プレスリリース
公益財団法人日本財団ボランティアセンターでは、 2020年以降のコロナ禍での大学生活を、大学生自身はどのように捉えているかについてのアンケート調査を実施しました。その結果、家庭や大学以外の居場所、いわゆる「サードプレイス」を持っている学生ほど、今の生活全体への満足度や将来への期待、自分自身への満足度が高いということが明らかになりました。
■コロナ禍での心理状態(現在の満足度や不安感など)
□学年による比較
心理状態について、以下の質問をしました。
・去年と比べて、今の生活全体(や現状)にどのくらい満足していますか?
・今の自分自身に満足していますか?
・生きづらいと感じることはどのくらいの頻度でありますか?
調査を行う前は、コロナ禍以前の大学生活も経験している大学3〜4年生の方が、コロナ禍である2020年、2021年に大学に入学した大学1〜2年生よりも生活や自分自身の満足度が高いのではないかと予測をしていました。
しかし、結果をみると、上記設問の回答に学年間に大きな差はなく、全ての学年で同程度のストレスを抱えているということが明らかになりました。
具体的には、どの学年の学生も、前年と比較した満足度は、4割前後の人が80%以上満足しており、今の自分自身についても、3〜4割の人が80%以上の満足度があると回答していました。生きづらさを感じる頻度についても、学年による大きな違いはみられませんでした。
生活への満足度については、キャンパスに行く頻度や、コロナ禍でもできていることがどれだけあるか、などが関係しているという結果でした。
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□全体の傾向
全体の傾向を見ると、生きづらさを感じる頻度が少ないほど、自分自身や現在の生活に満足をしており、将来への期待が大きいことがわかりました。一方で、その裏返しとも考えられる将来への不安も大きいことも見られました。つまり、将来に対して期待のみ、不安のみを抱くといった単一的な心理状態ではなく、相反する心理を同時に抱いている状態ということが明らかとなりました。
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■サードプレイス(第三の居場所)について
大学生がコロナ禍を乗り越える手段として、「居場所」が重要となってくる可能性があります。一般的には「サードプレイス(Third Place)」と呼ばれる、家や学校、日常的に通う職場以外の場所で、肩書にとらわれず人と交流したり、一人で過ごしたりすることによって、精神的安定が得られるとされています。
(参考:Oldenburg, R. (1999). The great good place: Cafes, coffee shops, bookstores, bars, hair salons, and other hangouts at the heart of a community. Da Capo Press.)
今回の調査の結果から、コロナ禍の大学生にとっても同じ効果があることが推測されました。
調査では、家庭や大学といった固定的な場所以外の活動場所や居場所について当てはまるもの全てを選ぶよう問いました。その結果、ゼミやサークル活動、アルバイトといった活動場所や居場所の数が多い人ほど、今の生活全体への満足度や将来への期待、自分自身への満足度が高いことがわかりました。
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大学生にとって、複数の居場所を作ること、つまり「サードプレイス」があることが、コロナ禍を前向きに歩む手段の一つであると推測されます。一方で、家庭や大学以外の居場所の数は全体平均で1.4個であること、約3割の人が1つも居場所がないと回答しました。つまり、複数の居場所をもつ大学生は多くないということもわかりました。
コロナ禍で思うような大学生活を送れないということは、「居場所」を見つけるチャンスを奪うことにもなるかもしれません。一方で、最近は大学生を対象としたオンラインでのイベントやセミナーも多く開催されています。
これまで自然に存在していた大学という場所に加え、「サードプレイス」としての学外でのボランティア活動やインターンシップなど、自分の力で居場所を見つけることが難しい中、外部からも多方面に渡る機会を提供することがより求められていると思われます。
■調査概要
調査は、当センターの学生インターンが実施・分析しました。
・調査期間:2021年12月15日〜23日
2021年12月は、新規の感染者数などが非常に低い状態が2か月ほど続いており、下旬に入るとオミクロン株の広がりが少しずつ見えてきたという時期でした。
・調査方法:インターネット調査
・有効回答数:大学生479名
■調査結果へのコメント
山縣芽生(大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程2年。本調査の企画実施における協力者)
コロナ禍が大学生の心理に特別に大きなストレスを与えているわけではないことは、他の調査でも示されてきました。その中でも今回の調査では、大学生たちが今の環境に上手く適応しながら前を向こうとしている姿が垣間見えるようでした。
また、家族や友人以外のコミュニティ(サードプレイス)の多さと心理状態のポジティブな関連が見られたことは、現在あるいは将来、災害が発生した際に大学生の心理的健康を支える外部支援制度を構築するきっかけにもなると期待できます。
今回の調査を中心的に行った学生インターンは、当事者だからこそ持てる率直な視点と、冷静に物事を捉えるために多角的な立場に立って調査に取り組みました。暗黒期を生きる大学生でもある彼らの調査結果が、コロナ禍にいる大学生や将来起こりうる災害時の大学生の力となれば幸いです。
*調査を実施した日本財団ボランティアセンター学生インターン
大野さくら(中央大学文学部2年)
500人程のデータを分析する中で、私が一番印象に残っていることは、将来への不安の強さが浮かび上がってきたことです。本調査の企画にあたっての学生インターンのディスカッションの中で「暗黒期」というキーワードが出てきて、全員でその言葉に共感していたのは、これが背景にあったかもしれないと感じました。
また、アンケートを作成する時に将来の不安だけではなく、期待についても聞いたら面白いのではないかと言ってくれた山縣様のおかげで、どちらも感じている人がいるという興味深い結果を得ることができました。
私は、「自分の居場所があること」にとても助けられていることが多かったので、それを裏付けるような結果が出て、居場所を作るような活動に意味はやはりあったのだと改めて感じました。
遠藤了(東京外国語大学国際社会学部2年)
アンケートフォームが5ページにわたる大長編になってしまいましたが、お陰で貴重なデータを得ることができました。特に気になったのはコロナ禍の中で何かしらの希望を見出して行動に移している人が多かったことです。
私は分析する立場でしたが、皆様の言葉を見て、コロナ禍という特殊な状況と暗黒期との付き合い方を学ぶことができました。このアンケート調査に携わって、我々インターンが考えた「大学生の暗黒期」というテーマについて重要な知見が得られました。そして私自身成長することができました。
■公益財団法人日本財団ボランティアセンター(ボラセン) 概要
ボラセンは、2010年にNPO法人日本財団学生ボランティアセンターとして設立し、学生のボランティア活動を支援してきました。
2015年に一般財団法人へ、2017年に公益財団法人へ移行。そして2022年に「日本財団ボランティアセンター」へと名称変更し、学生だけではない幅広い世代を対象に、ボランティアに関する事業を実施しています。
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