プレスリリース
法政大学生命科学部応用植物科学科石川成寿教授の研究グループは、持続可能な社会の大きな阻害要因である植物病を防除する研究をしています。その成果として、ミョウバン類処理が、作物を枯らしたり腐らせたりする、糸状菌病や細菌病を防除できることを発見しました。本発見は、従来の化学農薬の防除に比較して、防除スペクトラムが広く、かつ効果的です。本物質が、上市されれば、持続可能な地球を支える強力なツールになると期待されます。
◆本学の取り組み
世界の食料生産増加率は、人口増加率の半分にも満たず、食料難が確実視されています。悲しいことに、現時点でも多くの餓死者が発生しています。また、食料生産の3分の1は、植物病により失われています。一方、本学は、「持続可能な地球社会の構築を目指す研究の世界的拠点となる」ことを目指して研究・教育を行っています。そこで、石川研究室は、このような困難な状況を打破するため、身近な物質に検索範囲を絞り込み、既知物質の防除力を見出し、リポジショニングする研究を行っています。
◆現状
植物の微生物による病気は、主に糸状菌(カビ)や細菌によって発生します。それらを防ぐため、生産現場では、主に化学農薬を用いて防除しています。しかし、化学農薬による防除は、耐性菌の発生などの諸問題を抱えています。
細菌病の防除には、主に銅剤や抗生物質剤が用いられています。しかし、使用できる農薬の種類は、極めて少ないです。また、銅剤の場合、薬害の発生により使用時期が限られ、防除の空白期間が生じています。さらに、抗生物質剤では、耐性菌の発生が問題となっています。
◆解決方法
本研究室では、環境にやさしく、防除効果の高い物質の探索および実証試験を行っています。その結果、多くの植物病に対して、ミョウバン類(カリミョウバン、焼ミョウバンなど)処理の優れた防除力を発見しました。ミョウバン類は、ビスケットやパンの膨張剤、根菜などのアク抜きなどに用いられている馴染み深い物質です。
本研究による防除例として、糸状菌病ではイネいもち病、イネばか苗病、イネ苗立枯病、イネごま葉枯病などに対して、既存の化学農薬および生物農薬に比較して、同等または優れた防除効果を示しています。細菌病では、ハクサイ軟腐病、キュウリ斑点細菌病、イネ苗立枯細菌病、イネ褐条病などで同様の結果を得ています。上記の病気は、すべて現場で問題となっている防除が難しいものです。
特に、本物質の防除効果は、ハクサイ軟腐病、キュウリ斑点細菌病、イネばか苗病およびイネ褐条病に対して、既存の化学農薬や生物農薬に比較して、優れています(図、写真1,2)。
◆防除メカニズム
本物質の防除メカニズムを解説します。本物質処理により、病原糸状菌に対しては、菌糸の異常分岐、分生子(胞子)の発芽抑制、付着器の奇形などを生じさせ、生育を抑制します(写真3,4)。病原細菌に対しては、細菌外膜を損傷させ、増殖を抑制します(写真5,6)。
これらの発見を基に、特許を申請しています。その内容は、特許公開番号 特開2022-3020(P2020-3020A)を参考にして下さい。
本プレスリリースは、持続できる地球を支える人類共通の「実践知」が一つ増えたことをお知らせするものです。世界中で使用できるようになれば、農産物の質と量を向上させ、農業の発展に貢献できると考えられます。なお、本物質の生産現場での使用には、安全性などが厳密に審査され、農薬登録される必要があります。
【取材に関するお問い合わせ先】
法政大学 総長室広報課
TEL: 03-3264-9240
E-mail: pr@adm.hosei.ac.jp
【研究内容に関するお問い合わせ先】
法政大学生命科学部応用植物科学科 教授 石川 成寿
TEL: 042-387-7090
E-mail: s.ishikawa@hosei.ac.jp
【リリース発信元】 大学プレスセンター https://www.u-presscenter.jp/