• トップ
  • リリース
  • 膵癌患者の腸内環境における新たなメカニズムを解明 〜プレ・プロバイオティクスを用いた膵癌患者の術後QOL向上に期待〜

プレスリリース

学校法人藤田学園

膵癌患者の腸内環境における新たなメカニズムを解明 〜プレ・プロバイオティクスを用いた膵癌患者の術後QOL向上に期待〜

(Digital PR Platform) 2022年09月07日(水)10時00分配信 Digital PR Platform

藤田医科大学(愛知県豊明市、学長:湯澤由紀夫)の消化器内科学 医科プレ・プロバイオティクス学の研究グループは、株式会社メタジェン(本社:山形県鶴岡市、代表取締役社長CEO・CGDO:福田真嗣)と共同で、膵癌患者と腸内環境におけるメカニズムの一部を解明しました。膵癌は近年増加の一途をたどる癌の一つですが、腸内細菌叢ならびに代謝物質を含めた腸内環境に関する研究は多くはありませんでした。今回の研究は、膵癌患者の腸内細菌叢の多様性は、健常人と大きく変わらないが、口腔内細菌の一部が健常人と比較して多いこと、また、酪酸産生菌の一部が少ないという新たな発見につながりました。これらの細菌は、膵癌の症状や予後などに何らかの影響を及ぼしている可能性が示唆されます。
本研究成果は国際誌「Scandinavian Journal of Gastroenterology」(2022年8月28日付けオンライン版)に掲載されました。本学では、本研究成果をもとに、独自の「プレバイオティクス・プロバイオティクス」を用いて、膵癌において特異的に増加・減少する菌を制御することにより、膵癌治療時のQOL向上に関する研究に発展させていく予定です。


<研究成果のポイント>

膵癌患者の腸内環境は健常者と比較して腸内細菌叢の多様性に大きな差異はなく、他の消化器癌患者のように極端な腸内細菌叢の乱れ(ディスバイオシス)は認められないことが明らかになりました。
膵癌患者の便では、口腔や上部消化管に生息する細菌であるStreptococcus、Actinomyces、Lactobacillusなどが健常者と比較して有意に多く、酪酸産生菌の一種であるAnaerostipesが少ないことが明らかになりました。
膵癌患者の腸内を特異的に改善するプレバイオティクス・プロバイオティクスの研究を推進することにより、膵癌治療時のQOL向上を図るケア方法の開発につながることが期待されます。


<背 景>
膵癌は近年急増している癌の一つであり、そのメカニズムの解明ならびに新たな治療方法開発は、学術的価値のみならず社会的意義もある大きな研究です。一方、近年、急速に注目が集まっている「癌」と「腸内環境」の関係については十分に解明されていませんでした。
今回の研究は、膵癌と腸内環境における関連を評価し、膵癌が生じるメカニズムの一端を明らかにすることで、その後の患者さんのQOL改善につながる可能性があるのではないかと考えました。


<研究手法・研究成果>
本研究成果では、切除不可能な膵体尾部膵管腺癌患者(5名)と健常な日本人(68名)から便を採取し、腸内細菌と腸内代謝物質の組成について評価しました。その結果、膵癌患者では健常者と比べて腸内細菌叢の多様性はほとんど差がないことがわかりました。
一方、膵癌患者では健常人に比べ、口腔内に関連した細菌であるStreptococcus, Actinomyces, Lactobacillusなどが有意に多いこと、酪酸(生体の免疫・代謝機能に重要な影響を及ぼしている短鎖脂肪酸)を作る菌であるAnaerostipesが有意に少ないことが示されました。また、生体の免疫・代謝・抗菌に大きく影響を与える腸内代謝物質も全体として健常人に比べ少ない傾向があることが示されました。これらの結果から、膵癌患者は、健常人と比較して腸内環境が大きく損なわれているわけではないものの、特定の細菌群に違いがあることが示されました。この結果は、膵癌の病状や予後などにこれらの特定の細菌が関与する可能性を示唆しており、これらの細菌をターゲットとしたプレバイオティクスやプロバイオティクスによる介入が、膵癌の新規メカニズム解明や治療方法の開発につながることが期待されます。


<今後の展開>
本共同研究により、膵癌と腸内環境における関連の一部が明らかになりました。今後、プレバイオティクス・プロバイオティクスなどを用いることにより、膵癌における新たなケア方法の開発につながることが期待されます。


<文献情報>
論文タイトル
Changes in intestinal bacteria and imbalances of metabolites induced in the intestines of pancreatic ductal adenocarcinoma patients in a Japanese population: a preliminary result(日本人膵管腺癌患者における腸内細菌の変化と代謝物質の不均衡に関するプレリミナリースタディ)

著者
橋本千樹1、栃尾 巧1、舩坂 好平1、舟橋 和毅2、富樫 友花2、齋藤 美沙2、西本 悠一郎2、水口 佳紀2、中岡 和徳1、渡辺 彩子1、長坂 光夫1,中川 義仁1,宮原 良二1,柴田 知行1,廣岡 芳樹 1

所属
1 藤田医科大学 消化器内科学
2 株式会社メタジェン

掲載誌
Scandinavian Journal of Gastroenterology

掲載日
2022年8月28日(オンライン版)

DOI
10.1080/00365521.2022.2114812



本件に関するお問合わせ先
学校法人 藤田学園 広報部 TEL:0562-93-2868 e-mail:koho-pr@fujita-hu.ac.jp

このページの先頭へ戻る