プレスリリース
ポイント
・微小核形成誘導剤であるパクリタキセルおよびリバーシンを添加し、微小核を形成させたヒトiPS細胞から微小核細胞を取り出し、異なるヒトiPS細胞に融合させることで、迅速にヒト染色体の直接導入が可能であることを示しました。また、導入染色体において特筆すべき染色体欠損や再配列を生じなかったことを示しました。
・ヒトiPS細胞を染色体供与細胞として使用することで、疾患患者由来細胞株を含む多様な遺伝背景のヒトiPS細胞を染色体資源として利用可能であり、常染色体および性染色体を導入することができます。
・本技術やヒト人工染色体技術を利用したメガベース(Mb)規模のヒト染色体領域クローニング法を活用することで、自在に疾患モデルヒトiPS細胞を作製でき、染色体異数性疾患の機序解明に貢献します。
・本技術により、ヒト人工染色体を異種動物由来細胞であるA9/CHO細胞を介することなくヒトiPS細胞に導入できることが示され、これによりヒト人工染色体を利用した再生医療や遺伝子/細胞移植治療法の開発に貢献します。
東京薬科大学・生命科学部応用生命科学科生物工学研究室・宇野愛海助教および鳥取大学・医学部・生命科学科・染色体医工学講座/染色体工学研究センターの香月康宏教授らの研究グループは、ヒト人工多能性幹細胞(hiPS細胞)から異なるhiPS細胞への微小核細胞融合法(Microcell-mediated chromosome transfer: MMCT法)注1を用いた新たな染色体導入法の開発に成功しました(図1A)。
MMCT法を用いて、hiPS細胞に染色体異数性疾患注2の原因染色体を導入して作製した異数性疾患モデルiPS細胞は、疾患機序の解明に活用されています。従来のヒト単一染色体ライブラリーA9細胞やCHO細胞株を染色体供与細胞とする手法では、新たにヒト染色体保持ライブラリーを樹立するためには煩雑な工程が必要で、多大な労力と6か月以上の研究期間が必要でした。さらに、A9細胞やCHO細胞を経由した場合では、しばしば染色体異常が生じ、正常なヒト染色体を安定して提供することが困難でした。一方で、hiPS細胞は、様々な人種・性別・遺伝的背景のヒト体細胞から細胞株が樹立されており、継代培養時の染色体安定性が高いため、非常に魅力的な生物資源です。本研究グループは、hiPS細胞を染色体供与細胞として使用するための微小核形成誘導剤パクリタキセル(PTX)注4とリバーシン(Rev)注5を見出しています。本研究では、hiPS細胞から取得した微小核細胞を、異なるhiPS細胞と融合することで、21番染色体注6(Chr21)、X染色体注7(ChrX)、Y染色体注8(ChrY)を導入し、同一遺伝的背景をもつ代表的な染色体異数性疾患モデルhiPS細胞を樹立することに成功しました。これにより、従来は6か月以上かかっていた異数性疾患モデルの作製がわずか2か月に短縮され、MMCT法を含む研究手法が大幅に効率化されました。網羅的DNAコピー数変化解析(CGHアレイ解析)注9や染色体解析により、hiPS細胞に導入された染色体は、欠損や再配列を生じることなく、完全な状態で長期間保持されると確認されました。
本研究により、hiPS細胞から異なるhiPS細胞へ直接染色体を導入できる新規のMMCT法が確立され、迅速な染色体異数性疾患モデルヒトiPS細胞の作出が可能となりました。さらに、本研究グループが世界に先駆けて開発した遺伝子導入プラットフォームであるヒト人工染色体(HAC)注10をhiPS細胞内で構築できれば、細胞製剤等の元となるhiPS細胞へ導入できるため、異種動物細胞を利用しない再生医療や遺伝子・細胞移植治療の開発にも役立つと期待されます。本研究成果は「Molecular Therapy-Nucleic Acids」2024年11月4日(オンライン版)に掲載されました。
本成果は、以下の事業・研究領域・研究課題によって得られました。
AMED再生・細胞医療・遺伝子治療実現加速化プログラム(基礎応用研究課題)、AMED 革新的先端研究開発支援事業(LEAP)、AMED生命科学・創薬研究支援基盤事業(BINDS)、JST CREST、生命創成探求センター共同研究(ExCELLS)などの支援を受けて行われました。
<研究の背景と経緯>
