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シュローダー・インベストメント・マネジメント株式会社

Q&A:社債投資家が二酸化炭素排出を考慮する必要性について

(Digital PR Platform) 2021年12月16日(木)14時31分配信 Digital PR Platform

COP26がまだ記憶に新しい中、社債投資家にとって重要である「二酸化炭素排出」についてカギとなる疑問に対し回答します。


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サイーダ・エガーステッド
ヘッド・オブ・サステナブル・クレジット


気候変動の影響と、それにより将来的に生じる被害を軽減していく為には、世界は排出される二酸化炭素の量を削減する必要があります。そのために企業そして投資家は大きな役割を担っています。
企業はサプライチェーンやその事業をカーボンニュートラルに適応させることは可能ですが、大規模なインフラや科学技術を発展させるためには、投資や資金調達が必要となります。
投資家は、壮大な目標に向け大きな努力を払っている企業に対して、直接的に資金提供を出来る立場にあり、エンゲージメントと知識の共有を通じて、これら企業の成長を促すことが可能です。
温室効果ガス排出量のスコープ1、2、および3のフレームワークは、排出量削減の進捗状況を効果的に計測するために、企業に対して目標設定や排出量のモニタリングを促す際に有用となります。
これは、地球の気温上昇を抑制する為に、環境要因や社会を考慮しつつ、最善の意思決定を模索している投資家にとっても有用です。


二酸化炭素排二酸化炭素排出のカテゴリーの違いは?そしてこのフレームワークは有用なのか?
企業は、そのバリューチェーンも含め、その活動において日々利益追求のための意思決定を行っていますが、二酸化炭素排出削減目標の有無にかかわらず、すべてのステップにおいて、二酸化炭素の排出をもたらしています。

スコープ1は、企業が管理、または所有する事業や資源における全ての直接的な二酸化炭素の排出が対象となり、企業が使用するガスボイラーや、輸送機関による排出等が含まれます。鉱業、鉄鋼会社、製造業者にとって、このスコープ1は溶鉱炉や工業過程における二酸化炭素排出を考慮すると不可欠な部分です。
スコープ2は、企業が購入し使用した電力による間接的な二酸化炭素の排出が対象となります。主に石炭によるエネルギー生成を行っている国で活動する企業は、このスコープ2において高い二酸化炭素排出がみられます。代替エネルギー源への転換がスコープ2における排出量削減の鍵となります。
スコープ3は、企業が所有、もしくは管理をしていないその他のすべての間接的な排出が対象となります。具体的には、材料調達から最終製品の販売まで、企業のすべてのバリューチェーンにおいて排出される二酸化炭素が対象です。
化石燃料を消費するトラックや自動車を製造する会社、融資の大部分を化石燃料関連企業としている銀行、そして、石油・ガス掘削・生産者にとって、スコープ3における排出量が最大となります。その企業が所有または運営していない車両での出張による排出や、販売された製品の廃棄物処理で生じる排出もこのスコープ3に分類されますが、このカテゴリーにおける排出は、その他のスコープと重なる部分があり、二重計上が生じるため、報告されるデータは限定的です。


なぜ特にスコープ1と2を重要視するのか?
クレジット投資家として、当社はグローバルなカーボンニュートラル目標に可能な限り対応し、貢献し、そして短期的(気候変動の世界では長くて5年程度)な結果を見たいと考えています。これは、直接制御される排出量について、企業に説明責任を負わせることから始まります。つまり、そこでは企業は、使用エネルギーの効率化を通じ、または新しいテクノロジーの導入、または鉄鋼や素材セクターなど削減が難しい業種については炭素のリサイクルを通じ直接的に二酸化炭素排出量の削減が可能となっています。これがスコープ1です。

また、間接的な排出に焦点を当てることも重要であり、ほとんどの企業がすでに電気、熱、冷却等に関する間接排出の測定をし、報告を行っています。二酸化炭素の削減をリードする企業は、いくつかのマイルストーンを含む明確な目標を設定しています。スコープ2は、企業の業種や拠点を置く国によってその重要性が高まります。
当社は、企業に対してスコープ2の大幅な削減を働きかけていきたいと考えています。これにより低二酸化炭素排出エネルギーの生産が増加し、その価格が低下し、保存可能となり、その結果、世界中で利用の拡大が期待されます。太陽光、風力、バイオ燃料などの再生可能エネルギーは、依然世界で使用されているエネルギーの50%未満にとどまっています。
世界が炭素強度の低いエネルギー源に切り替えなければ、2050年までに地球温暖化を1.5度に抑えるという目標はほど遠いものとなり、2030年の中間目標を達成することもできません。
石炭、石油、ガスなどの化石燃料から生成される製品やエネルギーを除外することは、投資における排出強度を削減するための理にかなった方法です。なぜならば、これら化石燃料は、スコープ3において排出量が最も多く、世界の主要な排出源となっているためです。同時に、2030年までに目に見える形で排出強度の低下を実施するためには、業種内のメタンガスの排出と漏出を削減するための新しい技術を使用する必要があります。このため、当社はこの業種内の企業に対し積極的にエンゲージメントを実施していきます。

