プレスリリース
【東京医科大学】運動時の新型コロナウイルス集団感染の主要な原因を調査〜パンデミックの経験から見えてくる重視すべき予防策〜
東京医科大学(学長:宮澤啓介/東京都新宿区)公衆衛生学分野の町田征己講師らは、新型コロナウイルスの流行中に起こった運動時の集団感染の主要な原因を明らかにするために、医学文献データベースに登録されている集団感染事例を収集し、その報告内容を調査しました。
この研究成果は、2024年12月11日、国際医学雑誌「Sports Medicine」に掲載されました。
【概要】
東京医科大学(学長:宮澤啓介/東京都新宿区)公衆衛生学分野の町田征己講師らは、新型コロナウイルスの流行中に起こった運動時の集団感染の主要な原因を明らかにするために、医学文献データベースに登録されている集団感染事例を収集し、その報告内容を調査しました。その結果、運動時の集団感染とその原因を報告している21本の論文が見つかりました。個人で行う運動では、換気・マスクなど空気を介した感染症対策の不足や、感染症の症状があるにも関わらず運動を行う人がいることが原因として多く報告されていました。一方、チームスポーツでは、食事会や車での移動など、運動以外の場面での接触が原因とし最も多く報告されていました。個人の運動やチームスポーツのいずれにおいても、運動器具などを介した接触感染が主な原因とされた事例はほとんどありませんでした。
運動や身体活動は、動脈硬化性疾患、糖尿病、一部のがんなどの予防効果に加え、肺炎や新型コロナウイルス感染症などの感染症の重症化を予防する効果も明らかになっています。本研究結果から、集団感染リスクを抑えつつ運動やスポーツを安全に継続するために、@運動前の体調確認(体調が悪い時は運動を行わない)、A食事会や車での移動などの運動以外での接触機会の削減、B換気の改善など空気を介した感染への対策強化、が重要であることが示唆されました。
この研究成果は、2024年12月11日、国際医学雑誌「Sports Medicine」に掲載されました。
【本研究のポイント】
● ランニングやジムなど個人で行う運動における集団感染では、換気・マスクなど空気を介した感染症対策の不足や、感染症の症状があるにも関わらず運動を行う人がいることが原因として多く報告されていました。
● 一方、チームスポーツでは、食事会や車での移動など、運動以外の場面での接触が原因として最も多く報告されていました。
● 運動器具などを介した接触感染が主な原因とされた事例はほとんどありませんでした。
● 運動時の新型コロナウイルス感染症対策として、@運動前の体調確認(体調が悪い時は運動を行わない)、A食事会や車での移動などの運動以外での接触機会の削減、B換気の改善など空気を介した感染への対策強化が重要であることが示唆されました。
【研究の背景】
新型コロナウイルス感染症は依然として日本でも年に数回の流行が繰り返し起きています。世界的大流行(パンデミック)時においては、様々な行動制限が行われましたが、特に運動やスポーツは集団感染のリスクが高い活動として厳しい制限が求められました。一方で、運動や身体活動には肺炎や新型コロナウイルス感染症などの感染症の重症化を予防する効果があることが明らかになっています。そのため、新型コロナウイルス感染症の流行期においても、集団感染リスクを抑えながら運動やスポーツを安全に継続することは、多くの健康上のメリットが期待されます。しかし、運動やスポーツ中の集団感染の原因については、いくつかの事例において個別に報告がされているものの、どのような原因が多いのかという点に関してはこれまで十分に検討されていませんでした。
【本研究で得られた結果・知見】
本研究はシステマティックレビューという手法を用いて、医学関連の文献データベースに登録されている運動時の新型コロナウイルス集団感染事例を収集し、報告されている主要な原因を調査しました。調査の結果、運動時の集団感染とその原因を報告している21本の論文が見つかりました。これらの論文では集団感染の原因として複数の要因を挙げられていましたが、その内容はランニングやジムなどの個人で行う運動とチームスポーツでは異なっていました。個人で行う運動では、換気・マスクなど空気を介した感染症対策の不足や、感染症の症状があるにも関わらず運動を行う人がいることが原因として多く報告されていました。一方、チームスポーツでは、食事会やロッカーなど、運動以外の場面での接触が原因として最も多く報告されていました。個人運動およびチームスポーツのいずれにおいても、接触感染が主な原因とされた事例はほとんどありませんでした。
【今後の研究展開および波及効果】
運動は他者と近づく機会の増加や呼吸回数の増加によって、集団感染のリスクが高まる活動とされ、今回の新型コロナウイルス感染症パンデミックでは運動実施に制限を求められる場面が多くありました。特にチームスポーツは、大人数が密集する場面が多いことから、集団感染の発生リスクが一段と高い活動として認識されています。しかし、サッカーやラグビーなどのスポーツでは、試合中の至近距離での接触時間が短いことが先行研究で報告されています。本研究でも、チームスポーツにおける試合中の感染伝播と推測される事例はほとんど見られず、多くの事例が食事会、写真撮影、車での移動など、試合以外の接触によって集団感染が発生したことを示していました。
運動や身体活動は、動脈硬化性疾患、糖尿病、一部のがんなどの非感染性疾患の予防効果に加え、肺炎や新型コロナウイルス感染症などの感染症の重症化を予防する効果も明らかになっています。そのため、新型コロナウイルス感染症の流行期においても、集団感染リスクを抑えながら運動やスポーツを安全に継続することは、多くの健康上のメリットが期待されます。本研究結果から、集団感染リスクを抑えつつ運動やスポーツを安全に継続するために、@運動前の体調確認(体調が悪い時は運動を行わない)、A食事会や車での移動などの運動以外での接触機会の削減、B換気の改善など空気を介した感染への対策強化が重要であると考えられました。本研究結果は新型コロナウイルス感染症以外の呼吸器感染症対策を検討するうえでも参考になる可能性があると考えられます。
【論文情報】
タイトル:Causes of COVID-19 Outbreaks During Sports and Exercise: A Systematic Review
著 者: Masaki Machida*, Koichi Dai, Itaru Nakamura, and Shigeru Inoue
(*:責任著者)
掲載誌名:Sports Medicine
DOI: https://doi.org/10.1007/s40279-024-02153-7
【主な競争的研究資金】
本研究はJSPS科研費 JP 23K16728の助成を受けたものです。
【公衆衛生学分野HP】
https://www.tmu-ph.ac/
▼本件に関する問い合わせ先
企画部 広報・社会連携推進室
住所:〒160-8402 東京都新宿区新宿6-1-1
TEL:03-3351-6141(代)
メール:d-koho@tokyo-med.ac.jp
【リリース発信元】 大学プレスセンター https://www.u-presscenter.jp/