MMCT法は主にマウス由来A9細胞やチャイニーズハムスター由来CHO細胞を染色体供与細胞として用いることで、ヒト/マウス幹細胞等にMb規模のヒト染色体(断片)を導入し、疾患モデル細胞や動物の作製を介して、生物学的研究ツールの開発に貢献しています。従来のプラスミドベクターやBACベクターを用いた遺伝子導入法は5〜200 kb程度の遺伝子導入に用いられ、Mb規模の遺伝子導入は非常に困難です。一方で、ヒト染色体導入手法は、あらかじめ作製された1番染色体から22番染色体およびX染色体をそれぞれ保持するヒト単一染色体保持A9/CHO細胞ライブラリーを染色体供与細胞として用いることでMb単位の遺伝子導入に成功していました。しかしながら、既存のヒト単一染色体保持A9/CHO細胞ライブラリーにおいて保持されるヒト染色体は、A9/CHO細胞の特性として、染色体安定性が高くないため、部分的に染色体欠損や再配列が生じており、目的のヒト染色体全長を安定して提供することが困難です。また、提供可能な染色体は特定のヒト線維芽細胞株に由来するため、遺伝的多様性に乏しいという課題がありました。hiPS細胞は、疾患患者を含む多様な遺伝的背景のヒト由来細胞株が樹立されており、無限増殖能を示すうえ、染色体核型は長期間正常に維持できるため、非常に魅力的な生物資源です。本研究グループは、hiPS細胞を染色体供与細胞として使用するために、パクリタキセル(PTX)とリバーシン(Rev)を用いて微小核細胞を作製し、CHO細胞と融合する新規の高効率MMCT法を報告しています。そこで本研究では、PTXとRevを用いて作製したヒトiPS細胞由来微小核細胞を、異なるヒトiPS細胞に融合させることで、染色体の導入が可能であるか検証しました。
具体的には、代表的染色体異数性疾患の原因染色体であるChr21(ダウン症、染色体サイズ:45 Mb)、ChrY(クラインフェルター症候群、60 Mb)、新規の遺伝子導入プラットフォームであるHAC(5 Mb)や、長大な染色体であるChrX(トリプルX症候群、154 Mb)を異なる正常hiPS細胞に導入できるか検証しました。
<研究の内容>
MMCT法は、染色体供与細胞に微小管形成阻害剤を用いて微小核形成を誘導すること、微小核を細胞膜を伴って脱核することで微小核細胞を取得すること、微小核細胞を任意の染色体受容細胞と融合すること、によって染色体を導入する技術です。
始めに、本研究グループが近年報告した微小管安定化剤PTX(100 nM)と紡錘体チェックポイント阻害剤Rev(1000 nM)という薬剤添加培養条件にて、hiPS細胞に効率よく微小核形成を誘導可能であると実証しました(図2A、2B)。
次に、hiPS細胞から異なるhiPS細胞に染色体が導入可能であるかを、4種の染色体、Basal-HAC、Chr21、ChrY、ChrXを対象として検討しました。MMCTにおける微小核細胞とhiPS細胞の融合には、融合効率が高いエコトロピックウイルスの膜融合タンパク質注11を使用しました。結果として、いずれの染色体を導入した場合でも、薬剤耐性を示すクローンが取得されました。(図2C、2D)。また染色体解析及びFluorescence in situ hybridization (FISH)解析注12によって、染色体受容細胞の染色体には影響を与えることなく、目的通りに各染色体、Basal-HAC(図3A)、Chr21(図3B)、ChrX(図3C)、ChrY(図3D)が導入されていることが確認されました。最後に、CGHアレイ解析法にて、導入されたChr21(図4A)、ChrX(図4A)、ChrY(図4A)について解析したところ、導入された染色体は全ての領域において1コピー分が増加している、すなわち、完全長の導入染色体が受容細胞内で保持されていることが確認されました。
<今後の展開>
従来のヒト単一染色体保持A9/CHO細胞ライブラリー中に保持されるヒト染色体には、構造異常が生じていることが報告されていました。本研究成果として、新たなMMCT法により、hiPS細胞から異なるhiPS細胞に染色体導入が可能になりました。正常hiPS細胞株と、疾患原因染色体を導入した同一遺伝的背景(アイソジェニック)疾患モデルhiPS細胞間を比較し、疾患に関連する機能性細胞を分化誘導することで、精度よく染色体異常と疾患原因の特定が可能です。また染色体異常は、主なヒト初期発生異常の原因となりますが、特定の染色体異数性を再現したhiPS細胞を用いて初期発生を模倣した細胞分化実験を行うことにより、これまでのヒト胚や流産胎児を用いた研究では困難であった稀な染色体異数性の影響を解明することにも役立ちます。
