プレスリリース

株式会社リプロセル

株式会社リプロセル設立20周年を迎えて

(DreamNews) 2023年02月27日(月)14時00分配信 DreamNews

リプロセルは、2003年2月26日、東大・京大発の大学発ベンチャーとしてスタートし、設立20周年を迎えることができました。
当社の製品・サービスをご利用頂いているお客様、当社の将来に期待しご投資いただいた株主様、共同研究や協業でご一緒させていただいたパートナーの皆様、そして、会社の成長に向けて努力してきた社員及び役員の皆様、様々な形でご貢献いただいた関係者の皆様に心より御礼申し上げます。皆様の多大なるご協力により、リプロセルが20周年を迎えることができたことを心から嬉しく思います。
今回は、20周年を迎えて、設立から現在まで、さらにリプロセルの将来についてご紹介したいと思います。

1)設立からiPS細胞の誕生まで(2003-2006年)
リプロセルは、2003年、京都大学の中辻憲夫教授(当時)と東京大学の中内啓光教授(当時)の幹細胞技術を事業化する目的で設立されました。2003年は、中辻教授が日本で初めてヒトの胚性幹細胞(ES細胞)の樹立に成功し、再生医療が注目を浴び始めたところでした。ES細胞は、iPS細胞と同様に、神経細胞、心筋細胞、肝細胞などの様々な細胞に形を変える(分化)する特徴を持っており、「万能細胞」と呼ばれていました。一方、ES細胞は、不妊治療で不要になった受精卵を使うため倫理的側面から、研究が進めにくい状況でした。このため、世界中の研究者が、血液や皮膚などの細胞(体細胞)から新たな万能細胞を作ることを目指しており、リプロセルの設立当初の目標も、その「新たな万能細胞」を作ることでした。リプロセルの名前の由来は、リプロ(Reprogramming「初期化」)+セル(Cell)であり、「細胞を初期化すること」、つまり、「新たな万能細胞」そのものが社名になっています。
結果として、その新たな万能細胞は、2006年に京都大学の山中伸弥教授によって発明され、「iPS細胞」と名付けられました。我々にとっては、会社設立3年目の出来事でしたが、これが、リプロセルの方向性を大きく変えることになりました。

2)iPS細胞の事業化から上場まで(2007-2013年)
iPS細胞の発明以降、リプロセルはiPS細胞の事業化を新たな目標として進み出しましたが、ここに、創業以来、行っていたES細胞の研究開発の成果が大きく貢献することになりました。
2003年当時、再生医療が注目を集めていましたが、多くの研究者に話を聞き、各種規制を調べる中で、再生医療の実現には相当な時間がかかることがわかってきました。そこで、リプロセルは、一足飛びに再生医療を目指すのではなく、ES細胞の研究を支援する研究試薬及び創薬支援サービスを当面の成長の柱とすることにしました。これが、現在の事業セグメントの1つである研究支援事業の始まりになります。但し、再生医療を諦めたわけではなく、「その時」を待つことにしました。
リプロセルの第一号製品は、「Primate ES Cell Medium」というヒトES細胞専用の培養液で、中辻教授のヒトES細胞の技術を製品化したものになります。この製品が、後に、山中教授のヒトiPS細胞の発明の実験で使用されることになり、その後、日本中のiPS細胞の研究者に当社の培養液が広く使われることになりました。iPS細胞は、ES細胞と非常に似た特性であるため、我々のヒトES細胞専用の培養液は、同時に、ヒトiPS細胞の専用培養液にもなりました。
また、創薬支援の研究開発は、ヒトES細胞を使って設立当初から実施していました。具体的には、ES細胞から、心筋細胞、神経細胞、肝細胞などの細胞を作製し、新薬のスクリーニングに応用するための技術開発です。その長年の研究が奏功し、ES細胞の技術をiPS細胞に応用することで、ヒトiPS細胞由来の心筋細胞、神経細胞、肝細胞の開発にいち早く成功しました。その結果、2009年、世界初のiPS細胞製品として「iPS細胞由来心筋細胞(製品名:ReproCardio)」を発売し、その後も、神経細胞、肝細胞の製品化に世界で初めて成功しました。
一方、我々がiPS細胞の事業化を目指している中、2007年以降、資金調達環境が急激に悪化し、バイオベンチャー氷河期が訪れ、さらに、2008年にはリーマンショックが追い打ちをかけました。リプロセルの資金調達も困難を極め、残り資金が2-3ヶ月となる危機もありましたが、一部の事業会社の協力的な投資により、iPS細胞の事業化を成功させることができました。その後、iPS細胞事業の成長とともに、2013年にJASDAQグロースに上場することができました。