スコープ3における排出量は、一貫して測定されているわけではなく、当然のことながら一貫性のある報告が行われているわけでもありません。金融を含む業種全体において、スコープ3に関する報告及び削減目標設定を増やすため、当社はサプライヤーや製品設計チームとの緊密な協力を推奨しています。また、自動車メーカーに対してスコープ3における炭素強度の低下を要求し、電力会社に対して低炭素強度電力の売買を要求する環境規制の整備をサポートしています。


なぜ二酸化炭素排出量削減が企業にとって重要なのか?
二酸化炭素排出量の削減やカーボンニュートラルに焦点を当てている企業は、より持続可能な経済への移行がしやすくなり、その移行を実施するために必要な投資は収益機会となります。
カーボンニュートラルを目指す企業および炭素強度の低い企業は、座礁資産(償却する必要のある化石燃料等の保有資産)などのリスクが比較的低く、また、異常気象から生じる物理的リスクに対処する計画も立てる傾向にあります。
炭素排出量の削減及び回避をするその他の理由については、炭素税によるコストの増加、発行する債券やバンクローンの利息などの資金調達コストの増加、環境に有害な製品に対する消費者の需要の減少、風評リスクおよび法的リスクなどが挙げられます。


二酸化炭素排出の削減に取り組む企業に対して何が障害となるのか?
資源やインフラの欠如もそうですが、さらに問題となるのは、誤った、もしくは短期的な優先順位付けや動機、そして特にテクノロジーに関する知識や認識の欠如です。これらはすべて、企業の活動を阻む可能性があります。
投資家として、私たちはこれら企業の活動を妨げているものを明らかにする責任があります。2050年のネットゼロという目標を掲げている大企業を目にすることはありますが、短期および中期の二酸化炭素強度削減目標は策定していません。このアプローチは、短期的な対応を行わず、目標を先延ばしにするリスクを過小評価しています。
そして、実際に排出量が少ない中小企業もありますが、社内のESGに対する知識が不足していることで、目標設定やレポートなどがないため、投資家の目に入らず、投資対象から外れてしまう可能性があります。


2025年までのカーボンニュートラル、または今後10年間での二酸化炭素排出量の80%削減目標は野心的に見えるが企業はどのようにこれを達成できるのか?主にエネルギー源の切り替えによって達成するのか?
2030年までにスコープ1およびスコープ2の二酸化炭素強度レベルを80%削減することは、素晴らしいことです。優れた文化を有し、すべての利害関係者に対するコミットメントを持つ最も意欲的な企業です。興味深いことに、これらの企業の多くは、スコープ3の削減に対しても意欲的です。
当然、当社はそのような企業に投資したいと考えています。フランスの自動車部品メーカーであるフォルシア(Faurecia)はベスト・イン・クラス(業界内における最高クラス)の例です。同社は、基準年となる2019年から2025年におけるスコープ1および2の温室効果ガス(GHG)の絶対排出量を80%削減、次に2030年までにスコープ3におけるGHGの絶対排出量を46%削減、そして2050年までには100%削減することを目標に掲げています。

一部のカーボンニュートラル企業は、カーボン効率の高い製品を製造しており、再生可能エネルギーの使用に加えて、カーボンニュートラルを達成するために認定されたカーボン・クレジットを使用しています。トルコの家電メーカーであるアルチェリク(Arcelik)は、この戦略の実行に成功しました。
このアプローチは、SBTイニシアチブ(Science Based Targets Initiative―科学的根拠に基づく目標、排出削減を可能にするために、企業部門と協力するパートナーシップ)に沿ったものです。同社のような企業は、低炭素製品の販売に重点を置いており、サプライヤーにも働きかけています。


二酸化炭素の排出削減に関して企業に対しどのようなエンゲージメントを行っているか?また、これまでのエンゲージメントでの焦点は何だったか?
当社は、業種の境界線を越えてエンゲージメントを実施しようとしています。
2020年、当社の金融セクターアナリストは、サステナビリティ投資チームとともに、世界中の銀行に対して、金融に係る排出量(資金供給をしている実体経済の活動から生じる排出量)の計算、公開、目標の設定を依頼しました。これらの結果を元に、今後のエンゲージメントの準備を行っています。
公益事業においては、石炭使用を段階的に廃止し、再生可能エネルギーによる発電に対する設備投資を増額し、絶対強度を下げながら、水資源をより効率的に使用することを働きかけています。
当社のクレジットチームは、排出量の低い企業に対して目標を設定するよう促すことがありますが、そうすることでこれらの企業は投資対象となります。あるいは、企業に対して、二酸化炭素排出量の数値化を促しています。太陽光や風力エネルギー発電企業に対しては、他の企業における排出回避量を報告することを促しています。


