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コロナ禍が日本のてんかん診療に与える影響を定量化

(Digital PR Platform) 2022年07月12日(火)10時00分配信 Digital PR Platform

 横浜市立大学大学院医学研究科 脳神経外科学教室 池谷直樹助教およびWayne State University 黒田直生人研究員らの研究グループ(Japan Young Epilepsy Section:YES-Japan/日本若手てんかん従事者部門)は、国内24ヶ所のてんかん*1医療施設と協力して、コロナ禍が日本のてんかん医療に与えた影響について全国規模の調査を行いました。
 本研究は、コロナ禍およびそれに基づく非常事態宣言の影響により、遠隔てんかん診療件数が大幅に増加したことを明らかにしました。また一方で、てんかん外来件数、てんかんによる入院件数、脳波モニタリング検査*2件数、てんかん手術件数に関しては減少したことが明らかとなりました。(図1)
 この研究により、新型コロナウイルス感染症陽性者の増加や将来において発生するかもしれない別の危機において、感染拡大や政策が日本のてんかん医療にどのような影響を及ぼすかを予測するために重要なエビデンスを提供することが可能となりました。
 本研究成果は、Epilepsia Open誌に掲載されました。(2022年5月28日オンライン掲載)

研究成果のポイント


2020年の1年を通して、外来脳波検査が10.7%減少し、遠隔てんかん診療が26倍増加
新型コロナウイルス感染症陽性者が1000人ずつ増加するのに比例して、その都道府県のてんかん診療の入院および脳波モニタリング検査は両者ともに約3.8%ずつ減少していた
非常事態宣言下では、遠隔てんかん診療が129倍となり、その他のてんかん診療は減少していた(てんかん外来件数は12%、てんかんによる入院患者数は35%、脳波モニタリング検査は25%、てんかん手術は50%減少)



[画像1]https://user.pr-automation.jp/simg/1706/60748/700_590_2022071110583462cb83ca8e326.jpg


図1:日本のてんかん診療の24か月の推移(青: 2019年、橙: 2020年、赤: 非常事態宣言下)

研究背景
 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックが医療全体に与えた影響などに関する研究が多く発表されていますが、コロナ禍およびそれに基づく政策が日本のてんかん診療に及ぼした影響を定量化した全国的な調査は今までありませんでした。本研究は、日本全国のてんかん診療に与えた影響を多施設共同で調査した後ろ向きコホート研究となります。

研究内容
 本研究では、日本全国24施設の2019年1月から2020年12月の連続24か月における、てんかん診療件数を調査し、以下の6項目がどの程度てんかん診療に影響を与えたのかについて統計解析を実施しました。


施設の特性(病院、クリニック)
施設所在地(都道府県)の人口
施設におけるてんかん専門医の人数
2020年(コロナ禍であること、2019年との比較)
各都道府県での新型コロナウイルス感染症陽性者数
非常事態宣言

その結果として、以下の代表的な結果が判明し、我が国のてんかん医療に有意に影響を与えることが示されました。
・コロナ前と後では、外来脳波件数が10.7%減少し、遠隔てんかん診療が26倍増加
・新型コロナウイルス感染症陽性者数が1000人ずつ増加するのに比例して、脳波モニタリング件数と入院患者数が約3.8%ずつ減少
・緊急事態宣言下では、遠隔てんかん診療がコロナ前と比較すると、129倍であり、てんかん外来患者数(12%)・ 入院患者数(35%)・脳波モニタリング数(25%)・てんかん手術件数(50%)が減少となった

今後の展開
 本研究成果は、今後の新型コロナウイルス感染者増加や将来の他の危機的状況において、政策が日本のてんかん診療において、どのような影響を及ぼすかを予測するための重要な基礎データといえます。

論文情報
タイトル:Impact of COVID-19 pandemic on epilepsy care in Japan: A national-level multicenter retrospective cohort study.
著者: Kuroda N, Kubota T, Horinouchi T, Ikegaya N, Kitazawa Y, Kodama S, Kuramochi I, Matsubara T, Nagino N, Neshige S, Soga T, Takayama Y, Sone D; IMPACT-J EPILEPSY (In-depth Multicenter analysis during Pandemic of Covid19 Throughout Japan for Epilepsy practice) study group, Kanemoto K, Ikeda A, Terada K, Goji H, Ohara S, Hagiwara K, Kamada T, Iida K, Ishikawa N, Shiraishi H, Iwata O, Sugano H, Iimura Y, Higashi T, Hosoyama H, Hanaya R, Shimotake A, Kikuchi T, Yoshida T, Shigeto H, Yokoyama J, Mukaino T, Kato M, Sekimoto M, Mizobuchi M, Aburakawa Y, Iwasaki M, Nakagawa E, Iwata T, Tokumoto K, Nishida T, Takahashi Y, Kikuchi K, Matsuura R, Hamano SI, Fujimoto A, Enoki H, Tomoto K, Watanabe M, Takubo Y, Fukuchi T, Nakamoto H, Kubota Y, Kunii N, Shirota Y, Ishikawa E, Nakasato N, Maehara T, Inaji M, Takagi S, Enokizono T, Masuda Y, Hayashi T.
掲載雑誌:Epilepsia Open.
DOI:10.1002/epi4.12616.

用語説明
*1 てんかん:
脳の神経細胞の異常な活動によって引き起こされる一過性の症状:てんかん発作を主症状とする慢性脳疾患。

*2 脳波モニタリング検査:
脳神経細胞の異常なてんかん性活動を、頭皮につけた電極によって捉えて記録する脳波検査を24時間以上連続して施行したもの。てんかんの高度な診断、治療の評価等に有用である。




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本件に関するお問合わせ先
横浜市立大学 広報課
E-mail:koho@yokohama-cu.ac.jp

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