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日本電信電話株式会社

藻類の二酸化炭素吸収量を画期的に向上させる遺伝子を特定

(Digital PR Platform) 2023年02月09日(木)14時26分配信 Digital PR Platform

 日本電信電話株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:島田 明、以下「NTT」)は、藻類の二酸化炭素(CO2)吸収に関わる遺伝子の選定手法を確立し、ゲノム編集技術※1によってCO2吸収量の画期的な増加が期待できる遺伝子の特定に成功しました。

1.背景
 NTTは、リージョナルフィッシュ株式会社(本社: 京都府京都市、代表取締役社長: 梅川 忠典)と共同で、藻類と魚介類の食物連鎖にゲノム編集技術を適用して、海洋中に溶け込んだ二酸化炭素(CO2)量を低減させる二酸化炭素変換技術の実証実験に2021年から取り組んでいます※2。この実証は、藻類の海水中に溶け込んだCO2(主に重炭酸イオン:HCO3-)を吸収する機能と、藻類をエサとする魚介類の成長速度の両方をゲノム編集技術によって向上させることで、CO2削減を実現する試みであり、NTTは藻類のCO2吸収量を向上させるゲノム編集技術の確立をめざしてきました。
 これまでの藻類に関する研究では、主に、藻類を食料や燃料として活用することを目的に、増殖速度や油脂生産能力に焦点をあてたゲノム編集が行われてきました。一方、本取組の目的であるゲノム編集によってCO2吸収量を向上させるためには、CO2吸収に関わる遺伝子が明確になっていないことから、有用な形質※3の変化が期待できる標的遺伝子を発見する必要がありました。今回、NTTは、藻類の持つ形質に関わる遺伝子を選定するための手法を確立し、ゲノム編集技術を適用することで画期的なCO2吸収量の増加が期待できる遺伝子の特定に成功しました。

2.遺伝子の特定
 藻類の持つ遺伝子とその発現※4による形質の評価は、1つの遺伝子のみが編集された変異体を作成し、対象とする形質が顕著に表れる環境を用いてなされます。藻類に求められる有用な形質としては、CO2吸収量の増加のほか、バイオマス燃料としての油脂生産能力の向上や増殖速度の向上などが考えられます。これらの形質に対して、どの遺伝子を編集した変異体の形質変化量が大きいかを定量的に評価することで、ゲノム編集の標的とすべき遺伝子の候補が選定されます。
 例えば、CO2吸収に関わる遺伝子の選定では、CO2の取り込みや光合成反応に関係しそうな候補遺伝子を対象として、それらの機能を増強させたり、喪失させたりします(図1)。より多くのCO2を取り込もうとするCO2濃度が低い環境において、CO2吸収に関わる遺伝子が増強または喪失されると、CO2を吸収して有機物を作る増殖の速度が、親株と比較して顕著に変化するため、CO2吸収に関わる遺伝子であると判定されます。NTTが行った評価では、12種類の標的候補遺伝子に対する遺伝子編集株を作成し、親株と比較して、増殖速度の増加が顕著であり、CO2吸収量の画期的な増加が期待できる2種類の遺伝子の選定に成功しました(図2)。


[画像1]https://user.pr-automation.jp/simg/2341/67838/650_274_2023020818355763e36cfd5eec4.png

図1 CO2吸収に関わる遺伝子の選定手法


[画像2]https://user.pr-automation.jp/simg/2341/67838/650_454_2023020818355763e36cfd1321d.png

図2 NTTの評価結果(12遺伝子)

3.今後の展開
 今後は、特定された遺伝子に対するゲノム編集を実施し、CO2吸収量の評価を実施するとともに、その他の有用形質に関わる遺伝子も特定していきます。また、藻類を含む生物は、進化の過程において、生命維持または代謝に必要な遺伝子群を引き継いでおり、CO2吸収に関わる遺伝子は、植物やその他の光合成生物にも適用できる可能性があります。そのため、様々な生物における遺伝子と形質変化の関係を数値データ化し、機械学習※5によって発見されるパターンやルールから形質変化を予測するモデルも構築していきます。本成果については、NTTとリージョナルフィッシュをはじめとするパートナーにより構想するグリーン&フード事業※6において活用することを想定しており、同事業が掲げる人類の環境負荷低減と食料不足の解決に貢献していきます。

<用語解説>
*1 ゲノム編集: 生物が持つ特定の塩基配列を意図的に切断し、切断されたDNAが修復される過程で生じる塩基配列の変化によって、本来担う機能を改変させる技術です。外来からの遺伝子導入によって機能改変を行う遺伝子組換え技術と異なり、自身が持つ塩基配列のみを変化させるため、従来の品種改良と同様とみなされています。
*2 2021年11月12日ニュースリリース「海洋の二酸化炭素減少をめざしNTTとリージョナルフィッシュが実証開始」 https://group.ntt/jp/newsrelease/2021/11/12/211112a.html
*3 形質: 生物のもつ性質や特徴です。
*4 発現: 遺伝子の情報が、生体内のタンパク質の合成を通じて、様々な生体機能として現れることです。
*5 機械学習: 人工知能(AI)を支える技術の一つであり、大量のデータを繰り返し学習することで、パターンやルールを発見し、計算モデルを自動的に構築する技術です。
*6 NTTおよびリージョナルフィッシュをはじめとするパートナーが構想する藻類や魚介類を生産・販売する事業です。

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