プレスリリース
核融合実験炉周辺機器における早期異常予測に向けたITER機構との共同実験をスタート 〜故障を未然に防ぐ異常予測検出を通じた核融合実験の効率的推進〜
日本電信電話株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:島田 明、以下「NTT」)は、ITER機構※1と実施合意書を締結し、この度核融合実験炉機器における異常予測に関する共同実験を開始しました。
NTTの持つAIを活用した異常予測技術とITER機構の核融合実験炉プラント施設等、双方の強みの活用により、核融合実験炉機器の異常を早期に検出する研究を進めます。これにより、機器の故障を未然に防ぎ、円滑な実験運転に貢献できる可能性を追求します。
1.背景
気候変動問題をはじめとした環境問題に対して、カーボンニュートラルへの取組みが活発化しており、新たなエネルギーの創出もますます重要となってきております。
そこでNTTは、「革新的な環境エネルギー技術の創出」を加速し、お客さま・企業・社会の環境負荷低減に貢献するため、2020年5月にITER機構と包括連携協定を締結し、人類初の核融合実験炉の成功に向け、具体的テーマの検討を進めてきました。
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その中で核融合実験の運転を継続的に進める上で、機器の故障を回避することが必要なため、機器の異常を早期に検出する異常予測に取り組むこととしました。特に高強度かつ大量の中性子やγ線等の放射線環境下において、機器の故障が生じた場合には修理に時間を要し、核融合実験の運転に大きな影響を及ぼします。これまでの機器の異常検出は、ある単一の数値が閾値を超えた場合に、異常や故障であると判定していました。しかしこのタイミングで異常を判定した際には、機器がすぐに故障に至ってしまうこともあり、復旧対応に時間を要し実験継続が困難となります。
NTTはネットワーク機器の異常検出において、複数種類のデータの相関関係を用いることで、今後発生する異常を早期に予測する技術『DeAnoS※2』により、単一データでの検出よりも早い段階で異常を検出することが可能です。
これまで、『DeAnoS』の核融合実験炉機器に対する適用可能性についてITER機構と連携して検討を進めてきました。具体的には、核融合実験炉の構成機器の一つである循環ポンプにおいて、故障時の判定が可能であることを確認し、核融合実験炉機器に対して本技術が適用可能である見通しを得ることができました。この検討結果を踏まえ、様々な機器に対する故障検出の検証を進め、さらに異常予測へ拡張した共同実験をITER機構と進めていきます。
2.共同実験の内容及び取組みステップ
核融合実験炉機器において、運転データや故障データを活用し、NTTの異常予測技術により機器の正常状態の把握および、故障の検出、異常予測を進めます。
ステップ1:様々な機器における故障検出(循環ポンプ以外の機器における適用可能性の検討)
ステップ2:機器における異常予測(長期データ活用による解析)
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3.各社の役割
■NTT
・異常予測検出技術『DeAnoS』による正常把握、故障検出、異常予測の解析
・解析結果の妥当性の評価
■ITER機構
・核融合実験炉機器の運転データの取得、提供
・検証環境の提供
・故障検出や異常予測結果における妥当性評価
4.今後の展開
本共同実験で異常予測技術の有効性を確認し、核融合実験炉機器への保守ツールとしての適用を検討し、円滑な核融合実験の運転の貢献を追求していきます。またこれら知見や様々な技術を活用しプラント等大規模なシステムへの拡張をめざしていきます。
〈注釈一覧〉
※1 ITER機構
https://www.iter.org/
※2 DeAnoS
https://journal.ntt.co.jp/article/4149