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学校法人東洋大学

自らSDGsを学び、伝えることで、「深い学び」に導ける教員の養成を目指す<東洋大学SDGs NewsLetter Vol.34>

(Digital PR Platform) 2024年12月18日(水)12時00分配信 Digital PR Platform

2017年改定の学習指導要領で掲げられた「主体的・対話的で深い学び」。その実践を担う教員養成の現場では、教材としてSDGs教育やドキュメンタリーなど物語性のある作品を活用するアプローチに注目が集まっています。SDGs教育を模擬授業で取り扱う文学部教育学科の下田好行教授に、日本の教育の現状や課題についてお聞きしました。

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映像作品を用いたSDGs教育を、教員養成の現場に導入







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──学習指導要領に示されている「深い学び」について教えてください。

「深い学び」は2017年の学習指導要領改訂で新たに盛り込まれた、単元や課題の本質を深く捉え、自ら問いを立て、解決方法を考える過程で題材への理解を深める学びです。問いを立てるには、題材に対して当事者意識を持って向き合う姿勢が欠かせません。一方で「問いを立てる」という営みを、今の大学生は小・中・高の学びであまり経験していません。大学で卒業論文を執筆する際に初めて行ったというケースも珍しくないでしょう。「深い学び」に導く授業を実践するには、まずは教員志望の大学生自身がそれを経験する必要があります。私は専門分野である教育方法論の知見を生かし、教職課程の授業を担当していますが、「深い学び」を経験する方法論の一例として、ドキュメンタリーや映画の活用が挙げられます。物語性のある映像作品や書籍に触れると、作中の人物が経験した出来事を視聴者も追体験することができます。感情移入しながら自身の内面を深く掘り下げる過程を通し、題材を自分事として捉えられるようになるのです。

──「深い学び」に導く教員を養成するために、どのような取り組みを行っているのでしょうか。

私の担当講義では、「SDGsに関連したテーマ」で学生に1人あたり30分の模擬授業を行っています。題材設定の理由は二つあります。一つ目は大学生がリアリティーを持って取り組める点です。教員にとって重要な「目の前にいる人のリアクションを感じ、自分の言葉や指導法を軌道修正しながら授業を続ける」姿勢を養うため、先生役・生徒役の大学生が共に真摯に向き合えるSDGsを取り入れています。

二つ目は、教員志望者にとって今後SDGsが必須になるという信念です。SDGsと関連する現代的・人類的課題は重要なトピックとして学習指導要領で位置付けられており、教育現場では社会科や理科、総合的な学習の時間の授業で扱うように推奨されています。しかし、現実においては依然として戦争や人権侵害といった諸問題が絶えません。教職課程ではSDGs教育の方法論も教えますが、知識や理屈を通してではなく、学生がSDGsの重要性そのものを切実に実感できるように、模擬授業のスタイルを構築しました。題材として調べ、実際に授業で用いるという主体的な行為を通して、思い入れや理解が一層深まると考えています。

映像メディアを活用したSDGs教育による「深い学び」の実践

──模擬授業においても映像作品を活用されるのでしょうか。

学生には、映画やアニメ、絵本など物語性のある作品を取り入れるように推奨しています。特にドキュメンタリーは強い説得力を有しているため非常に効果的です。学生は種々の題材を扱いながら自ら問いを立て、資料を収集し、授業を設計してSDGsを通じた「深い学び」を実践します。たとえば、ある学生は「命とは何か-出生前診断と命の選択-」という問いを立て、模擬授業で見せる映像作品に『コウノドリ』第10話(TBS)を選びました。「あなたの授かった胎児が出生前診断で『ダウン症を持っている』と判断された場合、どう考え、行動するか」。学生たちは自身と異なる意見にも耳を傾けながら、積極的に議論しました。映像作品を教材として使うことで、学生が「実際に起こり得る話」としてエピソードを受け止め、当事者意識をもって深く問いに向き合えたようです。

このように、SDGs教育や映像メディアの活用などさまざまなアプローチから「深い学び」への導き方について学生自身が実践から学んでいます。教材選定において、教員の間で根強い「教科書を中心に授業をしなければならない」という既成観念から脱却し、デジタルコンテンツを発掘して、授業に積極的に取り入れてもらいたいです。また、私自身、近年は子ども家庭庁のこども家庭審議会委員として「こどもたちに読んでほしい本」の選定に携わっています。SDGs関連はもちろん、「深い学び」につながる芸術性の高い書籍も選定しているので、ぜひ教材として活用してほしいですね。



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──今後の研究テーマについてお聞かせください。

現在、世界ではSDGsに含まれる人権遵守の意識と、戦争などで他国・地域を侵略しようとする意識が相克しています。これまでの歴史では、人間は自己の利益や価値を優先して、結果的に他者に危害・損害を加え、人権を踏みにじるという悲劇を繰り返してきました。一方でそうした過ちを犯さないように是正する機運や、少しずつ精神的な進化を遂げてきた側面もあります。人間の内面における光と影が、歴史を通してどのように変化してきたのかを、今後の研究テーマとして深掘りしたいと考えています。











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下田 好行(しもだ よしゆき)
東洋大学文学部教育学科教授/修士(教育)
専門分野:教科教育学/初等中等教育学/学習指導法/カリキュラム・教材開発
研究キーワード:ホリスティック教育/幼児教育学/道徳の指導法/特別活動の指導法/総合的な学習の時間の指導法/カリキュラム・教材開発論/教育方法学・学習指導学
著書・論文等:自己の直観を自証する授業・教材のあり方−垣内松三の自証体系とその授業実践を通して−[教材学研究 第25巻(日本教材学会)]等


本件に関するお問合わせ先
東洋大学総務部広報課
mlkoho@toyo.jp
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