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【東芝】少ないレアアース量でネオジムボンド磁石と同等磁力を持つサマリウム鉄系等方性ボンド磁石を開発

(Digital PR Platform) 2022年03月01日(火)18時59分配信 Digital PR Platform

令和4年3月1日


国立大学法人 東北大学大学院工学研究科
株式会社 東芝


少ないレアアース量でネオジムボンド磁石と同等磁力を持つ
サマリウム鉄系等方性ボンド磁石を開発


【発表のポイント】
●半分のレアアース使用量で等方性ネオジムボンド磁石と同等の磁力を達成
●余剰資源のサマリウムの有効活用によるモーターのサプライチェーン強靭化に貢献
●温度特性が良好でネオジムボンド磁石よりも高い耐熱性を実現

【概要】

 国立大学法人東北大学(所在地:宮城県仙台市、総長:大野 英男、以下「東北大学」)大学院工学研究科、株式会社東芝(本社:東京都港区、代表執行役社長 CEO:綱川 智、以下「東芝」)は、車載用等の小型モーター向けに、性能は現在と同等で、より継続的に生産を続けられ、さらに安価に生産できる可能性のある新しい等方性ボンド磁石を開発しました。磁石素材の主成分であるレアアースを、今後の需要の急騰によって長期間の調達が懸念されるネオジムから、余剰が見込まれるサマリウムに変えました。さらに素材に含まれるレアアースの含有量を約半分に減らしても同等の磁力を出せることを確認しました。本磁石を用いることで、現在の主流となっているネオジム磁石を使用した場合と同等のエネルギーロスの少ない高効率モーターの実現が見込め、カーボンニュートラル社会への貢献が期待できます。
 本磁石は、ネオジムを採掘する際に副産物として生まれ、余剰資源となっているサマリウムを使用しています。磁石には、ボンド磁石の他に、大型モーターに主に使用される焼結磁石がありますが、両磁石とも材料として高磁力を可能にするネオジムが圧倒的に多く使用されています。ネオジムもサマリウムもレアアースの一種ですが、副産物であるサマリウムを有効活用することで資源リスクを回避し、各種モーターのサプライチェーンの強靭化に貢献します。
 東北大学と東芝は、今後、磁石メーカーと連携して、量産化に向けた製造技術およびモーター製品への適用に向けた開発を進めていきます。
 なお、本技術は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術統合開発機構(本部:神奈川県川崎市、理事長:石塚 博昭、以下「NEDO」)の「部素材の代替・使用量削減に資する技術開発・実証事業」による成果です。東北大学と東芝は、本研究成果の詳細を、令和4年3月16日に日本金属学会春期講演大会で発表する予定です。

【開発の背景】
 日本における総消費電力の過半はモーターが占めており(*1)、モーターの高効率化による省エネの推進がカーボンニュートラル社会の実現に向けた最重要課題の一つとなっています。一般的にモーターの効率は、レアアースを使用した高い磁力の磁石を組み込むことにより向上します。レアアースを使用した磁石には、製造方法の異なる焼結磁石とボンド磁石があります。磁石粉末を高温度で焼き固めて成形する焼結磁石は、主に電動車の駆動モーターや風力発電機に適用され、磁石粉末を樹脂やゴムに混ぜて成形するボンド磁石は、主に車載モーターやハードディスク駆動装置(HDD)用スピンドルモーターなどの小型モーターに適用されています。どちらの磁石も、高磁力を可能にするネオジムが圧倒的に多く使用されており、電動車の駆動モーターや風力発電機の需要拡大によって、今後ますます、ネオジムの使用量は急増することが予測されています。レアアースは特定国からの輸入依存度が高く、脆弱なサプライチェーンと将来の需給ひっ迫による資源リスクが懸念されています。資源リスクの軽減に向け、レアアース使用量の削減、および、ネオジム偏重の現状を打破してレアアース資源をバランスよく使うことが望まれています。

