを自覚することが大切です。PMSと自覚してない人も多いので、PMSセルフチェックの活用や月経前に起きる症状を記録することで、自分の状態を確認しましょう。
対策としては、規則正しい生活、睡眠、食事などの生活習慣を整えることが第一です。さらに、日々のストレスを減らすことも大切です。症状が軽度である場合は、精神的にリラックスするためにも、香りのアイテムを取り入れてみることも有効です。従来からも、アロマオイルのPMSに対する有効性に関しては報告がありましたが、本共同研究で用いたスティック型の練香水はいつでもどこでも簡単に使用でき、また厳密な評価方法による症状改善効果を認めましたので、症状改善を試みる最初の方法として試みても良いかと思います。症状が重くて社会生活で支障がでると感じた場合は、我慢をせずに婦人科に相談してみてください。
職場においては性別問わず周辺の理解が足りていないケースも多く見受けられます。社会全体でPMSを正しく理解していくことが重要です。
(※3)Premenstrual Dysphoric Disorder:月経前不快気分障害。精神症状が主体の重症型のPMS。
(※4)出典:Arch Womens Ment Health; 9(4): 209-212, 2006
【PMSチェックシート】
近畿大学東洋医学研究所所長・教授 武田先生の監修のもと、PMSチェックシートを作成しました。月経前のイライラや不安な気持ち、頭痛や腹痛などのカラダの不調を感じている方は、PMSチェックシートを活用して、自分自身の状態を確認してみましょう。
※PMSチェックシート
【関連リンク】
東洋医学研究所 教授 武田卓(タケダタカシ)
https://www.kindai.ac.jp/meikan/818-takeda-takashi.html
近畿大学東洋医学研究所
https://www.med.kindai.ac.jp/toyo/
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