プレスリリース
【大阪大学】人文学研究科に複言語・複文化共存社会研究センターを開設、25言語の教育・研究を活かして社会課題の改善へ -- 外国にルーツを持つ子どもたちの学びを支える
大阪大学大学院人文学研究科は、附属の組織として「複言語・複文化共存社会研究センター」(Diversity & Community Engagement Research Center: DERC, ふくふくセンター)を、4月1日に箕面キャンパスにて開設しました。本センターは外国にルーツを持つ子どもたちの支援のために活動し、地域社会ひいては日本全国における課題解決に取り組む環境を整備するものです。
【設立の背景と将来の取り組み】
日本国内で、外国にルーツを持つ子どもたちの数は年々増加しており、出入国在留管理庁によると 2021年末時点で在留外国人は2,760,635人、うち18歳以下の子どもは294,350人います。また、令和3年度学校基本調査によると外国人児童生徒は122,569人いるとされています。また、そのルーツとなる国や地域、言語のバリエーションも増加しており、令和3年度に日本語指導が必要とされた児童生徒の母語や家庭内言語の数は23以上に上ります。
これまで、日本の学校現場では、外国にルーツを持つ子どもに対する日本語の指導体制は整備されてきましたが、ルーツを持つ国や地域の言語や文化を学ぶ機会は少なく、子どもたちの「言語や文化の喪失」や「アイデンティティの揺らぎ」といったさまざまな課題が指摘されています。
こうした課題に対し、箕面キャンパスにあるさまざまな部局の教員・学生・卒業生らが個別に支援活動や通訳等に携わってきましたが、今後も拡大傾向にある課題に対処するためには、組織的対応、支援を担う人材の育成、情報共有や発信等をおこなう必要性があり、一元的な窓口の設置が求められていました。
以上のことから、25言語の教育・研究を通じて外国にルーツを持つ子どもたちの母語・母文化を研究する素地や人材が豊富にある人文学研究科・外国語学部に、一元的な窓口として本センターを設立することにいたしました。従来の日本語・日本文化の学習機会支援と合わせて、子どもたちが自身のルーツに誇りを抱きつつ、より適切な教育が受けられるよう支援していきます。
なお、本センター設立に当たっては、外国にルーツを持つ子どもたちの教育を主に研究している若手研究者の矢元貴美講師(フィリピン語専攻)、近藤美佳講師(ベトナム語専攻)が中心となって準備活動に尽力いたしました。両名は本センター設立後も活動の中核となります。
【取り組み方針】
本センターは以下の3点を主たる取り組み方針とします。
(1)窓口の設置
支援・協働依頼や相談に対応し、学生や卒業生を紹介するとともに、現場の実態を把握します。
(2)研究・教育活動の推進
学生らへのガイダンスやフォローアップ、成果や課題の把握、講演会等における学内外への発信を行います。
(3)協力・連携体制の構築
自治体、各団体、教育機関と学区や自治体の枠組みを超えた協力体制を構築するとともに、学内部局との連携・協力によるデータ収集や課題の把握を担います。
【目的と効果】
本センターでは、外国にルーツを持つ子どもたちへの支援を通じて、学校現場において実社会の持つ多様性を受け入れることの大切さを伝え、実社会の見え方を変えていきます。
(1)日本社会における社会的不平等、異文化間衝突、言語間格差といった社会課題の改善
(2)異文化間の対話と相互理解を深める架け橋となる学生の育成
(3)学生や地域の人々、関係団体等が協働して課題解決に取り組む環境の醸成
を目指すとともに、ダイバーシティ&インクルージョンの促進に貢献いたします。
【支援のご相談】
本センターへの支援の相談依頼や卒業生の方々などの協働希望は当面はメールで受け付けます。順次ホームページ( http://www.derc.hmt.osaka-u.ac.jp
)上に問合せフォームや協働希望登録フォームを整備いたします。支援対象は、現地派遣は近畿圏が中心となりますが、遠方の支援もオンラインにより対応可能です。
【リリース発信元】 大学プレスセンター https://www.u-presscenter.jp/