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【東京医科大学】加圧培養法でヒト臍帯の細胞のみから移植可能な人工血管を開発 〜先天性心疾患などの心血管手術への応用に期待〜

(Digital PR Platform) 2023年10月11日(水)14時05分配信 Digital PR Platform



 東京医科大学(学長:林 由起子/東京都新宿区)細胞生理学分野の中村隆助教、横山詩子主任教授、横浜市立大学大学院医学研究科 産婦人科学 生殖成育病態医学(宮城悦子教授)博士課程2年 小嶋朋之 大学院生らの研究グループは、低酸素環境で周期的に細胞に高い圧力をかけて細胞を培養すると、細胞と細胞、細胞と細胞外マトリックスおよび、細胞外マトリックス同士が強く結合することで、三次元の組織体を作製できることを明らかにしました。ヒト臍帯(へその緒)の細胞を加圧培養すると、細胞間結合に重要なN-カドヘリンの細胞膜での発現、細胞と細胞外マトリックスを結合させるインテグリンα5β1、コラーゲン産生および、コラーゲンを架橋して線維形成を促すリシルオキシダーゼの発現を増加させることができ、その結果、細胞から三次元構造をもつ血管様の組織が作製できることが示されました。さらに、この細胞シートは血圧に耐えられる強度があり、動物への移植で血管の長期開存が確認されました。本研究成果は、バイオマテリアル専門誌「Acta Biomaterialia」に掲載されました(現地時間2023年10月2日公開)。本成果は、体内に残存する人工的な異物を含まない材料として、今後先天性心疾患などの心血管手術への応用が期待されます。




【本研究のポイント】
・低酸素下周期的加圧培養法を用いて細胞のみから移植可能な強度の高い三次元の組織を構築できた。
・本成果の方法で作製された組織体は、人工物を含まない移植材料として期待される。

【研究の背景】
 現在血管の修復術を必要とする場合、患者さん自身の血管などの自己組織を用いるか、人工素材のグラフトを用いています。しかしながら、自分自身の組織が使えない場合も多く、人工素材の血管は感染の問題などのリスクがあります。また、人工素材は成長とともに大きくならないことから、先天性心疾患では再手術が必要になる場合があります。そこで、生体材料のみから作られる人工血管の開発が試みられてきましたが、強度が低かったり、作製工程が複雑で長期間かかったりするなど、まだ問題点が多くあります。

【本研究で得られた結果・知見】
 本研究では、移植材料として赤ちゃんの誕生とともに処分される臍帯血管の細胞を用いて、先天性心疾患の患者さんに使える人工血管の開発を目的としました。血管は生体内では常に血圧がかかっており、特に子宮内が低酸素環境であることから、細胞から組織が作られるときには、低酸素環境で周期的に圧力がかかることが重要なのではないかと着想しました。独自に開発した培養装置で、細胞のみから人工血管を短期間に作製できる可能性を示しました。この培養法を用いると、細胞本来の機能を引き出すことで、細胞-細胞、細胞-生体由来の細胞外マトリックス、細胞外マトリックスの三次元的な結合が短期間で構築されることが明らかとなりました。

【今後の研究展開および波及効果】
 細胞のみから、薬剤やタンパクなどの添加物なしに組織を作製する本研究のシンプルな方法を用いることで、血管の細胞以外、例えば線維芽細胞でも組織を作製できる可能性があることが明らかとなっています。今後の研究でさらに検証する必要がありますが、人工素材を用いない移植材料として、血管やその他の疾患への利用が期待されます。

【掲載誌名・DOI】
掲載誌名:Acta Biomaterialia
DOI: https://doi.org/10.1016/j.actbio.2023.09.041

【論文タイトル】
Hydrostatic pressure under hypoxia facilitates fabrication of tissue-engineered vascular grafts derived from human vascular smooth muscle cells in vitro

【著者】
Tomoyuki Kojima, Takashi Nakamura, Junichi Saito, Yuko Hidaka, Taisuke Akimoto, Hana Inoue, Christian Nanga Chick, Toyonobu Usuki, Makoto Kaneko, Etsuko Miyagi, Yoshihiro Ishikawa, Utako Yokoyama* (*責任著者)

【主な競争的研究資金】
本研究は、主に以下の支援を受けて行われました。
日本学術振興会科研費:UY, JP20K21638; TN, JP22K08963; MK, JP23H01383
AMED橋渡し研究戦略的推進プログラム:UY, JP22ym0126806


▼本件に関する問い合わせ先
企画部 広報・社会連携推進室
住所:〒160-8402 東京都新宿区新宿6-1-1
TEL:03-3351-6141
メール:d-koho@tokyo-med.ac.jp


【リリース発信元】 大学プレスセンター https://www.u-presscenter.jp/

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