プレスリリース
―新規開発のアプリを用いて街の魅力や課題を再発見し、新しい都市づくりに貢献 ―
横浜市立大学先端医科学研究センター コミュニケーション・デザイン・センター(センター長:武部貴則特別教授 以下、YCU-CDC)、大成建設株式会社(代表取締役社長:相川善郎)、株式会社山手総合計画研究所(代表取締役:片岡公一)の3者は共同で、デジタルを活用した住民参加型ウェルビーイング探索活動「Enabling City Walk!」を、国内4街区を対象に延べ9回に渡り実施しました。本活動は、地域住民や学生などが参加し、ウェルビーイング向上につながる要素である「イネーブリング・ファクター*1」の探索によって各地での幸福と健康を目指した街の魅力や課題を再発見することで、すべての人のウェルビーイングを実現する新しい都市づくりに貢献するものです。
国が提唱するデジタル田園都市国家構想や自治体のスマートシティ構想などにおいて、地域住民のウェルビーイング向上が欠かせない視点となっています。YCU-CDCは、2021年の「JSTムーンショット・ミレニアプログラム*2」の調査研究成果として、住民の幸福(Happiness)と健康(Health)を同時に向上させることで全ての人のウェルビーイングを実現する新しい未来の都市像「Enabling City(イネーブリング・シティ)*3」を提唱し、実現に向けた取り組みを進めてきました。
これらを背景に、大成建設とYCU-CDCは、イネーブリング・シティ実現に向けたバックキャストによる共創活動として、2021年に大成建設ウエルネス作業所で実証実験を開始し、イネーブリング・ファクターに基づく評価や導入効果を検証しました。
この検証結果に基づき、3者はイネーブリング・ファクターを評価指標とする専用アプリを開発し、デジタルを活用した住民参加型ウェルビーイング探索活動「Enabling City Walk!」を各地で展開しました。
今回実施したウェルビーイング探索活動の概要は、以下の通りです。(図1参照)
【対象都市、場所、時期】
@ 横浜市 中区関内・大通り公園エリア(2021年12月、2023年3月)
A 大阪市 西淀川区内各所(2022年9月〜11月)*4
B 札幌市 厚別区新さっぽろ駅周辺(2022年7月)
C 札幌市 白石区(2022年9月)
【参加者】
・地域住民、団体職員、学生、自治体職員、地域企業、地域医療従事者、
ゼネコン・デベロッパー関係者、研究者など様々なステークホルダー
【実施内容】
・探索活動では、地域住民、学生、自治体職員などとともに街を歩き、幸福(Happiness)と健康
(Health)の良し悪しについて、個人が感じた街中の要素を探索
・独自開発の専用アプリを用いて、参加者一人一人が発見した幸福と健康の良し悪しに関わ
る要素を、写真やコメントなどを添付して各自のスマートフォンから投稿。
・多種多様な街の魅力や課題など個々の感じ方に関する意見などのデータを収集・分析
【専用アプリの利用方法と特徴】
・入力項目:撮影した画像に対して、画面上で幸福と健康の良し悪しを選択し、コメントな
ど各種情報を添えて投稿。
・出力項目:投稿された時間、位置での幸福と健康の良し悪しなどの情報を4つのカテゴリーに分類し、
リアルタイムに地図上で表示。同時に投稿の写真やコメントも閲覧可能。
・特徴:
多くの人が共通して幸福を感じた風景(またはその逆の)要素や様々な声を直に登録し、
リアルタイムに評価結果を地図上で可視化することで、利用者間で容易に情報共有することができ、
街の魅力や課題を発見することが可能。
スマートフォン、タブレット端末、PCなど媒体に関わらず使用でき、利用者毎の評価結果を
抽出することも可能。
【探索活動結果】
上記の専用アプリで投稿された意見などのデータ収集・分析から、探索活動を通じて得られた成果に関する主な意見は以下の通りです。
日ごろ何気なく目にしている物や景色を、ウェルビーイングの観点から参加者自身が主観で評価することにより、街に存在する「イネーブリング・ファクター」を数多く発見することができました。
紙等で記録を行う従来の住民参加型ワークショップでは、データ分析が困難で、意見の取りこぼしも少なくなかったため、本アプリではデジタルを活用することによりあらゆる意見の収集が可能となり、様々な観点から気づきを得ることができました。
投稿された意見などをリアルタイムで地図上に可視化することで、お互いが気づかなかった街の魅力や課題を認識し、相互に共有することができました。
今回の探索活動から新規開発した専用アプリの有効性が確認され、デジタルを活用した新しいまちづくり手法のひとつとして、行政に対する支援や都市開発に役立てることが可能となりました。
今後は、大成建設、山手総合計画研究所とともに、デジタルデータを活用した本アプリを最大限に活かし、地域住民や学生ほかあらゆる年代の人々の声を直接集め、ウェルビーイングな街づくりのための共創活動を展開してまいります。また、今年度にはYCU-CDCを中心とするコンソーシアムを設立し、各地での探索活動を加速することで得られた成果を、未来の都市づくりに活用してまいります。
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図1 ウェルビーイング探索活動 「Enabling City Walk!」 の概要
用語説明
*1 イネーブリング・ファクター:
幸福(Happiness)と健康(Health)の双方を高めることの可能な、製品、サービス、空間などの因子。街区の中では、風景や植栽、歩道などの都市空間を構成するあらゆる要素の中で、人々がHappyかつHealthyと感じる要素がイネーブリング・ファクターの候補となる。
*2 JSTムーンショット・ミレニアプログラム:
科学技術振興機構(JST)は新たな社会における科学技術のあり方を検討するため、本プログラムにて2021年1月に21チームを採択し、YCU-CDCは2021年7月までの6か月間で調査研究報告書(*3)を取りまとめた。
*3 Enabling City(イネーブリング・シティ)に関する調査報告書:
https://www.jst.go.jp/moonshot/program/millennia/pdf/report_12_takebe.pdf
*4 大阪市西淀川区:
イネーブリング・シティ西淀川プロジェクトとして、EXPO共創チャレンジに登録。https://team.expo2025.or.jp/ja/challenge/785
横浜市立大学先端医科学研究センター コミュニケーション・デザイン・センター
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ヘルスケア分野のコミュニケーション課題解決を目指す、
世界初の医科学研究機関におけるクリエイティブ研究拠
点です。医科学研究の拠点においてクリエイティブ研究の
ための持続可能な開発体制を構築し、コミュニケーションの力を使って、ひとびとの健康や幸福に寄与すること、ひいては、超高齢社会に対応した新たな社会のあり方を提案することを目指しています。
http://y-cdc.org/
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