• トップ
  • リリース
  • 世界最大容量1波長あたり1.2テラビット/秒の光伝送を実現するデジタルコヒーレント信号処理回路および光デバイスを開発〜光ネットワークのさらなる大容量化、長距離化と省電力化を実現〜

プレスリリース

  • 記事画像1
  • 記事画像2

日本電信電話株式会社

世界最大容量1波長あたり1.2テラビット/秒の光伝送を実現するデジタルコヒーレント信号処理回路および光デバイスを開発〜光ネットワークのさらなる大容量化、長距離化と省電力化を実現〜

(Digital PR Platform) 2022年09月05日(月)15時04分配信 Digital PR Platform

 日本電信電話株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:島田 明、以下「NTT」)は、世界最大容量1波長あたり1.2テラビット/秒の光伝送を実現するデジタルコヒーレント(*1)信号処理回路および光デバイスを開発しました。
 独自に開発したデバイスを用いることで、光信号の変調速度を世界最高速の140ギガボーまで高速化し、従来比1.5倍となる1波長あたり1.2テラビット/秒を実現しています。また、800ギガビット/秒の光伝送距離を2倍以上に拡大することも可能となります。
 本成果により、現在広く普及している商用光伝送システム(1チャネルあたり100ギガビット/秒)に比較して、伝送容量は12倍に拡大され、ビットあたりの消費電力は1/10に低減される見込みです。本成果を用いた光伝送システムの高性能化と低消費電力化により、IOWN(*2)構想におけるオールフォトニクス・ネットワークの実現に貢献していきます。





[画像1]https://user.pr-automation.jp/simg/2341/62607/650_402_202209051034326315522845061.png


図1 開発技術の概要図

1.背景
 近年の映像データの流通拡大やクラウド技術の進展に加え、5Gサービスなど新しい情報通信サービスの普及、さらにはリモートワークの急速な普及に伴い、情報通信トラヒックは増大しており、今後も増大し続けることが予想されます。このような状況に対応するためには、基幹系の光通信ネットワークにおいては、単位ビットあたりの伝送に必要となる消費電力とコストを、おおよそ10年で1/10程度のペースで低減することが求められています。
 しかしながら、これまでの技術では、さらなる大容量化に伴う通信用デバイスの消費電力増大を、大幅に削減することが困難でした。そのため、NTTは、既設の光伝送システム容量を経済的かつ大幅に拡張できる世界最高水準の光伝送技術および光デバイス技術の開発を進めてまいりました。

2.開発技術の概要
 本開発技術は、光の偏波、振幅、位相をすべてデジタルデータとして取り込み、高度な信号処理によって光ファイバ伝送路や光電子デバイス中で発生する信号歪みを補償するデジタルコヒーレント光伝送システムに適用されます。図1に、最大伝送容量1.2テラビット/秒の光信号送受信器の構成を示します。世界最高水準のデジタルコヒーレント信号処理回路(図1右上写真)と、世界最大級の光-電気応答帯域を実現する140ギガボー超級の光デバイス(図1左上写真)により構成されます。

2.1デジタルコヒーレント信号処理回路
 理論限界に迫る伝送性能を有する最先端の符号化変調技術(*3)と、低消費電力に大容量データのビット誤りを訂正できる前方誤り訂正技術(*4)を組み合わせることで、光デバイスが有する高速・広帯域性能の潜在力を最大限に引き出すフレキシブル符号化変調(*5)を実現しています。さらに、光ファイバ伝送の信号歪みを低消費電力に補正するアルゴリズムや最先端CMOS(*6)プロセスを活用することで、世界最大容量の1波長あたり1.2テラビット/秒のデジタル信号処理を実現しています。

2.2 140ギガボー超級の光デバイス
 NTT独自構造を採用した世界最高速級の光素子および高速信号を低損失に伝える新パッケージを適用することで超高速の光変調を実現しています。
これらの技術を偏波多重64QAM(*7)に適用した符号化変調光信号により、1波長あたり1.2テラビット/秒を実現しました。

2.3 既存技術との比較および本成果の位置づけ
 本開発技術により、現在広く普及している商用光伝送システム(1波長あたり100ギガビット/秒)の12倍となる1波長あたり1.2テラビット/秒に伝送速度を高速化できます。1波長あたりの伝送容量を拡大させることで、ビット当たりの消費電力も既存光送受信器と比較して、1/10以下に削減が可能となります。
図2に本成果の位置づけを示します。これまで達成されている最大の1波長あたりの容量は国内外含めて800ギガビット/秒でしたが、本開発技術により1.5倍の増大を実現しました。1波長あたりの容量を増大させる方法として、多値レベルのより高い変調方式を利用する方法がありますが、伝送距離が制限されてしまいます。本技術により、これまで100ギガボーであった変調速度を140ギガボーまで高速化することで、多値レベルを抑えた変調方式が利用可能となり、伝送による波形歪みや光増幅雑音に対して高い耐力を実現できるため、800ギガビット/秒信号の伝送距離をこれまでの2倍以上に拡大できます。


[画像2]https://user.pr-automation.jp/simg/2341/62607/682_450_202209022051256311ee3d5653b.png

図2 本成果の位置づけ

3.今後の展開
 NTTはIOWNの実現に向けて、End-Endでのフォトニクス技術をベースにした大容量、低遅延、かつ柔軟性、消費電力に優れた革新的なネットワークをめざして、最先端の光伝送技術をさらに拡張発展していきます。その成果を活かした大容量光伝送システムを含め、経済的かつ大容量・低消費電力なネットワークの実現を推進します。あわせて、国内外の機関とも連携して、成果のグローバル展開をめざしていきます。

補足:
本実験の一部は、総務省の委託研究「新たな社会インフラを担う革新的光ネットワーク技術の研究開発 課題T 5Tbps 級高速大容量・低消費電力光伝送技術の研究開発(JPMI00316)」により得られたデジタルコヒーレント光伝送技術を利用しています。

【用語解説】
※1 デジタルコヒーレント:
デジタルコヒーレント技術とは、デジタル信号処理とコヒーレント受信と組み合わせた伝送方式です。コヒーレント受信とは、受信側に配置した光源と、受信した光信号を干渉させることにより、光の振幅と位相を受信することが可能な技術です。偏波多重や位相変調などの変調方式により周波数利用効率を向上させるとともに、デジタル信号処理を用いた高精度な光信号の補償と、コヒーレント受信により、大幅な受信感度向上を実現します。

※2 IOWN:
「NTT Technology Report for Smart World:What’s IOWN?」の発表について
http://www.ntt.co.jp/news2019/1905/190509b.html

※3 最先端の符号化変調技術:
光信号のシンボル出現確率分布を制御する変調方式です。

※4 前方誤り訂正技術:
情報ビット伝送において、伝送中の雑音付加や信号歪みによって生じたビット誤りを、送信側にてあらかじめ冗長ビットを付与することで、受信側で誤りビットを検出し、訂正する技術。

※5 フレキシブル符号化変調:
光デバイスの帯域特性や、実現したい伝送距離に合わせて、シンボルあたり情報量と変調速度を柔軟に選択できます。

※6 CMOS:
Complementary Metal-Oxide-Semiconductor

※7 偏波多重64QAM:
QAM(Quadrature Amplitude Modulation)とは、信号光の振幅と位相の両方に情報を乗せる変調方式で、64QAMは一度に6ビット分の情報を送ることができます。この変調方式を、光信号の持つ2つの独立な偏波光信号の各々に対して適用することにより、偏波多重光信号として伝送容量をさらに2倍拡大することが可能となります。


このページの先頭へ戻る