プレスリリース
積水ハウス株式会社
株式会社シンク・ネイチャー
積水ハウス株式会社と株式会社シンク・ネイチャーは、2030 年のネイチャー・ポジティブの実現に
向けて、積水ハウスの生物多様性の取り組み「5 本の樹」計画やシンク・ネイチャーの生物多様性ビッ
グデータ、A I を活用して、『生物多様性の純増(以下、「生物多様性ネットゲイン」という。)と算
出方法の標準化』を目指し、共同で推進する連携協定を 7 月 1 日に締結しました。
近年、世界中で生物多様性の保全・再生への動きが加速しています。2022 年 12 月には生物多様性
条約第 15 回締約国会議(COP15)が開催され、「昆明・モントリオール生物多様性枠組」を採択、
2030 年までに陸域と海域の 30%以上を保全する「30by30*1目標」などがターゲット(行動目標)に
位置付けられました。また今年 9 月には、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)の最終提言が
予定されています。日本でも民間取り組み等と連携した自然環境保全、例えば、公的あるいは民間に
よる保護区面積の拡大や、都市緑化における民間の力の活用(OECM*2)についての議論が本格化して
います。
このような社会の動きに先立ち、積水ハウスは 2001 年から都市の住宅地に地域の在来樹種を中心に
植栽し、緑のネットワークを作ることで、生物多様性保全・再生を推進する「5 本の樹」計画に取り組
んでいます。この効果を琉球大学理学部久保田研究室及び株式会社シンク・ネイチャーと共同検証し
世界初の都市の生物多様性の定量評価の仕組みを「ネイチャー・ポジティブ方法論」として 2021 年に
公開いたしました。
生物多様性保全活動の促進につながる本方法論を発展させ、今回は住宅地への植樹等の緑化を通じ
た「生物多様性ネットゲイン」とその算出方法の標準化を推進します。「生物多様性ネットゲイン」
とは、住宅地や開発地における生物多様性保全に留まらず、生物多様性の回復に向け生物多様性を増
やすことです。取り組みとしては、「生物多様性ネットゲイン」につながる住宅建設に関する新たな
商品・サービス、ビジネスモデル、その他の実現アイデアの創出および啓発活動を行います。例えば、
今後の住宅建設予定地における植栽提案において、「生物多様性ネットゲイン」を最大化できる植栽
の樹種・本数のシミュレーション提案ツールの導入を 2024 年の春頃に検討しています。算出にあたっ
ては、「5 本の樹」計画やシンク・ネイチャーの生物多様性ビッグデータ、A I の活用をしていきます。
積水ハウスは “「わが家」を世界一幸せな場所にする”というグローバルビジョンのもと、本取り組
みを通して生物多様性回復のための数値的目標設定を行うことで、ESG 経営のリーディングカンパニ
ーを目指します。
さらに積水ハウスとシンク・ネイチャーが連携し、「生物多様性ネットゲイン」の取り組みを共同
推進することで、ネイチャー・ポジティブの実現に貢献してまいります。
積水ハウス×シンク・ネイチャーによる主な取り組み
・既存の建築地における緑化活動による生物多様性ネットゲインの算出に対応できる「自然資本関連
データセットと算出方法の標準化」の推進(例:生物多様性ビッグデータと A I を活用した算出方法の
提案)
・今後の住宅建設予定地における植栽提案において、シンク・ネイチャーのデータと分析アルゴリズ
ムを活用して生物多様性ネットゲインを最大化できる植栽の樹種・本数のシミュレーション提案ツー
ル導入を検討
■積水ハウスの「5 本の樹」計画について
「5 本の樹」計画は、積水ハウスが 2001 年から生物多様性保全の取り組みとして、お客様のご協力
のもと、生態系に配慮した造園緑化事業として開始したプロジェクトです。“3 本は鳥のために、2 本
は蝶のために、地域の在来樹種を”という思いを込め、日本古来の里山をお手本として、その地域の気
候風土・鳥や蝶などと相性のよい在来樹種を中心とした植栽にこだわった庭づくり・まちづくりを提
案しています。2021 年度の「5 本の樹」をはじめとした年間の植栽本数は 88.6 万本、2001 年の事業
開始からの累積植栽本数は 1,900 万本を達成しました(2023 年 1 月現在)。
「5 本の樹」計画公式サイト
https://www.sekisuihouse.co.jp/gohon_sp/