3)株式上場から海外展開へ(2014-2018年)
株式上場は、我々のゴールではなく、新たな成長の始まりとなりました。上場後の資金調達により、真っ先に取り組んだのが、海外展開です。2014年に、Bioserve社(米国)、Stemgent社(米国)、Reinnervate社(英国)、2015年にBiopta社(英国)の4社を買収しました。そして、米国2社、英国2社をそれぞれ統合し、REPROCELL USA(米国)とREPROCELL EU(英国)を設立しました。海外展開は創業以来いだき続けていた基本方針でしたが、資金的な問題で、上場までは実行できませんでした。
医薬品及びバイオ産業の最大の市場は米国及び欧州であり、製薬企業やバイオベンチャーの規模や数も日本を圧倒しています。このため、日本だけをマーケットとした戦略では早晩行き詰まることは目に見えており、成長のためには海外展開が必須と考えていました。結果的に、これらの買収により、米国と欧州に事業基盤を作れたことが、その後の展開に大きな影響を与えることになりました。
また、地理的な拡大だけでなく、事業のバリューチェーンも大きく広げることができました。例えば、iPS細胞では、(1)元となる細胞の調達、(2)リプログラミングによるiPS細胞の作製、(3)各種目的細胞への分化誘導の3つの要素技術が必要となりますが、(1)はBioserve社の元来のコアビジネスの1つ、(2)のRNAリプログラミングはStemgent社の技術、(3)の分化誘導は元々リプロセルの技術からなっています。この3つの要素技術を組み合わせることで、iPS細胞の上流から下流までの一連のバリューチェーンが確立しました。このように、海外企業の買収により、地理的な拡大とバリューチェーンの構築が同時に実現することになりまました。
さらに、2014年には、新生銀行の子会社である新生企業投資社とコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)を設立し、海外の再生医療ベンチャーを中心に投資を行いました。投資先の中には、後に重要なビジネスパートナーとなる台湾のSteminent社やスペインのHistocell社が含まれており、CVCにより、更に海外展開を加速することができました。