国の炭素削減目標に対して欧州と英国の企業はどの様な位置にあるのか?
環境に配慮した政府の政策や二酸化炭素に対する意識の高い消費者が増えるほど、各企業の二酸化炭素の削減に対する貢献度も高くなると考えます。二酸化炭素排出量(その企業自体またはバリューチェーン内)を削減するには、財務上および経営上の優先順位付け、ならびに一貫した報告、技術、および科学が必要です。
このことに対しては、政府が支援し、主導する必要があります。G20は、地球温暖化を1.5度に制限し、2021年末までに新規の石炭火力に対する公的資金調達を終了するという協定を結んでいます。そして欧州及び英国政府は、石炭の使用を段階的に完全廃止するという公約を得るよう取り組んでいます。

重要なことに、欧州委員会(EC)は、欧州共同体(EU)の2030年の気候目標の達成に向けての気候変動政策パッケージ「Fit for 55」を採択しました。この政策パッケージにより、カーボン・プライスに影響されるGHG排出量の割合が、現在の約2割程度から、2030年までに6割超に引き上げられます。
これにより、カーボン・クレジットからの収益が数倍になり、石炭業界などからの労働者の移行が促され、これら潮流がさらに広く一般に受け入れられることになると考えます。

EUは、2026年末までに、総額2,500億ユーロの次世代グリーンボンドを発行します。この資金は気候変動に対する耐性の強化を目的としたインフラ整備に充てられます。これは、エネルギーの効率的利用への移行や気候変動への適応というEUの持続的可能性ビジョンに沿ったものです。
この変化に対応出来るよう活動している企業は、汚染を管理する為の産廃物のリサイクルなど、早期に規制が整備されることを望んでいます。短・中期的にはサステナビリティに関する報告が公開され、企業は投資家に対して二酸化炭素削減計画やそのマイルストーンを公表するなどの必要が生じます。

大規模な汚染排出企業は2050年という先の目標だけでなく、短期的な目標が必要となる一方で、一部の中小企業については、まだその準備が整っておらず、技術支援や、再生可能エネルギー源の確保といった支援を必要としています。
当社とその他の投資家は、脱炭素化と資源利用効率の目標を強化するために英国企業に対しエンゲージメントを行っています。COP26における英国のリーダーシップにより、行動の緊急性がさらに高まると予想します。


国の排出削減目標と企業の目標との間に相関関係があると考えるか?
目標、手段、人、資源はすべて、企業と政府の間だけでなく、コミュニティの協力を必要とします。企業にとっては、国内外の多様なサプライヤーに対し目標を設定し、技術的および必要に応じて財政的に支援することにより、二酸化炭素排出削減を促すことが重要です。
国レベルでのカーボン・プライシング(炭素価格付―炭素税や排出量取引などにより炭素に価格を付けること)の導入は、企業に対し、研究開発の設備投資と炭素効率化優先の強力なメッセージとなる可能性があります。
ベストインクラスの企業は、環境フットプリント(人間活動が環境に与える負荷を、資源の再生産および廃棄物の浄化に必要な面積として示した数値)の削減に向けた国の取り組みを主導する一方で、政策支援の恩恵を受けることもできます。


将来のカーボンニュートラルな経済成長に貢献する社債への投資例はあるか?
フィンランドの不動産会社シティコン(Citycon)が良い例です。同社のカーボンニュートラル計画は、SBTイニシアチブによって検証されています。同社は、革新的な技術を通じて、自社のエネルギー消費を削減し、再生可能エネルギーの使用量を増加させています。新しい試みの一つとして、同社は2022年、地熱を動力源とした冷暖房エネルギープラントを開設します。
オランダの通信事業者KPNは、データ通信業界で急成長した企業です。2014年を基準年として2030年までにスコープ3の排出量を30%削減するという目標を公表しています。2015年より100%グリーン電力を利用して、エネルギー消費の削減を行い、クライメイト・ニュートラル(気候中立)に則った活動を行っています。
金融セクターでは、アメリカン・エクスプレス(American Express)は2008年からカーボンニュートラルを実現しており、現在はサプライヤーと協力し2035年までにカーボン・ゼロ(二酸化炭素などのGHGの排出量を実質ゼロにすること)に取り組んでいます。
ボディショップ(The Body Shop)やエイボン(Avon)を傘下に持つナチュラ(Natura)は、2021年第4四半期に、スコープ1、2、3の科学的目標設定を計画しています。同社は、「天然由来の製品」から「地域に対するエンゲージメント」という包括的な気候・自然戦略を策定しています。



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