■ネイチャー・ポジティブ方法論について
「5 本の樹」計画のネイチャー・ポジティブ方法論とは、株式会社シンク・ネイチャーの自然資本ビ
ッグデータと生物多様性可視化テクノロジーに基づいた、都市部における生物多様性を財務価値化す
るための方法論です。生物多様性回復についての認知を広げ、ノウハウを活用してもらい緑化の促進
と生物多様性保全への貢献へつなげていくことを目指し、2021 年 11 月に一般公開いたしました。
株式会社シンク・ネイチャーとの共同検証において、1977 年の樹木・鳥・蝶の種数、多様度指数、
個体数を 100%とし、「5 本の樹」計画を開始前の 2000 年を基準として、緑地の劣化が著しい三大都
市圏(関東・近畿・中京)の 2070 年までの変動をシミュレーションしました。地域の生き物にとって活
用可能性の高い在来樹種を植栽することで、「5 本の樹」計画開始前の 2000 年と比較して、2030 年
には 37.4%、2050 年には 40.9%、さらに 2070 年には 41.9%まで生物多様性を回復できることが予
測されました。
「ネイチャー・ポジティブ方法論」公開サイト
https://www.sekisuihouse.co.jp/gohon_sp/method/
■株式会社シンク・ネイチャーについて
生物多様性科学において卓越した研究業績を有する研究者で構成されている「大学発グリーンテッ
ク・スタートアップ」です(https://think-nature.jp)。世界の陸・海を網羅した野生生物や生態系
の時空間分布を、自然史の研究論文や標本情報、リモートセンシング(人工衛星・ドローンによる観
測)、環境 DNA 調査、野生生物の行動記録(バイオロギング)、植物・動物愛好者の研究などで収集
された生物関連データ(地理分布、遺伝子、機能特性、生態特性など)を元にビッグデータ化し、A
I等の最先端技術を用いたネイチャーの可視化や予測、シナリオ分析技術を有しています*3。TNFD の
データカタリストイニシアティブに参画し、自然資本ビッグデータを活用した自然の持続的利用に関
する分析、評価、 ソリューション(TN LEAD*4、TN GAIN*5)を通して、金融機関・機関投資家・企業
の生物多様性対応を支援しています。
*1 30by30 とは、生物多様性の損失を抑止するために、2030 年までに地球の陸地と海洋の 30%以上を保護地域として
効果的に保全する目標
*2 OECM とは”other effective area-based conservation measures”の略称で、法的根拠のある公的な保護区とは異なる“代替的な保護区施策”のことを意味します。国立公園のように、国が主導して国有地に設置する公的保護区は、保全
専用の土地を確保するランドスペアリング型の保全と呼ばれます。しかし、国土の 30%以上を保護区にしようとする
と、国有地だけでなく民有地も関係してくるので、保全に特化した土地利用や私権制限は実現性がありません。例え
ば、林地や農地を放棄して保護区にしましょう、とか、都市部の私有地を接収して保護区にすることは現実的ではあり
ません。したがって、保全と様々な土地・海域利用との共用を図るランドシェアリング型の保全が注目されることにな
ります。例えば、以下のような、土地・海域利用において、その土地の生物多様性の保全も含めて、多目的な使用を促
すような考え方です。
・農地で農業生産を行いつつ、同時に副次的に、農地や周辺里山で生物多様性の保全が伴う。
・林地で木材生産を行いつつ、同時に副次的に、森林の生物多様性の保全維持が伴う。
・沿岸域で漁業を行いつつ、同時に副次的に、海域の生物多様性の保全維持が伴う。
・都市で経済活動を行いつつ、同時に副次的に、都市緑地の生物多様性の保全再生も行う。
*3 日本の生物多様性地図化プロジェクト:J-BMP (https://biodiversity-map.thinknature-japan.com)
*4 TN LEAD とは、全産業セクター&グローバルな事業拠点に対応した TNFD 対応支援サービス
(https://think-nature.jp/service03)
*5 TN GAIN とは、宅地の庭木植栽、企業緑化、社有林などのネイチャー・ポジティブ効果の数値評価サービス
(https://services.think-nature.jp/gain/)