更に、本研究成果では、Mb規模の染色体領域を導入可能な新たな遺伝子導入ベクターとして期待されるHACを、動物細胞であるマウス由来A9細胞やチャイニーズハムスター由来CHO細胞を介さずに、hiPS細胞に直接導入することができると実証しました。このことから、HACを用いて遺伝子修復・改変を行ったhiPS細胞を疾患患者治療に向けた臨床応用を目指す際に、従来のMMCT法よりも生物由来原料基準注13により適合した製造法の開発に繋がると期待されます。
図1、本研究成果と従来法を対比した概要図
(A) 本研究成果であるhiPS細胞から異なるhiPS細胞へのMMCT法による染色体導入の手順を概説した。1. 導入目的とする任意のヒト染色体についてCRISPR/Cas9を用いて薬剤耐性マーカーを挿入することで染色体導入細胞を選別可能なタグ付けを行う。この工程には1か月を要する。2. 染色体供与細胞とするhiPS細胞にEcotropicウイルスエンベロープタンパク質を発現するプラスミドベクターを導入し、PTXおよびRevを培地に添加することで微小核形成を誘導し、結果として微小核細胞を取得できる。これをEcotropicウイルスエンベロープタンパク質の受容体であるmCAT-1発現プラスミドベクターを一過性に導入した染色体受容hiPS細胞に対して導入する手法を開発した。この工程には1か月を要する。結果として、この新たなMMCT法による任意染色体導入hiPS細胞の取得には2か月を要する。(B) 従来のヒト単一染色体保持A9/CHO細胞ライブラリーを染色体供与細胞とするMMCT法による染色体導入手順を概説した。1. 正常ヒト線維芽細胞株に薬剤耐性遺伝子を保持するプラスミドベクターを導入し、薬剤選抜をすることにより、ヒト線維芽細胞中のランダムな染色体部位に薬剤耐性遺伝子が挿入されたクローンを取得する。これまでの研究では各ヒト染色体にそれぞれに薬剤耐性遺伝子が挿入されたクローンを取得するために約700クローンの解析がなされた。この工程には2か月を要する。2. 導入目的とする任意のヒト染色体に薬剤耐性遺伝子が挿入されたヒト線維芽細胞とA9/CHO細胞を融合することで、ヒト線維芽細胞とのA9/CHOハイブリッド細胞を取得する。通常、ヒト線維芽細胞は有限増殖性であり、微小核形成能に乏しいが、A9/CHOハイブリッド細胞とすることで、無限増殖性と微小核形成能が付与される。この工程には1か月を要する。3. 高い微小核形成能を持つA9/CHO細胞に標的染色体をMMCT法により導入し、ヒト単一染色体保持A9/CHO細胞を樹立できる。この工程には2か月を要する。4. 最後に、hiPS細胞等、研究目的とする染色体受容細胞に対して、ヒト単一染色体保持A9/CHO細胞から任意の染色体を導入する。この工程には1か月を要する。このことから、従来のMMCT法によるhiPS細胞への任意染色体導入を新たに計画する場合、6か月以上の研究期間と多大な労力を要する。
図2、PTXおよびRevを用いたhiPS細胞への微小核誘導条件の決定と、各染色体をMMCT法によりhiPS細胞に導入した際の薬剤耐性クローン数出現数の検証結果
(A) 各種、分裂期阻害剤を添加し培養したhiPS細胞の核標本写真。Metaphase arresting solution (MAS)を0.1 g/mLで処理した場合でも微小核の形成が観察されるが、PTX 100nMおよびRev 1000 nMを添加し培養した場合では、より多くの微小核が形成されることが観察された。(B) 化合物非添加条件(Control)を含めて薬剤添加濃度を変化させた際の1細胞あたりの微小核数を数を示すグラフ。PTXおよびRevを用いて顕著に多くの微小核が形成された。(C) hiPS細胞(株名:201B7)よりBasal-HAC、もしくはChr21をhiPS細胞(株名:585A1)に導入した際に得られた薬剤耐性クローン数を示すグラフ。(D) hiPS細胞(株名:HFL1-SeV-iPS)よりChrX、もしくはhiPS細胞(株名:HFL1-hY-GFPneo)よりChrYをhiPS細胞(株名:201B7 HPRT-KOもしくは201B7)に導入した際に得られた薬剤耐性クローン数を示すグラフ。
図3、ヒト染色体導入により獲得した薬剤耐性クローンの代表的染色体解析結果
