プレスリリース
エフェドリンアルカロイド除去麻黄エキス(EFE)の新型コロナウイルス感染後のウイルス増殖阻害効果に関する論文が学術雑誌 Microorganismsに掲載 -- 北里大学
北里大学、国立医薬品食品衛生研究所、及び、株式会社ツムラは、国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業として「感染初期のCOVID-19患者の重症化を防止する新規生薬エキス製剤の開発」を行っています。このたび、エフェドリンアルカロイド除去麻黄エキス(EFE)の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染後の増殖阻害効果に関する論文が、2023年2月20日付で学術雑誌Microorganisms(IF 4.926)に掲載されました。
■論文情報
Masashi Uema, Masashi Hyuga, Kenzo Yonemitsu, Sumiko Hyuga, Yoshiaki Amakura, Nahoko Uchiyama, Kazushige Mizoguchi, Hiroshi Odaguchi, and Yukihiro Goda, Antiviral effect of ephedrine alkaloids-free Ephedra Herb extract against SARS-CoV-2 in vitro, Microorganisms, 2023, 11 534. https://doi.org/10.3390/microorganisms11020534
本論文は、新型コロナウイルス高感受性細胞Vero E6/TMPRSS2を用いて、in vitroでEFEの効果を解析したものです。アフリカミドリザルの腎臓の上皮細胞株・Vero E6細胞に、Transmembrane protease serine 2(TMPRSS2)遺伝子を導入して恒常的に発現させたVero E6/TMPRSS2細胞は、SARS-CoV-2が感染しやすくなった細胞です。本論文では、Vero E6/TMPRSS2細胞の増殖に影響を与えない濃度のEFEを用いて感染後のウイルス増殖阻害効果を解析しました。その結果、EFEは、SARS-CoV-2、及び、SARS-CoV-2変異株(Alpha, Beta, Gamma, Omicron)に対して、感染後に各ウイルスの増殖阻害効果を示すことが明らかになりました。さらに、EFEの活性成分である高分子縮合型タンニン(EMCT)が、EFEに含有される濃度で同様の効果を示すこともわかりました。
現在、感染初期の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬開発を目指して、医師主導治験「感染初期のCOVID-19患者に対するEFEの有効性及び安全性を検討する探索的試験 ― 二重盲検、ランダム化、多施設共同Phase I / II比較試験 ―」を実施中です。
(参考文献)
1) Naohiro Oshima, Tadatoshi Yamashita, Sumiko Hyuga, Masashi Hyuga, Hiroyuki Kamakura, Morio Yoshimura,Takuro Maruyama, Takashi Hakamatsuka, Yoshiaki Amakura, Toshihiko Hanawa, Yukihiro Goda, Efficiently prepared ephedrine alkaloids-free Ephedra Herb extract: a putative marker and antiproliferative effects, J. Nat. Med., 70, 554-562, 2016.
2) Sumiko Hyuga, Masashi Hyuga, Naohiro Oshima, Takuro Maruyama, Hiroyuki Kamakura, Tadatoshi Yamashita, Morio Yoshimura, Yoshiaki Amakura, Takashi Hakamatsuka, Hiroshi Odaguchi, Yukihiro Goda, and Toshihiko Hanawa, Ephedrine alkaloids-free Ephedra Herb extract: a safer alternative to ephedra with comparable analgesic, anticancer, and anti-influenza activities, J. Nat. Med., 70, 571-583 2016.
3) Morio Yoshimura, Yoshiaki Amakura, Sumiko Hyuga Masashi Hyuga, Syunsuke Nakamori, Takuro Maruyama, Naohiro Oshima, Naoko Uchiyama, Hideyuki Ito, Yoshinori Kobayashi, Hiroshi Odaguchi, Takashi Hakamatsuka Toshihiko Hanawa and Yukihiro Goda, Quality Evaluation and Characterization of Fractions with Biological Activities in Ephedra Herb Extract and Ephedrine Alkaloids-Free Ephedra Herb Extract, Chem. Pharm. Bull., 68 (2), 140-149, 2020.
■EFEの特徴
EFEの原料生薬は、感染症の初期の治療に用いられる麻黄湯、葛根湯、麻杏甘石湯などの漢方薬に配合されている''麻黄''です。麻黄には、エフェドリンやプソイドエフェドリンなどのエフェドリンアルカロイドが含まれており、興奮、動悸、血圧上昇、排尿困難、不眠など副作用を惹起することがあるため、麻黄配合漢方薬は、循環器系障害、高血圧症、及び腎障害のある患者や、体力の衰えている者、高齢者に対して使用上注意を要します。そこで、麻黄から副作用成分を除去したEFE(Ephedrine alkaloids-free Ephedra Herb extract)が開発されました(特許第6781881号)。EFEは、実験室での研究から、関節痛に対する鎮痛作用、抗がん作用、がん転移抑制作用、インフルエンザ感染阻害作用を有することが明らかになっています。
なお、EFEの新型コロナウイルス感染症の予防又は治療に関する発明が2023年1月に特許化されました(特許第7214080号)。
■治験の概要
感染初期のCOVID-19患者様で自宅療養の方を対象とした医師主導治験を実施中です。治験のご案内は、厚労省の治験等の情報に関するHP ( https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_20871.html
)の「新型コロナウイルス感染症に関する治験等のコールセンター」に掲載されています。また、治験計画の情報は厚生労働省 臨床研究実施計画・研究概要公開システム(jRCT: https://jrct.niph.go.jp/latest-detail/jRCT2031210063
)で公開されています。
■問い合わせ先
※メールアドレスは _at_を@に変換してください。
【研究に関すること】
・北里大学東洋医学総合研究所
臨床研究部 部長補佐 日向 須美子
E-mail:hyuga-s_at_insti.kitasato-u.ac.jp
・国立医薬品食品衛生研究所
所長 合田 幸広
〒210-9501 川崎市川崎区殿町3-25-26
E-mail:ywakabayashi_at_nihs.go.jp (所長秘書)
【取材に関すること】
・学校法人北里研究所 総務部広報課
〒108-8641 東京都港区白金5-9-1
TEL:03-5791-6422
e-mail:kohoh_at_kitasato-u.ac.jp
・国立医薬品食品衛生研究所 総務部業務課
〒210-9501 川崎市川崎区殿町3-25-26
TEL:044-270-6620
E-mail:matsumoto_at_nihs.go.jp
【リリース発信元】 大学プレスセンター https://www.u-presscenter.jp/