4)再生医療事業の始まり(2018年-)
2003年当時、時期尚早と判断し一時Pendingしていた再生医療事業に本格的に取り組むと決めたのは2014年になります。創業から10年以上の歳月が流れていました。きっかけは、2014年に施行された再生医療新法です。この法律により、細胞加工製品が医薬品や医療機器と区別され、第三のカテゴリーとして「再生医療等製品」ができ、また、再生医療等製品に、新たに「条件及び期限付き承認制度」が導入され、日本は、世界で最も再生医療の産業化に適した環境になりました。
リプロセルの本来の強みはiPS細胞ですが、短期的に再生医療等製品の事業化を進めるため、まずは臨床試験で実績のあるSteminent社の再生医療製品Stemchymal(脂肪由来幹細胞)の導入を行い、日本で臨床試験と事業化を行うことにしました。対象疾患は、指定難病の1つである脊髄小脳変性症です。当時、台湾で臨床試験第1相が終了しており、症状の進行を抑制できるという良好な結果が得られていました。CVCを通じて知り合ったSteminent社と独占的な事業提携を行い、日本での事業化を目指すことになりました。
日本国内の第II相臨床試験は、2020年2月に始まり、2022年5月には全被験者の観察期間も含め全て完了しました。現在、データ解析・評価を実施しており、今後、リプロセルの再生医療等製品の第一号とすべく、承認申請を進めてまいります。
iPS細胞に関しては、20年間の研究開発の蓄積と、海外買収を通じて得たバリューチェーンも含め、様々な技術を包括的に保有していることが大きな強みになります。特に、iPS細胞を作製する工程である「リプログラミング」の技術が再生医療の事業化の重要な要素になってきます。リプログラミングは、山中教授の2006年の発表以降、世界中で様々な改良が進んできました。当社では遺伝子変異リスクを最小化し、外来遺伝子やウイルス残存リスクの最も低い最先端のRNAリプログラミング技術を保有しております。新型コロナワクチンのmRNAワクチンと類似の技術になります。本技術を利用することで、安全かつ臨床応用に最適なiPS細胞を作製することができます。
この技術を応用し、指定難病である筋萎縮性軸索硬化症(ALS)の治療を目的としたiPS細胞由来神経グリア細胞の研究開発に取り組んでおります。なお、本事業は、AMED公募事業「再生医療・遺伝子治療の産業化に向けた基盤技術開発事業」にも採択されております。また、この神経グリア細胞は、ALSだけでなく、各種の神経変性疾患にも適用可能であることから、将来的に、広く適用拡大を進めていく予定です。
また、iPS細胞の再生医療事業に関しては、自社開発の神経グリア細胞に加え、他社のiPS細胞再生医療製品の受託製造を行うCDMO事業(Contract Development Manufacturing Organization)としても展開していきます。リプロセルで、商業利用のインフォームドコンセントを取得したドナーから臨床グレードの細胞を採取し、RNAリプログラミング法により、遺伝子変異リスクを最小化した臨床用iPS細胞を作製します。この臨床用iPS細胞に関しては、世界最大規模の再生医療支援機構であるカリフォルニア州再生医療機構のIndustry Alliance Programの中で幅広く提供してまいります。さらに、BioBridge社(米国)及びHistocell社(スペイン)との提携を通じ、臨床用iPS細胞から、各種目的細胞への分化誘導及び再生医療等製品の製造まで一貫して行っていきます。Histocell社は前述のCVCを通じて知り合った会社になります。
このように、積極的な海外展開を通じで提携先を広げたことで、地理的にも技術的にも再生医療事業を飛躍させることができました。

5)今後の10年
これまでの20年を振り返ると、株式上場までの10年間は、ゼロから全てを立ち上げる本当の意味での創業期で、様々な生みの苦しみもありましたが、その成果が今のリプロセルを支えています。また、上場後の10年は、海外展開や再生医療事業のスタートなど、積極的な攻めの経営を行ってきました。上場時の2014年3月期は売上4.6億円でしたが、2022年3月期には22.3億円と約5倍に成長し、海外売上比率も45%となりました。また、再生医療に関しても、Stemchymal、iPS細胞神経グリア細胞、及びiPS細胞CDMO事業とリプロセルの主力事業として成長しております
今後の10年についても、基本的な方向性は変わらず、積極的な攻めの経営を行ってまいります。特に再生医療事業に注力し、多くの再生医療等製品を有する再生医療企業としての地位を確立してまいります。
また、再生医療以外にも、新型コロナウイルスPCR検査(日本)、パーソナルiPS(日本)、ガンのコンパニオン診断(インド)、人工知能による個別化医療(英国)等、様々な新規事業を立ち上げてきました。新規事業に対する取り組みも一層強化し、新たなヘルスケアビジネスを生み出していきます。

繰り返しになりますが、最後に、これまでの20年間を支えていただいたお客様、株主様、パートナーの皆様、役職員の皆様に心より御礼申し上げます。引き続き、ご支援を賜わりますよう、よろしくお願い申し上げます。

株式会社リプロセル
代表取締役社長
横山 周史

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