(A) Basal-HACを導入した585A1の核型解析結果。HACが宿主染色体から独立して保持されていることが確認された。(B) Chr21を導入した585A1の核型解析結果。Chr21が3本保持されていることが確認された。(C) ChrXを導入した201B7 HPRT-KOのFISH解析結果。DNAをDAPI(青)、X染色体をDYSTROPHIN遺伝子プローブ(赤)にて染色した。赤色シグナルで示されるX染色体が3本保持されていることを確認した。(D) ChrYを導入した201B7のFISH解析結果。DNAをDAPI(青)、X染色体をDYSTROPHIN遺伝子プローブ(赤)、Y染色体をタグ付けに用いたGFPneo遺伝子プローブ(緑)にて染色した。赤色シグナルで示されるX染色体が2本、緑色シグナルで示されるY染色体が1本保持されていることを確認した。
図4、CGHアレイ解析による導入染色体の完全性に関する検証
(A) Chr21導入585A1の全染色体に関するコピー数変動解析概要図。(B) Chr21に注目した詳細なコピー数変動解析概要図。(C) ChrX導入585A1の全染色体に関するコピー数変動解析概要図。(D) ChrXに注目した詳細なコピー数変動解析概要図。(E) ChrY導入201B7細胞の全染色体に関するコピー数変動解析概要図。(F) Chr21に注目したコピー数変動解析概要図。(A)(C)(E) 赤ラインは、染色体導入前の野生型株と比較した際に、染色体領域重複として検出された部位を示す。緑ラインは、染色体導入前の野生型株と比較した際に、染色体領域欠損として検出された部位を示す。(B)(D)(F) 染色体領域におけるコピー数変動を示すプローブ蛍光強度値(log2値)である。0は比較対照細胞と同一コピー数の2コピーを示す。1は比較対象株の2倍コピー数である4コピーを示す。図中においてはChr21およびChrXでは0.5付近の値が示されており、1.5倍コピー数である3コピーを示す。ChrYでは大部分は0.5付近の値が示されており3コピーと解釈できる。ChrXとChrYは部分的に相同染色体領域を持つため、値1として示される4コピー状態の領域が確認された。-1は比較対照細胞の1/2コピー数である1コピーを示す。
<用語解説>
注1)MMCT法
微小核細胞融合法(Microcell-mediated chromosome transfer)と呼ばれる任意の細胞から細胞膜に包まれた微小核(微小核細胞)を取り出し、別の細胞と細胞融合する技術。また微小核とは、染色体の不分離によって生じる、単一または少数の染色体を含んだ核。本研究ではhiPS細胞に微小核を形成させ、染色体供与細胞として活用する手法の開発を試みた。
注2)染色体異数性疾患
ヒト体細胞は常染色体(1番染色体から22番染色体)を22対(44本)と性染色体を2本(X染色体を2本、もしくはX染色体とY染色体を各1本)を保持し、全体で46本の染色体核型を示す。染色体異数性とは染色体の数的異常を指し、余剰染色体を1本持つ染色体トリソミーや、あるべき染色体を1本欠く染色体モノソミーを指す。
注3)コルセミド
CAS番号:477-30-5, 微小管重合阻害剤であり、細胞を細胞周期の分裂期で停止させる。免疫抗体染色で観察可能な微小管構造が形成されない。
注4)パクリタキセル(PTX)
CAS 番号:33069-62-4, 微小管脱重合阻害剤であり、細胞を細胞周期の分裂期で停止させる。多極中心体や免疫抗体染色で観察可能な微小管構造が過剰に形成される。
注5)リバーシン(Rev)
CAS No. 656820-32-5, 細胞周期の分裂期において紡錘体が正しくキネトコアに結合したことを検証する紡錘体形成チェックポイント(Spindle assembly checkpoint)を担う、Monopolar spindle 1(MPS1)およびオーロラキナーゼに対する阻害剤である。Rev存在下では、コルセミドやPTXにより紡錘体形成異常および染色体分配不全が生じても分裂期停止が生じることなく細胞周期が進行し、間期へと進む。
注6)21番染色体
ヒト21番染色体は、常染色体であり、トリソミー症候群のうち最も発生頻度の高いダウン症候群患者は主に、21番染色体を3本保持する。本研究では、CRISPR/Cas9を用いて赤色蛍光遺伝子, mCherryとネオマイシン誘導体耐性遺伝子を融合させたmCherryneo融合遺伝子を挿入して標識しているため、これを保持するhiPS細胞はネオマイシンによる薬剤選抜に耐性を示す。
注7)X染色体
ヒトX染色体は、性染色体であり、女性では2本、男性では1本を持つ。トリプルX症候群はX染色体を3本保有する女性に見られる染色体異数性疾患である。また、X染色体はヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)を保持するため、ヒポキサンチン、アミノプテリン-チミジン含有培地を用いた薬剤選抜に耐性を示す。201B7 HPRT-KO細胞はあらかじめCRIPSR/Cas9を用いてHPRT遺伝子を欠損させたhiPS細胞株である。
