プレスリリース
日本製鉄株式会社(以下、日本製鉄)は、公益社団法人発明協会による令和6年度全国発明表彰において「クロム資源循環・環境調和ステンレス製鋼プロセスの発明」で「発明賞」を受賞しました。全国発明表彰は、発明の奨励・育成を図り、我が国の科学技術の向上と産業の発展に寄与することを目的として行われている伝統と権威のある賞です。なお、表彰式は本年7月11日(木)に、ホテルオークラ東京にて行われます。受賞した発明の概要は以下の通りです。
<受賞内容>
(1) 受賞名 : 発明賞
(2) 受賞件名 : クロム資源循環・環境調和ステンレス製鋼プロセスの発明
(3) 受賞者 :
浅原 紀史 日本製鉄株式会社 技術開発本部 プロセス研究所 製鋼研究部 電気炉研究室 研究課長
加藤 勝彦 元 新日本製鐵株式会社 八幡製鐵所 製鋼部 製鋼技術グループ マネジャー
小川 雄司 元 新日本製鐵株式会社 環境・プロセス研究開発センター製鋼研究開発部 主幹研究員
平嶋 直樹 元 新日本製鐵株式会社 八幡製鐵所 ステンレス部 ステンレス企画室長
府高 幹男 元 新日本製鐵株式会社 八幡製鐵所 製鋼部 製鋼技術グループ マネジャー
(4) 概要 :
本発明は、ステンレス製鋼プロセスにおけるクロムの還元回収能力を高め、クロム資源の有効活用や副産物であるスラグの環境負荷低減を実現する技術です。
クロム資源は一部の国に偏在しており、日本では経済安全保障の観点から国家備蓄の対象とされる重要鉱物です。クロムの大半はステンレス鋼で消費されますが、世界のステンレス鋼生産量は年々増加しており、ステンレス製鋼におけるクロムの省資源化は喫緊の課題です。ステンレス鋼の製造過程では、鉄源とクロム源を溶解し、不純物としての炭素を酸化精錬で除去しますが、この過程でクロムの一部が酸化物となり、溶鉄側からスラグ側に失われます。従来法では、酸化精錬後に同じ炉内で還元精錬が行われており、クロムの還元回収能力は不十分でした。
本発明では、酸化精錬と還元精錬を完全に分離した上で、還元精錬を行う電気炉における溶鉄成分やスラグ成分を制御する技術を開発しました。具体的には、還元時の溶鉄中の炭素濃度を高めることにより熱力学的な相互作用によって還元力を大幅に高め、クロムの酸化ロスを徹底的に低減しました。また、還元精錬の際には、溶解性(酸化物が溶けやすくなる作用)と反応性(酸化物からのクロム還元反応を進みやすくする作用)の両方が求められますが、環境負荷のないアルミナや石灰を用いた最適なスラグ成分に制御することにより、スラグ利用上環境負荷のある蛍石を用いることなく、溶解性と反応性の両立を実現しました。これらにより、工業規模では従来困難だったレベルの高速・高効率なクロム還元回収プロセスを確立しました。
図1 本発明のステンレス製鋼プロセス
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図2 本発明におけるクロムの物質フロー図
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以 上
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