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プレスリリース
【矢野経済研究所プレスリリース】車載用リチウムイオン電池世界市場に関する調査を実施(2022年)〜2021年の世界出荷容量は前年比220.9%の371.1GWh、中国、欧州を中心に成長続く車載用LiB
株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、車載用リチウムイオン電池(Lithium-ion Battery、以下LiB)世界市場を調査し、製品セグメント別の動向、参入企業動向、将来展望を明らかにした。ここでは、世界の車載用LiB市場推移・予測について公表する。
1.市場概況
2021年における車載用LiB世界市場規模は容量ベースで、前年比220.9%の371.1GWhとなり、xEV(EV、PHEV、HEV)の市場成長と連動し車載用電池市場も拡大した。xEVタイプ別に見ると、HEVが4.7GWh(前年比168.2%)、PHEVが32.2GWh(同188.9%)、EVは334.1GWh(同225.6%)と推計する。
自動車市場全体ではここ数年、前年比マイナス推移が続いているものの、電動車(PHEV、EV)に関しては欧州、中国を中心に前年を上回る推移が2020年以降続く形となっている。EVに関してはTeslaが依然大きな存在感を示しており、欧州勢からはVWが「ID.3」に続き「ID.4」の販売台数を伸ばしている。また、中国では2020年に続き低容量EVの販売が増加傾向にある。
2.注目トピック〜欧州に続き、米国も電動化政策を推進〜
欧州では、自動車・小型商用車(Light Vans)のCO2排出量規制に関し、2025年及び2030年の次期規制値として、2021年規制(95g/km)の排出量に比べ37.5%削減した59.4g/kmとする規制案が発表されている。欧州委員会が2021年7月に発表した環境対策政策パッケージ「Fit for 55」では、上記の37.5%削減を55%削減とする改正案が出された他、2035年からのICE(内燃機関)車の新車販売禁止が打ち出される等、規制政策上の加速が見られる。一方、補助金政策では補助金廃止や上限額の減額が発表される等、見直しの動きが見られる。
中国は2020年に「省エネルギー・新エネルギー車技術ロードマップ2.0」を発表し、2035年を目途に新車販売の全てを環境対応車(50%をEVを柱とする新エネルギー車、残りの50%をM-HEV、代替燃料車含むHEV)とする方針が打ち出された。補助金政策では低容量EVの販売促進を目的とする「新エネルギー車下郷(農村普及)活動」が新たに実施されている。新エネルギー車補助金は2022年末での終了が予定されているが、新エネルギー車購入税免除政策に関して、中国政府が延長の検討に入ったとの報道が2022年6月に見られる。
米国では2021年12月にバイデン政権がトランプ政権下で緩和された燃費基準を見直し、2026年に55mpgを達成する新規制を発表した。2030年までに新車販売の50%を電動車(PHEV、EV、FCV)とする目標を定めた大統領令への署名が行われる等、再び電動車注力へのシフトの動きが見られる。また、補助金政策では税額控除額の引上げ案や台数上限の撤廃検討が進められている。
日本では2020年10月の「2050年カーボンニュートラル宣言」において、日本政府として初めて2050年までの二酸化炭素ネット排出量ゼロ(カーボンニュートラル)が表明され、2030年代半ばまでにICE車の新車販売ゼロを目指す方向で調整が行われている。クリーンエネルギー自動車・インフラ導入促進補助金として、2021年度補正予算375億円、2022年度予算155億円が措置されるなど、電動車(PHEV、EV、FCV他)の政策補助が手厚くなる動きがある。
3.将来展望
xEV市場を取り巻く市場環境を考慮し、成長率高めの「政策ベース予測」と成長率低めの「市場ベース予測」、2つのシナリオで成長予測を行った。
「政策ベース予測」は、世界的な環境規制強化の動きと各国政府の普及政策、それに対応した自動車メーカー各社の電動化シフトを背景に、自動車メーカー各社及び各国政府のxEV導入目標台数が概ね計画通りに実現されることを想定し、比較的高い成長率で推移するシナリオを読み込んでいる。
xEVの導入を妨げる諸問題(充電インフラ等)が解決され、専用プラットフォームでの量産規模の拡大等で、車両価格も既存のICE車に近づき、PHEV、EVの大衆化がある程度進む見通しとしている。政策ベース予測における車載用LiB世界市場規模は容量ベースで、2025年で1,228.4GWh、2030年には2,020.4GWhになると予測する。
一方、「市場ベース予測」では、使い勝手の良さや車両価格の求めやすさなどの消費者側のニーズを含め、xEV普及拡大に向けた各種課題解決にある程度の時間を要する設定とし、政策ベース予測に比べて成長率は低めで推移するシナリオとなっている。
政策主導で世界に先駆けて市場が立ち上がり始めた中国は、政策依存からの脱却に向けた兆しも一部で見られるが、欧州を含む世界全体で見た場合、PHEV、EVに関しては引き続き補助金政策が成長エンジンになっている側面があると考える。
部材コストの上昇による車載用LiB価格値上げや、半導体不足など部材調達の課題、ロシア・ウクライナ情勢に起因するエネルギー戦略の見直しの可能性、世界的な経済減退の懸念等、PHEV、EV市場成長の課題、不安要素も見受けられる状況となっており、当初の見込み程の成長には至らない可能性があると予測する。
補助金政策に関して中国では新エネルギー車の購入税免除政策に関して延長検討の動きが見られる。欧州でも補助金の縮小や打ち切りが見られ、かつての中国同様にxEV市場の成長鈍化に繋がり兼ねないと考える。市場ベース予測における車載用LiB世界市場規模は2025年で808.1GWh、2030年には1,163.0GWhになると予測する。
※掲載されている情報は、発表日現在の情報です。その後予告なしに変更されることがございますので、あらかじめご了承ください。
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3034
調査要綱
1.調査期間: 2021年12月〜2022年6月
2.調査対象: 自動車メーカー、車載用リチウムイオン電池メーカー(日本、欧州、中国、韓国)
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、ならびに文献調査併用
4.発刊日: 2022年6月30日
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株式会社矢野経済研究所 マーケティング本部 広報チーム
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