注8)Y染色体
ヒトY染色体は、性染色体であり、男性では1本を持ち、男性様性分化決定因子を保持する。クラインフェルター症候群はX染色体を2本、Y染色体を1本保有する、染色体異数性疾患である。本研究では、CRISPR/Cas9を用いて緑色蛍光遺伝子, GFPとネオマイシン誘導体耐性遺伝子を融合させたGFPneo融合遺伝子を挿入して標識しているため、これを保持するhiPS細胞はネオマイシンによる薬剤選抜に耐性を示す。
注9)Comparative Genomic Hybridization(CGH)アレイ法
比較される2種類の試料についてそれぞれ蛍光ラベルし、マイクロアレイ上で競合的にハイブリダイゼーションさせる。そのシグナル強度を比較することで、それぞれの試料におけるゲノムDNAコピー数の変動を解析する手法である。特に、テロメア近傍領域やX染色体上のY染色体上の偽常染色体領域についてもプローブに含まれており、ゲノム全体を包括的に検証できる。
注10)ヒト人工染色体(HAC)
ヒト21番染色体から全ての遺伝子領域を削除されて作製された、改変染色体。21番染色体由来セントロメアおよび人工テロメア、LoxP配列及び蛍光遺伝子や薬剤耐性遺伝子で構成される。ヒト細胞において安定的に維持されるベクターである。
注11)Eco-MMCT法
MMCT法の中でも、微小核細胞と染色体受容細胞の膜融合をEcotropicウイルスエンベロープとその受容体mCAT-1を用いて高効率化させた手法である。これらを用いない一般的なMMCT法では、主に、ポリエチレングリコールと呼ばれる化合物にて、微小核細胞と染色体受容細胞の膜融合を誘導する。
注12)染色体解析及びFluorescence in situ hybridization (FISH)解析
染色体解析として、染色体標本についてキナクリン・ヘキスト染色を行い、Q-Banding法にて核型の正常性を評価している。FISH解析として、ここでは蛍光ラベルされた配列特異的にハイブリダイゼーション可能なDNAプローブを用いて、特定の染色体領域を蛍光シグナルとして可視化し、蛍光顕微鏡下で観察する手法を指す。本研究では、X染色体上のDYSTROPHIN遺伝子配列をX染色体検出用プローブ、Y染色体上に挿入されたGFP-neo融合遺伝子配列をY染色体検出用プローブ、として使用している。
注13)生物由来原料基準
本基準は、医薬品、医薬部外品、化粧品及び医療機器(以下「医薬品等」という )に使用される人その他の生物(植物を除く)に由来する原料又は材料(添加剤、培地等として製造工程において使用されるものを含む)について、製造に使用される際に講ずべき必要な措置に関する基準を定めることにより、医薬品等の品質、有効性及び安全性を確保することを目的とする。
<論文タイトル>
"Microcell-mediated chromosome transfer between non-identical human iPSCs"
(ヒトiPS細胞から異なるヒトiPS細胞への染色体導入法の開発)
DOI: 10.1016/j.omtn.2024.102382
<論文著者名>
Narumi Uno, Hitomaru Miyamoto, Kyotaro Yamazaki, Masaya Egawa, Hiroaki Kobayashi, Kanako Kazuki, Mitsuhiko Osaki, Teruhiko Suzuki, Shusei Hamamichi, Mitsuo Oshimura, Kazuma Tomizuka, Yasuhiro Kazuki *
*責任著者
<お問い合わせ先>
・研究に関すること
香月 康宏(カヅキ ヤスヒロ)
鳥取大学 医学部生命科学科/染色体工学研究センター 教授
〒683-8503 鳥取県米子市西町86番地
Tel:0859-38-6219 Fax:0859-38-6210
E-mail:kazuki@tottori-u.ac.jp
・報道担当
鳥取大学 米子地区事務部総務課広報係
〒683-8503 鳥取県米子市西町86番地
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▼本件に関する問い合わせ先
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