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プレスリリース

一般社団法人日本臨床カンナビノイド学会

大麻成分、希少カンナビノイドのエビデンス(科学的根拠)の現在地

(DreamNews) 2022年01月11日(火)17時30分配信 DreamNews

〇主要なTHCとCBD以外のものは希少カンナビノイド

大麻草に含まれる120種類以上の生理活性物質の総称はカンナビノイドと呼ばれています。
その中で、THCとCBDは、最もよく知られており、研究が進んでいる主要なカンナビノイドです。
それ以外のCBN,CBC,CBG,CBDA,CBGA,THCA, CBDV,THCVなどは希少カンナビノイドと呼ばれています。

日本臨床カンナビノイド学会(事務局:東京都品川区)では、米国のサウスカロライナ州立大学など研究者がまとめた希少カンナビノイドの現時点(21年12月)でわかっているエビデンスの仮訳を22年1月9日にWEBサイトにて紹介しています。

〇希少カンナビノイドの要旨

大麻草(Cannabis sativa L.)の医療利用は、数千年前の古代中国やエジプトにまで遡ることができる。近年、大麻草は慢性的な痛みや吐き気を抑える効果が期待されているが、スケジュール1の規制物質に分類されているため、大麻草の科学的研究は制限されている。

大麻草の薬理作用を理解する上で大きなブレークスルーとなったのは、植物性カンナビノイドであるトランス-Δ9-テトラヒドロカンナビノール(Δ9-THC)とカンナビジオール(CBD)が分離され、その特徴が明らかになったことである。

その後、1990年代にカンナビノイドのCB1およびCB2受容体のクローニングが行われ、エンドカンナビノイド・システム(ECS)が発見された。大麻草では、主要な植物性カンナビノイドであるΔ9-THCとCBDに加えて、希少カンナビノイドやマイナーカンナビノイドと呼ばれる120種類以上のカンナビノイドが生産されている。

これらのカンナビノイドは、植物内で少量しか生産されず、Δ9-THCおよびCBDとともに前駆体カンナビノイドであるカンナビゲロール酸(CBGA)から生成される。

希少カンナビノイドの薬理作用に関する現在の知識は不完全であるが、研究によると、CB1およびCB2受容体、一過性受容体電位(TRP)チャネル、ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体(PPAR)、セロトニン5-HT1a受容体などの複数の標的に対してアゴニスト(作動薬)およびアンタゴニスト(拮抗薬)として作用することが明らかになっている。

その結果、複数の細胞シグナル伝達経路が活性化され、それらが相乗的に作用すると考えられることから、治療効果のメカニズムが解明されている。これらのカンナビノイドは、神経因性疼痛、神経変性疾患、てんかん、がん、皮膚疾患などの治療に有効であることが、初期の臨床報告で示唆されている。本レビューでは、希少カンナビノイドの分子薬理学に焦点を当て、これらの化合物の重要な治療用途を紹介する。

〇エビデンスを取り上げている希少カンナビノイド

目次
・はじめに
・植物性カンナビノイドの生合成
・エンドカンナビノイドシステム
カンナビノイドのCB1受容体およびCB2受容体
内因性カンナビノイド
・希少カンナビノイドの薬理学と治療学
・中性カンナビノイド
CBN(カンナビノール)
CBC(カンナビクロメン)
CBG(カンナビゲロール)
・カンナビノイド酸
CBDA(カンナビジオール酸)
CBGA(カンナビゲロール酸)
THCA(テトラヒドロカンナビノール酸)
・バリン系カンナビノイド
CBDV(カンナビジバリン)
THCV(テトラヒドロカンナビジバリン)

注:マイナーカンナビノイドという言い方もありますが、ここでは希少カンナビノイドで統一しています。

「希少カンナビノイド:生合成、分子薬理学、治療応用の可能性」の仮訳全文を読みたい方はこちらへ
http://cannabis.kenkyuukai.jp/information/information_detail.asp?id=121623





図 植物性カンナビノイドの治療への利用可能性

<用語集>

Δ9-THC:
デルタ9−テトラヒドロカンナビノール。THCとも表記される。144種類ある大麻草の独自成分カンナビノイドのうち、最も向精神作用のある成分。いわゆるマリファナの主成分として知られている。痛みの緩和、吐き気の抑制、けいれん抑制、食欲増進、アルツハイマー病への薬効があることが知られている。

CBD:
カンナビジオール。144種類ある大麻草の独自成分カンナビノイドのうち、向精神作用のない成分で、てんかんの他に、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、神経性疼痛、統合失調症、社会不安、抑うつ、抗がん、吐き気抑制、炎症性疾患、関節リウマチ、感染症、クローン病、心血管疾患、糖尿病合併症などの治療効果を有する可能性があると報告されている。2018年6月に行われたWHO/ECDD(依存性薬物専門家委員会)の批判的審査では、純粋なCBDは国際薬物規制の対象外であると勧告された。

日本臨床カンナビノイド学会
2015年9月に設立し、学会編著「カンナビノドの科学」(築地書館)を同時に刊行した。同年12月末には、一般社団法人化し、それ以降、毎年、春の学術セミナーと秋の学術集会の年2回の学会を開催している。2016年からは、国際カンナビノイド医療学会; International Association for Cannabinoid Medicines (IACM)の正式な日本支部となっている。2021年4月段階で、正会員(医療従事者、研究者)101名、賛助法人会員14名、 賛助個人会員27名、合計142名を有する。http://cannabis.kenkyuukai.jp/

日本の大麻取締法
我が国における大麻は、昭和5年(1930年)に施行された旧麻薬取締規則において、印度大麻草が≪麻薬≫として規制されてきた。第二次世界大戦後、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)により印度大麻草と国内の大麻草は同一だと指摘を受け、一旦は、大麻草の栽培等の全面禁止が命じられた。ところが、当時の漁網や縄などの生活資材に必要不可欠であり、国内の農家を保護するために大麻取締法(1948年7月10日制定、法律第124号)を制定した。医師の取り扱う麻薬は、麻薬取締法(1948年7月10日制定、法律第123号)となり、農家が扱う大麻は、大麻取締法の管轄となった。その後、化学繊維の普及と生活様式の変化により、大麻繊維の需要が激減し、1950年代に3万人いた栽培者が1970年代に1000人まで激減した。欧米のヒッピー文化が流入し、マリファナ事犯が1970年代に1000人を超えると、それらを取り締まるための法律へと性格が変わった。つまり、戦後、70年間で農家保護のための法律から、マリファナ規制のための法律へと変貌した。2018年の時点で、全国作付面積11.2ha、大麻栽培者35名、大麻研究者401名。この法律では、大麻植物の花と葉が規制対象であり、茎(繊維)と種子は、取締の対象外である。栽培には、都道府県知事の免許が必要となるが、マリファナ事犯の増加傾向の中、新規の栽培免許はほとんど交付されていない。また、医療用大麻については、法律制定当初から医師が施用することも、患者が交付を受けることも両方で禁止されたままである。

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