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大正三色ニシキゴイが鮮やかな墨色を保つホルモン機構を解明 -- 北里大学

(Digital PR Platform) 2023年01月25日(水)14時05分配信 Digital PR Platform



大正三色は黒、赤、白色の鮮やかな模様を持つニシキゴイです。しかし、その鮮やかな色を保つしくみは、これまでよくわかっていませんでした。北里大学海洋生命科学部と新潟県内水面水産試験場の研究グループは、大正三色の黒い模様の色が濃く維持されるしくみの一端を明らかにしました。この研究成果は、2022年12月22日付で、Frontiers in Endocrinology誌にオンラインで公開されました。




■研究の背景
 一般に、魚類は背景色の変化に応じて体色を変えることができます。背景色の明るさが変化すると、ホルモンや交感神経が皮膚に存在する色素胞に作用し、色素胞の内部の色素顆粒が拡散したり凝集したりして体色が変化します。この体色変化はカモフラージュによって自然界で生き残るために重要な能力です。一方、ニシキゴイは黒、赤、白色などの模様を特徴とする観賞魚で、周囲の背景から浮き立つように鮮やかな色を保ちます。本研究は、ニシキゴイが鮮やかな体色を維持するしくみを探るため、ニシキゴイの代表的な品種である大正三色のホルモン機構をマゴイと比較しました【画像1】。


■研究内容と成果
 黒い水槽と白い水槽にマゴイと大正三色を馴致させたところ、白水槽のマゴイの色は黒水槽のマゴイに比べて薄くなりましたが、大正三色の黒い模様の色(墨)はほとんど変わりませんでした【画像2】。研究の結果、大正三色の鱗の黒色素胞では、体色を薄くするホルモンに対する感受性がマゴイの黒色素胞よりも低いことがわかりました。さらに、体色を薄くするホルモンの脳内遺伝子発現量を調べたところ、白水槽のマゴイではそのホルモンが黒水槽のマゴイよりも多く産生されるのに対し、大正三色では白水槽でも産生量が黒水槽とほとんど変わらないことがわかりました。以上の結果は、大正三色という品種が生まれる過程において、黒色素胞のホルモン感受性やホルモンの産生能力が変化したために体色変化能力が低下したことを示唆しています。逆にいえば、体色変化能力が低下したことによって、大正三色はどのような環境でも鮮やかな色を維持できるようになったと考えられます。本研究によって、ニシキゴイとマゴイのホルモン機構の違いが初めて明らかにされました。


■今後の課題
(1)ニシキゴイにはさまざまな品種があります。背景色に対する体色変化の起きやすさは品種によって異なります。品種によるホルモン機構の違いを明らかにすることによって、体色が変化しやすい品種の色を鮮やかに保つヒントが得られる可能性があります。
(2)体色調節ホルモンは、脳のさまざまな機能(摂食調節、エネルギー代謝、睡眠、情動)の調節にも関与します。ニシキゴイのホルモン機構の解明は、新たな成長促進技術や健康維持技術の発展に貢献する可能性があります。


■論文情報
掲載誌:Frontiers in Endocrinology
論文名:Taisho-Sanshoku koi have hardly faded skin and show attenuated melanophore sensitivity to adrenaline and melanin-concentrating hormone
邦題名:大正三色ニシキゴイは黒色素胞のアドレナリンおよびメラニン凝集ホルモン感受性が弱く体色が明化しにくい
著 者:篠原由香梨(北里大学)、笠木聡(北里大学)、阿見彌典子(北里大学)、星野勧宏(新潟県)、石井亮(新潟県)、兵藤則行(新潟県)、山口裕昭 (新潟県)、佐藤将(新潟県)、天野勝文(北里大学)、高橋明義(北里大学)、水澤寛太(北里大学)
DOI:10.3389/fendo.2022.994060


■問い合わせ先
※メールアドレスは _at_を@に変換してください。
【研究に関すること】
 北里大学海洋生命科学部
 准教授 水澤 寛太
 e-mail: mizusawa_at_kitasato-u.ac.jp


【取材に関すること】
・学校法人北里研究所 総務部広報課
 〒108-8641 東京都港区白金5-9-1
 TEL: 03-5791-6422
 e-mail: kohoh_at_kitasato-u.ac.jp
・新潟県内水面水産試験場
 〒940-1137 新潟県長岡市大川原町2650
 TEL: 0258-22-2101
 e-mail: ngt068150_at_pref.niigata.lg.jp


【リリース発信元】 大学プレスセンター https://www.u-presscenter.jp/

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