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プレスリリース

一般社団法人日本臨床カンナビノイド学会

健康な人におけるCBDオイルの安全性、薬物動態および薬力学的特性のレポートを仮訳を公開

(DreamNews) 2022年05月20日(金)15時30分配信 DreamNews

日本では、2020年4月以降、CBD製品の輸入手続きが明文化されてから、様々なCBDオイルが流通しています。
日本臨床カンナビノイド学会(事務局:東京都品川区)では、CBDオイルの薬物動態や安全性に関する臨床データのあるレポートを本日5月20日に、当学会サイトにて仮訳を公表しました。

健康な人におけるCBDオイル(スペクトラムイエローオイル)の安全性、薬物動態および薬力学的特性

要旨
薬物動態(PK)および薬力学(PD)データの発表がないため、医療目的で使用される大麻の適切な投与量に関する意思決定が限られている。この複数回投与試験では、スペクトラムイエローオイル(Spectrum Yellow oil)(20 mg/mL カンナビジオール(CBD)/<1 mg/mL △9-テトラヒドロカンナビノール(THC))の安全性、忍容性、PKおよびPDが評価された。

参加者(n = 43)は、1日当たり摂取量を
120 mg CBDおよび5.4 mg THC、
240 mg CBDおよび10.8 mg THC、
360 mg CBDおよび16.2 mg THC、
480 mg CBDおよび21.6 mg THC、
またはプラセボの5群のいずれかに無作為に割り付けられた。

試験薬は12時間ごとに7日間連続で投与された。治療出現有害事象(TEAE)、THC、CBDおよび代謝物の血漿および尿中濃度、ならびに自己報告による主観的な影響を収集した。

ほぼすべての有害事象(44/45)は軽度または中等度の重症度であり、重篤なものはなかった。TEAEの最も高い発生率(67%)は、2つの高用量治療群であった。

最も多くの有害事象(17/45)は、最初の治療日に発生した。定常状態の血漿中CBD濃度は7日目までに到達した。7日目のCBD曝露は用量比例を示した(AUC0-t slope = 1.03 [0.70, 1.36], Cmax slope = 0.92 [0.53, 1.31] )。ほとんどの血漿中THC濃度は定量限界以下であった。

1日目から7日目にかけて、プラセボと試験薬の有効成分との間に一貫した主観的効果の差は見られなかった。

スペクトラムイエローオイルで忍容性を改善するための慎重なアプローチは、最初の用量がCBD総量240mgおよびTHC総量10.8mg以下の分割投与で、忍容性に基づいて必要に応じて時間をかけて漸増させることかもしれない。



本学会は、大麻草およびカンナビノイドに関する専門学会ですが、国際的な薬物政策の影響が大きいテーマであるため、今後もこのような世界情勢についての有益な資料の和訳および紹介に努めていきます。

なお、本学会が提供するすべての翻訳情報の内容は、学会としての意見表明ではありません。


仮訳全文をご覧になりたい方はこちらのサイトへ
http://cannabis.kenkyuukai.jp/information/information_detail.asp?id=125675





図1 THCとCBDの植物体内の生合成経路

<用語集>

Δ9-THC:
デルタ9−テトラヒドロカンナビノール。THCとも表記される。144種類ある大麻草の独自成分カンナビノイドのうち、最も向精神作用のある成分。いわゆるマリファナの主成分として知られている。痛みの緩和、吐き気の抑制、けいれん抑制、食欲増進、アルツハイマー病への薬効があることが知られている。

CBD:
カンナビジオール。144種類ある大麻草の独自成分カンナビノイドのうち、向精神作用のない成分で、てんかんの他に、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、神経性疼痛、統合失調症、社会不安、抑うつ、抗がん、吐き気抑制、炎症性疾患、関節リウマチ、感染症、クローン病、心血管疾患、糖尿病合併症などの治療効果を有する可能性があると報告されている。2018年6月に行われたWHO/ECDD(依存性薬物専門家委員会)の批判的審査では、純粋なCBDは国際薬物規制の対象外であると勧告された。

内因性カンナビノイド系:
内因性カンナビノイド系(ECS)は、内因性リガンド(アナンダミド、2-AG等)、それらのカンナビノイド受容体(CB1,CB2等)、および内因性カンナビノイドの形成と分解を触媒する酵素(FAAH、MAGL等)を含む脂質の複雑なネットワークである。ECSは、学習と記憶、感情処理、睡眠、体温制御、痛みの制御、炎症と免疫応答、食欲など、私たちの最も重要な身体機能の調節および制御を担っている。

2018年米国農業法による「ヘンプ」の定義:
「ヘンプ」という用語は、「大麻(学名Cannabis sativa L.)」の植物および、その植物のいずれかの部位(種子と全ての派生物、抽出物、カンナビノイド、異性体、酸、塩、異性体の塩を含む)であり、成長しているか否かにかかわらず、デルタ−9−テトラヒドロカンナビノール(delta−9 tetrahydrocannabinol)の濃度が乾燥重量ベースで0.3%以下であるもの」を指す。

日本臨床カンナビノイド学会
2015年9月に設立し、学会編著「カンナビノドの科学」(築地書館)を同時に刊行した。同年12月末には、一般社団法人化し、それ以降、毎年、春の学術セミナーと秋の学術集会の年2回の学会を開催している。2016年からは、国際カンナビノイド医療学会; International Association for Cannabinoid Medicines (IACM)の正式な日本支部となっている。2021年4月段階で、正会員(医療従事者、研究者)101名、賛助法人会員14名、 賛助個人会員27名、合計142名を有する。http://cannabis.kenkyuukai.jp/

日本の大麻取締法
我が国における大麻は、昭和5年(1930年)に施行された旧麻薬取締規則において、印度大麻草が≪麻薬≫として規制されてきた。第二次世界大戦後、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)により印度大麻草と国内の大麻草は同一だと指摘を受け、一旦は、大麻草の栽培等の全面禁止が命じられた。ところが、当時の漁網や縄などの生活資材に必要不可欠であり、国内の農家を保護するために大麻取締法(1948年7月10日制定、法律第124号)を制定した。医師の取り扱う麻薬は、麻薬取締法(1948年7月10日制定、法律第123号)となり、農家が扱う大麻は、大麻取締法の管轄となった。その後、化学繊維の普及と生活様式の変化により、大麻繊維の需要が激減し、1950年代に3万人いた栽培者が1970年代に1000人まで激減した。欧米のヒッピー文化が流入し、マリファナ事犯が1970年代に1000人を超えると、それらを取り締まるための法律へと性格が変わった。つまり、戦後、70年間で農家保護のための法律から、マリファナ規制のための法律へと変貌した。2018年の時点で、全国作付面積11.2ha、大麻栽培者35名、大麻研究者401名。この法律では、大麻植物の花と葉が規制対象であり、茎(繊維)と種子は、取締の対象外である。栽培には、都道府県知事の免許が必要となるが、マリファナ事犯の増加傾向の中、新規の栽培免許はほとんど交付されていない。また、医療用大麻については、法律制定当初から医師が施用することも、患者が交付を受けることも両方で禁止されたままである。

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