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プレスリリース

一般社団法人日本臨床カンナビノイド学会

カンナビノイド及び大麻に関連する研究者の学術論文投稿の支援額を5万円から上限20万円に増額

(DreamNews) 2021年12月10日(金)10時00分配信 DreamNews

日本臨床カンナビノイド学会(事務局:東京都品川区)は、今月12月1日からカンナビノイド成分及び大麻植物の医療利用に関する日本在住の研究者への研究支援を従来の上限5万円から20万円に拡充しました。

カンナビノイドとは、大麻植物に含まれる100種類以上の特異成分であり、1990年代に内因性カンナビノイド・システムの発見によって神経及び免疫等の体内調節に重要な役割があることが解明されつつあり、この分野での研究が急速に進展しています。例えば、米国立医学図書館(National Library of Medicine)が作成している医学文献データベース「PubMed(パブメド)」では、“カンナビノイド”で検索すると、2008年以降、毎年1000件以上の学術論文が出版されていることがわかります。

内因性カンナビノイドに関する基礎研究は、大麻由来のカンナビノイドの取り扱うための大麻研究者免許が不要なため、比較的自由に研究ができます。例えば、日本学術振興会が実施している競争的研究資金「科研費」では、“カンナビノイド”で検索すると、2010年以降、302件の研究課題が採択されており、味覚、ストレス、神経科学、疼痛、薬物依存などの領域で基礎研究に取り組まれていることがわかります。

一方、我が国では、1948年の大麻取締法による規制のため、海外で承認された大麻由来の医薬品輸入が禁止されており、ごく一部の薬学部を除いて、該当分野の研究があまり進展していませんでした。しかし、2021年1月から6月に実施された厚生労働省による「大麻等の薬物対策のあり方検討会」において、大麻由来の医薬品の合法化の方針(注1)が示され、2021年10月には厚生労働省研究班による大麻由来の医薬品の治験に向けた報告書が取りまとめられています(注2)。

さらに、大麻草に含まれるCBD(カンナビジオール)は、我が国において、2020年4月から厚生労働省関東厚生局のホームページで輸入手続きが明文化(注3)され、食品・化粧品・電子タバコなどの製品として流通しており、新しい機能性成分としていくつかの大学で研究が進められています。

本学会では、このような状況を鑑みて、日本在住の研究者の能力向上及び人材育成のために、一定の条件を満たす医学・薬学系の研究者(大学院生及び学部生を含む)であれば、研究活動の一部を支援強化することを決定しました。今年度からは、従来からの国際会議参加支援に加えて、学術論文投稿支援額がこれまでの上限5万円を20万円に拡充しました。研究支援のメニューは、次の3通りになります。

募集期間:2021年12月1日から2022年6月30日まで
コース : (1)国際会議発表者、(2)35歳以下の若手参加者、(3)論文投稿者
支援額 : (1)上限20万円、(2)上限10万円、(3)上限20万円
対象費用: (1)(2)渡航費、宿泊費、会議参加費、(3)英語論文の翻訳/校正/投稿料

詳しい応募条件は、日本臨床カンナビノイド学会のサイトを参照してください。
http://cannabis.kenkyuukai.jp/special/?id=27059

本支援がユニークなのは、(1)は自ら所属する専門学会の国際会議を認めている点であり、(2)の若手参加者には、国際会議発表を必須とせず、参加するだけでもよいというメニューであること、(3)は他の科研費などの支援金との重複や補完を認めていることです。研究者にとって非常に使い勝手がよい支援制度となっています。本制度に関心のある方、日本のカンナビノイドおよび大麻関連研究の進展に貢献したい方からのご応募をお待ちしています。

注1 大麻等の薬物対策のあり方検討会
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-syokuhin_436610_00005.html

注2 難治性てんかんにおけるカンナビノイド(大麻抽出成分)由来医薬品の治験に向けた課題把握および今後の方策に向けた研究(研究成果)
http://cannabis.kenkyuukai.jp/information/information_detail.asp?id=118353

注3 厚生労働省 CBD(カンナビジオール)を含有する製品について
https://www.ncd.mhlw.go.jp/cbd.html



図:医学文献データベース「PubMed」による大麻関連研究の論文数推移

<用語解説>

Δ9-THC:
デルタ9−テトラヒドロカンナビノール。THCとも表記される。144種類ある大麻草の独自成分カンナビノイドのうち、最も向精神作用のある成分。いわゆるマリファナの主成分として知られている。痛みの緩和、吐き気の抑制、けいれん抑制、食欲増進、アルツハイマー病への薬効があることが知られている。

CBD:
カンナビジオール。144種類ある大麻草の独自成分カンナビノイドのうち、向精神作用のない成分で、てんかんの他に、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、神経性疼痛、統合失調症、社会不安、抑うつ、抗がん、吐き気抑制、炎症性疾患、関節リウマチ、感染症、クローン病、心血管疾患、糖尿病合併症などの治療効果を有する可能性があると報告されている。2018年6月に行われたWHO/ECDD(依存性薬物専門家委員会)の批判的審査では、純粋なCBDは国際薬物規制の対象外であると勧告された。

ヘンプ(産業用大麻)
大麻草に含まれ、向精神作用のあるTHC濃度が1%未満の品種を栽培し、そこから衣類、食品、化粧品、建材、製紙、飼料、敷料、自動車用品などの産業用途に使用すること。嗜好用や医療用の大麻と区別するために、ヘンプ(Hemp)と呼ばれている。

日本臨床カンナビノイド学会
2015年9月に設立し、学会編著「カンナビノドの科学」(築地書館)を同時に刊行した。同年12月末には、一般社団法人化し、それ以降、毎年、春の学術セミナーと秋の学術集会の年2回の学会を開催している。2016年からは、国際カンナビノイド医療学会; International Association for Cannabinoid Medicines (IACM)の正式な日本支部となっている。2021年4月段階で、正会員(医療従事者、研究者)101名、賛助法人会員14名、 賛助個人会員27名、合計142名を有する。http://cannabis.kenkyuukai.jp/

日本の大麻取締法
我が国における大麻は、昭和5年(1930年)に施行された旧麻薬取締規則において、印度大麻草が≪麻薬≫として規制されてきた。第二次世界大戦後、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)により印度大麻草と国内の大麻草は同一だと指摘を受け、一旦は、大麻草の栽培等の全面禁止が命じられた。ところが、当時の漁網や縄などの生活資材に必要不可欠であり、国内の農家を保護するために大麻取締法(1948年7月10日制定、法律第124号)を制定した。医師の取り扱う麻薬は、麻薬取締法(1948年7月10日制定、法律第123号)となり、農家が扱う大麻は、大麻取締法の管轄となった。その後、化学繊維の普及と生活様式の変化により、大麻繊維の需要が激減し、1950年代に3万人いた栽培者が1970年代に1000人まで激減した。欧米のヒッピー文化が流入し、マリファナ事犯が1970年代に1000人を超えると、それらを取り締まるための法律へと性格が変わった。つまり、戦後、70年間で農家保護のための法律から、マリファナ規制のための法律へと変貌した。2018年の時点で、全国作付面積11.2ha、大麻栽培者35名、大麻研究者401名。この法律では、大麻植物の花と葉が規制対象であり、茎(繊維)と種子は、取締の対象外である。栽培には、都道府県知事の免許が必要となるが、マリファナ事犯の増加傾向の中、新規の栽培免許はほとんど交付されていない。また、医療用大麻については、法律制定当初から医師が施用することも、患者が交付を受けることも両方で禁止されたままである。

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