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【長浜バイオ大学】「ヘビの遺伝子がカエルに飛び移る? -- 寄生虫が仲介する遺伝子水平伝播のパンデミック -- 」英国学術誌「Molecular Biology and Evolution」(電子版)に掲載

(Digital PR Platform) 2022年04月12日(火)14時05分配信 Digital PR Platform



長浜バイオ大学(滋賀県長浜市、蔡晃植学長)の倉林敦准教授をはじめとした国内外15の研究機関から成るグループが、ヘビからカエルに遺伝子(BovBと呼ばれるレトロトランスポゾン:注1)が水平伝播していることを発見した。世界の全ての大陸から収集した膨大なヘビ・カエルサンプルを用い研究を行ったところ、水平伝播の発生頻度は地域ごとに異なっており、特にマダガスカルではパンデミックと言えるほど高い頻度で生じていることが明らかになった。
本研究成果は2022年4月12日(日本時間)に「Molecular Biology and Evolution」電子版にて公開された。




【本研究のポイント】
●ヘビの遺伝子がカエルに飛び移っていること(遺伝子の水平伝播)を発見した。
● 高等な動物間での遺伝子の水平伝播はとても珍しいと思われているが、ヘビからカエルへの水平伝播は、1回だけではなく世界中で何度も起きており、特にマダガスカルでは水平伝播のパンデミックが起きていることが明らかになった。
●人で吸血していたヒルがカエルの伝播因子を持っており、ヘビからカエルだけでなく、多くの動物の間で遺伝子の移動が起きている可能性が示された。
●ヘビからカエルへの水平伝播は寄生虫によって仲介されている可能性が高く、特にマダガスカルには伝播因子を持った寄生虫が多く生息することがわかった。また複数のカエル系統についてアフリカからこの地に移住した後に、水平伝播が発生したと断定できる例を発見した。
●高等動物の間では遺伝子水平伝播の発生様式はよく分かっていなかったが、本研究によって、脊椎動物間の遺伝子水平伝播はマラリアなどの風土病の感染とよく似た機構で生じるという全く新しい視点が提示された。

【研究の成果】
 世界各地からヘビとカエル(各20科106種と28科149種)を収集し、BovBの塩基配列をもとに分子系統解析(注2)を行うと、少なくとも42回の水平伝播が生じていることが示された。また、水平伝播が起こった地域を推定すると、地域ごとに発生回数が大きく異なることが分かった。特にマダガスカルでは過去5000万年の間に14回以上発生したと推定され、マダガスカルはBovBの脊椎動物間水平伝播のホットスポットであることが示された。
 続いて、水平伝播の経路を調査するため、ヘビ-カエル間を行き来することのできる寄生虫を水平伝播の仲介者と仮定し、PCR法(注3)による調査を行ったところ、BovBをもったまま宿主間を移動している有力な仲介者候補が発見された。さらに、BovBをもつ寄生虫の割合がマダガスカルで高いことがわかった。これらの結果は、脊椎動物間の水平伝播の生じやすさに地域性があることを世界で初めて明らかにするものであり、さらに、この地域差がBovBをもつ寄生虫の割合に依存する可能性を示唆するものだった。
 マダガスカルには、島の成立後にアフリカ大陸(水平伝播頻度は非常に低い)から海を渡って移住してきたカエルが2系統分布している。興味深いことに、マダガスカルに移住したこれらのカエルからはBovBが検出されたのに対し、アフリカに生息する近縁種はBovB陰性だった。また、ここで推定された水平伝播の発生年代は、先行研究で知られているマダガスカルへの移住年代と符号し、カエルの移住後に水平伝播が生じたことが強く示唆された。この現象は、マラリア原虫をもつ蚊に汚染された地域に移住することで人間がマラリアに感染する構図とよく似ており、本研究によって脊椎動物間の水平伝播が風土病の感染と類似した機構で生じうるという、全く新しい視点が提示された。

【今後の展開】
 以上の解析中には、マダガスカルで人間に吸血していたヒルからもBovBが検出され、水平伝播がヘビ-カエル以外の脊椎動物間でも発生している可能性が示唆された。本地域で水平伝播が及んだ動物群の範囲を明らかにするためにも、今後はより広い脊椎動物分類群(哺乳類・鳥類・魚類)を対象とした調査の実施を予定している。また、水平伝播が生じるためには外来遺伝子が宿主の生殖細胞系列に組み込まれる必要があるが、そのためには細胞内に侵入可能なウイルスや細菌などの最終媒介者が存在しており、寄生虫はそれらの運搬者として働いている可能性が考えられる。この脊椎動物間の水平伝播の詳細なメカニズムについても、今後の研究で検証していく予定である。

【用語説明】
(注1)レトロトランスポゾン:生物のゲノム上を転移することのできるDNA配列。コピー&ペーストの形式で転移し、ゲノム中でコピー数を増殖する。
(注2)分子系統解析:DNAの塩基配列やアミノ酸配列の違いをもとに系統樹を構築し、進化の道筋を推定する手法。本研究では、近縁分類群(ヘビ)のBovBのまとまりの中から、本来遠縁の生物(カエル)のBovBが分岐する点を水平伝播の発生ポイントと推定した。
(注3)PCR法:ポリメラーゼ連鎖反応。遺伝情報の特定の領域を増幅する方法。

【関連リンク】
ヘビの遺伝子がカエルに飛び移る?−寄生虫が仲介する遺伝子水平伝播のパンデミック−
 https://www.nagahama-i-bio.ac.jp/?p=40743


▼本件に関する問い合わせ先
アドミッション・オフィス 広報担当
住所:滋賀県長浜市田村町1266番地
TEL:0749-64-8100(代)
FAX:0749-64-8140
メール:kouhou@nagahama-i-bio.ac.jp


【リリース発信元】 大学プレスセンター https://www.u-presscenter.jp/

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