プレスリリース
ー横浜市立大学と藤沢市が連携し、文化・芸術の振興に貢献ー
横浜市立大学と藤沢市は、文化・芸術の振興を図ることを目的として、令和4年度に「藤沢市文書館*1所蔵の芥川龍之介*2直筆資料修復に係る協定」を締結しました。横浜市立大学国際教養学部 庄司達也教授らの研究グループと藤沢市は、この2年間で、藤沢市文書館が所蔵している芥川龍之介直筆資料約150点の修復を実施しましたので報告します。
本資料は火災等により毀損していましたが、今回の修復により、同氏の研究に活用できることとなりました。本協定において、令和6年度以降も約150点は残されている芥川龍之介関連資料の修復を引き続き継続します。
実施内容の概要
令和4年度
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令和5年度
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※1※2別紙資料はこちらから
https://www.yokohama-cu.ac.jp/news/2023/20240328shojifujisawashi.html
実施された修復作業でどのようなことが発見できるのか
本修復の主眼は、これら研究の場に資料として活用されずにきた資料群を活用可能な形状にすることで、今後の芥川龍之介研究の基盤をより強固なものとし、知られることの無かった事実への探究を容易にするということにあります。
藤沢市文書館所蔵の資料群「葛巻文庫」には焼け跡が確認されるものや、水をかぶった跡の見られるものが多くあります。これは、世田谷にある葛巻義敏(くずまき よしとし) *3氏 の自宅が火災にあったことが直接的な原因となっています。本修復では、罹災により研究の対象や素材として活用が容易でなかった資料を対象としています。
令和4年度に100点の資料を、さらに2年目にあたる今年度は50点の資料修復を行いました。いずれも、芥川龍之介の大学時代の聴講ノートと位置づけられる資料群と考えられます。これらの修復により、芥川龍之介研究において、芥川龍之介が「知」を獲得するプロセスを明らかにする際の貴重な資料として活用されることを可能としました。また、優れた「知」の所有者としての若き日の芥川龍之介の姿を資料群から確認することは、日本近代における「知」の水準を探る行為とも連なり、近代教育史の観点からも、大いに期待されるところです。
修復された画像
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今後期待される具体的な成果の一例
葛巻義敏氏の手になる『芥川龍之介未定稿・デッサン集』(雪華社1971.07)出版の際に使用されたカットやデッサンが切り取られたノートの原本が当該資料と改めて確認されました。そこから、日本近代文学館が所蔵する同書の入稿原稿との照合作業を行うことにより、それらのカットやデッサンが断片化されたノートのどのページから切り取られたのかということの確認が可能となりました。これまでは単なるカットやデッサンとしてその図像の新奇さや面白味のみに注意が傾けられてきましたが、見る者の視線のありかたを大きく変える可能性をもたらすかもしれません。このことは、例えば、それらのカットやデッサンには芥川龍之介が何らかの意図や意味を込めていたのかもしれない、というような読み(解釈)を広げる可能性を期待させるものです。社会や時代、世界の在りように積極的にコミットしようとしていた若き芥川龍之介の姿を確認することができるかもしれません。
庄司 達也 教授 プロフィール
東京成徳大学・教授を経て、2016年4月、横浜市立大学に着任。
専門は、日本近代文学。大正期に活躍した芥川龍之介を中心に、日本近代文学、文化の領域について研究。近年は、作家が聴いた音楽を蓄音機とSPレコードで再現するレコード・コンサートを企画・開催するなど、同時代芸術との関係に注目した研究を多面的に展開。
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[画像5]https://digitalpr.jp/simg/1706/85699/250_65_202403281000566604c148aeb97.jpg
用語説明
*1:藤沢市文書館 https://digital.city.fujisawa.kanagawa.jp/
*2:芥川 龍之介(1892年〜1927年)
主に大正時代に活躍した人気作家。 文豪「夏目漱石」(なつめそうせき)に認められて文壇
デビューし、日本の古典を題材にした「羅生門」(らしょうもん)、「鼻」、「藪の中」
(やぶのなか)や「玄鶴山房」「西方の人」などの作品を発表。「語り」の機能などにかかわるさま
ざまな創作上の試みを行い、現代の作家たちにも少なくはない影響を与え続けている。
*3:葛巻 義敏(1909年〜1985年)
小説家・文学研究家。芥川龍之介の甥。堀辰雄と共に岩波書店版『芥川龍之介全集』を編集、また
『芥川龍之介未定稿集』等を編集刊行するなど龍之介の原稿や資料の整理に尽力した。