• トップ
  • リリース
  • リンパ管壁のタンパク質分解が全身の免疫バランスに波及する -- 新たな血管保護の仕組みを解明 --

プレスリリース

  • 記事画像1

リンパ管壁のタンパク質分解が全身の免疫バランスに波及する -- 新たな血管保護の仕組みを解明 --

(Digital PR Platform) 2022年12月28日(水)14時05分配信 Digital PR Platform



昭和大学(東京都品川区/学長:久光正)の宮崎拓郎准教授(医学部生化学講座)、宮崎章教授(同)を中心とした研究グループは、東京大学、愛知医科大学、ロンドン大学との共同研究により、細胞内プロテアーゼ「カルパイン」による過剰なタンパク質分解によりリンパ管に起因する免疫抑制が低下し、血管にて動脈硬化症が引き起こされる仕組みを世界で初めて明らかにしました。本研究成果は、2022年12月15日(米国東部標準時間)に米国心臓協会誌「Arteriosclerosis, Thrombosis, and Vascular Biology」(impact factor 10.514)のオンライン版に掲載されました。




■研究の背景
 体内のコレステロールが過剰な状態は脂質異常症と呼ばれ、その影響で血管壁や肝臓などで軽度の炎症が生じ、動脈硬化症や肝疾患の原因となることが広く知られています。また、リンパ管は小腸などの主要臓器やリンパ節を繋ぎ、免疫細胞や食物中の脂質成分の輸送経路になることが知られています。近年、脂質異常症の存在下でリンパ管機能が低下し、これが動脈において動脈硬化症の発症・進展に寄与するとの報告が相次いでいます。

■研究成果
 研究グループは遺伝子改変マウスの解析を基に、過剰なコレステロールの摂取がリンパ管壁の細胞(リンパ管内皮細胞:図1)の制御異常を引き起こし、これが免疫抑制性のリンパ球(制御性T細胞)の不安定化に繋がることを解明しました。制御性T細胞はTGF-b1と呼ばれるサイトカインによって維持・安定化されますが、脂質異常症に伴い生じるリゾリン脂質がリンパ管内皮細胞内に存在するプロテアーゼ「カルパイン」を活性化し、TGF-b1産生の関連因子を分解することが一因となります。TGF-b1産生低下により、全身的に制御性T細胞の数が減少し、動脈において炎症応答が促進され、動脈硬化症が増悪化します。

■研究の意義
 脂質異常症によりリンパ管自体にどのような機能異常が引き起こされるか、詳細は明らかになっていませんでした。本研究により、脂質異常症におけるリンパ管内皮細胞の機能異常は制御性T細胞の安定化に拮抗し、少なくとも動脈の免疫抑制を低下させることが明らかとなりました。抗カルパイン薬はすでにアルツハイマー型認知症などで創薬研究が実施されており、今後上記薬剤が心血管代謝疾患にも応用されることが期待されます。

■本研究への支援
 本研究は日本学術振興会 科研費基盤B(22H03520: 研究代表者 宮崎拓郎)、科研費基盤C(21K08585: 研究代表者 宮崎章、19K08590: 研究代表者 宮崎拓郎)、ブリストルマイヤーズスクイブ研究助成(研究代表者 宮崎拓郎)、personal chair grant from the British Heart Foundation(CH/11/3/29051:大津欣也)、鈴木謙三記念医科学応用研究財団研究助成(研究代表者 宮崎拓郎)、内藤記念科学振興財団研究助成(研究代表者 宮崎拓郎)、持田記念医学薬学振興財団研究助成(研究代表者 宮崎拓郎)の支援を受けて実施されました。

【掲載誌】
・米国心臓協会誌「Arteriosclerosis, Thrombosis, and Vascular Biology」(impact factor 2021: 10.514)
(DOI: https://doi.org/10.1161/ATVBAHA.122.317781

(オンライン掲載 12月15日 米国東部時間)

【掲載論文の英文表題と著者およびその和訳】
・Hypercholesterolemic Dysregulation of Calpain in Lymphatic Endothelial Cells Interferes With Regulatory T-Cell Stability and Trafficking
 Takuro Miyazaki, Yoshitaka Taketomi, Takayoshi Higashi, Hirokazu Ohtaki, Takashi Takaki, Koji Ohnishi, Masahiro Hosonuma, Nozomu Kono, Risako Akasu, Shogo Haraguchi, Joo-Ri Kim-Kaneyama, Kinya Otsu, Hiroyuki Arai, Makoto Murakami, Akira Miyazaki (*Corresponding author)

・脂質異常症に起因するリンパ管内皮細胞のカルパイン機能異常は制御性T細胞の安定性と体内動態に拮抗する
 宮崎 拓郎*、 武富 芳隆、 東 鷹美、大滝 博和、高木 孝士、大西 紘二、細沼 雅弘、河野 望、赤須 里沙子、原口 省吾、金山 朱里、大津 欣也、新井 洋由、村上 誠、宮崎 章 (*Corresponding author)

▼本件に関する問い合わせ先
 昭和大学医学部生化学講座
 東京都品川区旗の台1−5−8
 准教授 宮崎 拓郎(みやざき たくろう)
 TEL:03-3784-8116
 FAX : 03-3784-2346
 E-mail: taku@pharm.showa-u.ac.jp

▼本件リリース元
 学校法人 昭和大学 総務部 総務課 大学広報係
 TEL:03-3784-8059
 E-mail:press@ofc.showa-u.ac.jp

【リリース発信元】 大学プレスセンター https://www.u-presscenter.jp/

このページの先頭へ戻る