プレスリリース
● C+Lバンドの双方向励起ラマン増幅に必須となる前方励起ラマンユニットを開発
● 本方式で伝送した信号光の品質を示すQ値は、後方励起ラマン増幅適用時よりも0.5dB、標準の光増幅器(EDFA)による増幅適用時よりも1.0dB向上
● 本年3月に開催される「OFC 2024」にて前方励起ラマンユニットを展示し学会で報告
古河電気工業株式会社(本社:東京都千代田区大手町2丁目6番4号、代表取締役社長:森平英也)は、前方励起ラマンユニットを用いた光伝送システムにおけるC+Lバンド 800Gbpsの伝送信号光の品質を向上させました。
■背景
ラマン増幅(注1)は光ファイバ通信システムを支える技術で、現在は受信側から励起光を伝搬させる後方励起ラマン増幅が標準的に用いられています。前方励起ラマンユニットは、その出力光の広帯域性と低雑音性から導入の実現が期待されていましたが、低雑音の励起光源の開発が課題でした。当社は2023年3月に前方励起ラマン増幅における課題を解決し(図1)、光ファイバ通信システムに適用できる程度に低い雑音増幅特性を備えた、前方励起と後方励起を同時に行う双方向励起ラマン増幅を実現しました(図2)。伝搬した信号光の光学特性(低雑音)が良好であることを確認できたため、信号光の通信品質(Q値、注2)向上の確認が期待されていました。
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図1 前方励起ラマンユニットの外観
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図2 双方向励起ラマン増幅を備えた光ファイバ通信システム
■内容
前方励起ラマンユニットの増幅帯域をCバンドのみからC+Lバンドに拡張し、C+Lバンドにおいて150kmの標準伝送用光ファイバに次世代の通信速度である800Gbps(100Gbaud偏波多重16QAM)信号光を伝搬させ、出力信号光の品質を測定しました。前方励起ラマンユニットを用いる双方向励起ラマン増幅を適用した信号光の品質を示すQ値は、標準の入力パワー0 dBm/chにおいて、後方励起ラマン増幅を適用した場合より0.5dB、標準の光増幅器(EDFA:Erbium Doped Fiber Amplifier)を適用した場合より1.0dB大きく、信号品質の向上を確認しました(図3)。これにより、伝送距離が同一の場合、より大容量な情報を伝送できるようになるため、前方励起ラマンユニットを用いる双方向励起ラマン増幅は、近年の光ファイバ通信システムの課題である、伝送容量の拡大に寄与します。
なお、本年3月24日から28日に米国・サンディエゴで開催されるOFC 2024で、本件を報告し(3月27日(水)16:30〜16:45(米国時間)、W4D.1)、前方励起ラマンユニットを展示します(OFS Fitel, LLCブース内・ブース番号2041)。
OFC 2024(英語のみ):https://www.ofcconference.org/en-us/home/
また、本研究成果は、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT(エヌアイシーティー))の委託研究(JPJ012368C04501)により得られたものです。
当社は今後も、前方励起ラマンユニットの高性能化を行い、情報通信社会の進化を支え、すべてが光で結ばれるオールフォトニクス・ネットワークの実現を目指し、社会環境に優しいネットワークの構築に貢献します。
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図3 150kmの標準の伝送用ファイバを伝送したC+Lバンド波長多重信号中のCバンド内の信号光の信号品質の入力パワー依存性
(注1)ラマン増幅:光ファイバに励起光を入射すると、励起光波長より100nm程長い波長域にラマン散乱が生じる。この散乱光領域に信号光が存在すると誘導ラマン散乱により増幅され、増幅器として利用できる。増幅帯域が広く、任意の波長域を増幅できるなど優れた特徴を有し広く用いられている。
(注2)Q値(Quality Factor):光信号の品質。信号と長距離伝送によって生じる誤差・雑音の関係。大きい方が光信号の品質が良い。
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■古河電工グループのSDGsへの取り組み
当社グループは、国連で採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」を念頭に置き、2030年をターゲットとした「古河電工グループ ビジョン2030」を策定して、「地球環境を守り、安全・安心・快適な生活を実現するため、情報/エネルギー/モビリティが融合した社会基盤を創る。」に向けた取り組みを進めています。ビジョン2030の達成に向けて、中長期的な企業価値向上を目指すESG経営をOpen,Agile,Innovativeに推進し、SDGsの達成に貢献します。
古河電工グループのSDGsへの取り組み
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