【本技術の特長】
 そこで東北大学大学院工学研究科の杉本諭教授らと東芝の研究グループは、ネオジムを採掘する際の副産物で余剰資源となっているサマリウムに着目し、NEDOからの委託事業にてサマリウム鉄系合金の磁石化に取り組みました。添加元素の最適化や独自の熱処理技術によって、ネオジムを使用した従来の等方性ボンド磁石(ネオジムボンド磁石)と比較して、半分のレアアース使用量で磁力の強度を示す残留磁束密度(*2)がネオジムボンド磁石と同等のサマリウム鉄系等方性ボンド磁石を開発しました(図1、図2)。
 等方性ボンド磁石は、全方位に対して磁力が均一であり着磁方向が自由に選べること、形状自由度や寸法精度が高いこと、製造工程が簡略で生産性が高いことなど実用上の利点が多く、各種モーターに広く利用されています。今回開発した等方性ボンド磁石は、これらの利点を保持しながら、ネオジムボンド磁石と同等の磁力を実現しました。
 本磁石の製造においては、まず、サマリウムと鉄に適正な量のコバルト、ニオブ、ホウ素を加えた合金を溶解した後、急冷凝固させます。急冷凝固した合金に適切な熱処理を施すことにより、高鉄濃度な化合物結晶の境目にニオブとホウ素を濃縮させる技術を開発しました。従来のネオジム合金の中にレアアースのネオジムが13原子%(*3)含まれるのに対し、今回のサマリウム鉄系合金にはレアアースのサマリウムが約半分の6原子%しか含まれず、少ないレアアース使用量で磁石化することに成功しました。磁石が持つエネルギーを示す最大エネルギー積(*4)は、室温20℃で98kJ/m3と、ネオジムボンド磁石と同等の値を示します(図2)。また、残留磁束密度も室温20℃で0.82T(テスラ)とネオジムボンド磁石と同等です(図3)。さらに、1℃あたりの残留磁束密度の低下率は0.06%とネオジム磁石の約半分であり、ネオジムボンド磁石よりも高い耐熱性を持つことが示されました(図3)。
 本磁石は、ネオジムの使用量の増大に伴い余剰資源として増加することが予測されるサマリウムを用いたことに加え、従来のネオジム磁石の半分のレアアースの使用量で製造することが可能な磁石です。レアアース資源のバランスの良い消費と使用量削減により、資源リスクの低減と各種モーターのサプライチェーンの強靭化に貢献します。


[画像1]https://user.pr-automation.jp/simg/1398/56217/300_274_20220224211940621777dcbae4e.jpg
図1:開発したサマリウム鉄系等方性ボンド磁石


[画像2]https://user.pr-automation.jp/simg/1398/56217/300_296_20220224211940621777dcbf214.png
図2 : 開発したサマリウム鉄系等方性ボンド磁石の減磁曲線


[画像3]https://user.pr-automation.jp/simg/1398/56217/300_267_20220224211940621777dcb80c1.png

図3:等方性ボンド磁石における残留磁束密度の温度依存性比較


【今後の展望】
 東北大学と東芝は、今後、磁石メーカーと連携して、量産化を見据えて低コストで安定した生産を実現する製造技術の開発を進めるとともに、残留磁束密度や保磁力など磁石性能のさらなる向上を目指して研究開発を継続していきます。また、本磁石を各種モーター製品に適用していくためのモーター設計の最適化についても検討していく予定です。





(*1) 「次世代自動車向け高効率モーター用 磁性材料技術開発」 第3回中間評価 資料5 (令和元年8月21日)
https://www.nedo.go.jp/content/100897927.pdf
 
(*2) 磁石を飽和まで磁化させた後に、その外部磁界を減少させ、ゼロにしたとき、その磁石に残留する磁束密度のこと。
(*3) 磁石材料を構成する原子の組成比率のこと。
(*4) 磁束密度と磁界の積の最大値で永久磁石が持つ単位体積当たりの磁気エネルギーのこと。残留磁束密度とともに、永久磁石の磁気パワーの大きさを示す指標となる。






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