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プレスリリース

株式会社三菱総合研究所

ハイブリッド型雇用システムの構築に向けた研究成果を公表

(DreamNews) 2021年12月02日(木)11時30分配信 DreamNews

株式会社三菱総合研究所(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:森崎孝)は、「新たな雇用システム」のあり方について民間企業や学識経験者とともに研究を実施し、このたびレポートをまとめ12月2日に公表しました。日本企業の人事部による、経営戦略に沿った人材戦略の実現や、社員の自己実現やキャリア観に応じた活躍を可能とする新たな人事制度および雇用管理の仕組みづくりのきっかけになることを目指しています。



研究レポートをご希望の方は、下記フォームにアクセスのうえ必要事項をご入力ください。折り返しダウンロード用URLをご案内いたします。
https://mri-dgm.smktg.jp/public/application/add/1351?Public::Application::Userenquete_D__P__D_Enquete.attribute892=employment001_DL_001


1.背景
近年、「脱メンバーシップ型雇用」が叫ばれ、ジョブ型への注目が高まっている。しかし、いかなる雇用システムにも一長一短がある。これまでの日本の教育と就業の接続の仕方(新卒一括採用でOJT中心の人材育成等)や雇用慣行(長期勤続雇用等)との整合性を踏まえると、純粋なジョブ型が適切とも言い切れない。メンバーシップ型かジョブ型か、という2択の発想では、最適解を見いだすことは難しい。

そこで日本企業が、ジョブ型とメンバーシップ型の両方の長所を兼ね備えた「ハイブリッド型」の雇用システム(人事制度等)を構築する際のヒントを提供する目的で、本研究を行った。


2.「ハイブリッド型」雇用システムの構築の考え方
「職務と能力の関係性」と「会社と社員の関係性」をベースに、四つのワーク・ステージに社員を位置付け、6つの人材タイプ別に各ワーク・ステージに適した雇用システムを組み合わせて運用。社員のスキルの底上げを支援し、ワーク・ステージ間の移行を図り、会社の戦力アップと社員と対等な関係を築く、「ハイブリッド型」雇用システム」を構築する。

「ハイブリッド型」雇用システムとは?
通常、一企業の雇用システム(人材配置・処遇や能力開発、組織開発等の仕組み)は単一構造であるが、このシステムはメンバーシップ型、ジョブ型、中間型(両者の側面を併せ持つ型)を併存させる点に特徴がある。人材タイプ別の群管理による包摂的なタレントマネジメント(FITM:Fully Inclusive Talent Management)を行うことで、社員の持つキャリア観の多様性を踏まえた人的資源管理を実現する。


構築および運用にかかる基本的な考え方は以下の通りである。実際には、各社の実情(企業規模、業種・業態、ビジネスモデル、社員の属性傾向等)に照らしながら、具体的な実施方法や内容を選択し、組み立てていく必要がある。

構築の手順
まず、自社の経営方針とそれに基づく人材ビジョンを踏まえ、「理想」とする人材ポートフォリオ【注1】をワーク・ステージごとに設定する。次に、社員の現時点の意向に基づく人材タイプを把握する。これらの情報を元に、社員のワーク・ステージをどのように移行させるかについて、対応方針を決める。

四つのワーク・ステージの設定
(1)縦軸に職務と能力の関係軸、横軸に会社と個人の関係軸を設定
(2)2軸を基に、社員のキャリア観および会社との心理的な関係性を示す「ワーク・ステージ」を四象限に位置付ける
(3)メンバーシップ型とジョブ型を各象限に位置付ける。また、どちらも該当しない第4象限には「中間型」の雇用システムを位置づける

ワーク・ステージによる複数の雇用システムの関係づけ



出所:三菱総合研究所

六つの人材タイプ別のワーク・ステージにより、多様な社員像を明確化
各ステージで活躍する社員の特徴や傾向は多様である。今回実施した全国3,000人の就業者(正社員)を対象としたキャリア観や企業と社員の関係意識に関するアンケートデータを用いて、クラスター分析を実施し、以下の六つの人材タイプを設定。人材タイプ別に、エンゲージメント【注2】やパフォーマンス(業績や成果)の伸長に効果のある仕組み・施策を講じたワーク・ステージを用意することで、社員の価値観の多様性を踏まえた人材マネジメントが可能になり、エンゲージメントとパフォーマンスの向上が期待される。

[人材タイプ1]競争重視エリート型(会社一体ステージ)
[人材タイプ2]仕事成長自律型(仕事成長ステージ)
[人材タイプ3]仕事重視ゼネラリスト型(仕事成長ステージ)
[人材タイプ4]キャリア自律型(仕事成長ステージ)
[人材タイプ5]WLB【注3】重視単独型(仕事成長ステージ)
[人材タイプ6]WLB重視受動適応型(仕事成長ステージもしくは仕事自立ステージ)


運用の方法
次の (1) 〜 (3) の手順に沿って、システムを運用する。
(1)今後、特に社員が活躍するステージとして期待される「仕事成長ステージ」と「仕事自立ステージ」に対応した環境整備(能力開発や組織開発など)の充実を図る
(2)包摂的タレントマネジメント【注4】を活用して、両ステージにより多くの社員を移行させる(人材マネジメントする)
(3)さらに社員のエンプロイアビリティ【注5】を支援。結果的にエンゲージメントの強化、生産性のアップ、会社と社員が対等の関係になることでの雇用保障に関する企業の役割変化が見込まれる

注1:人材ポートフォリオとは、企業が経営戦略や事業戦略の実現に必要な人材タイプを明確化した上で、それらのタイプの人材が、どのタイミングで、どの程度必要になるかを予測し分析したものを指す。
注2:エンゲージメントとは、仕事に対するポジティブで充実した心理状態を意味する。
注3:ワーク・ライフ・バランス(work-life balance)の略。
注4:「包摂的タレントマネジメント」とは、一人ひとりの社員の能力を高めて活躍を促すことを志向する、社員全員を対象としたタレントマネジメントの考え方。なお、タレントマネジメントとは、「タレント(従業員)」の持っているスキルや能力を最大限活かすための、戦略的な人材配置や育成等を行う人事マネジメントのことを指す。
注5:エンプロイアビリティとは、「Employ:雇用する」と「Ability:能力」を組み合わせた言葉で、「雇用される能力」を指す概念。


※ワーク・ステージ間の関係性について(イメージ例)
下図は、仕事成長ステージ、仕事自立ステージ、会社一体ステージの受け皿となる等級制度のイメージである。仕事成長ステージと仕事自立ステージ、さらには会社一体ステージに対応するのに、複数の仕組みが必要になるわけではない。仕事成長ステージの環境整備によって、会社一体ステージや仕事自立ステージ(さらにはワーク・ステージ間の移動)にも対応できる。また、仕事自立ステージは外部労働市場との比較が容易であるため、このワーク・ステージを介して、外部への転出や独立、転入が増え、人材の流動性が高まっていくことが想定される。

仕事成長ステージ・仕事自立ステージ・会社一体ステージと外部労働市場との関係



出所:三菱総合研究所

※本研究は研究会形式で実施した。概要は以下の通り。
設置目的:先進的な企業における人的資源管理施策の実態や課題、および企業の実務者や学識経験者からの実務的・専門的視点などを踏まえて、新たな雇用のあり方を構想・検討し、本研究成果をとりまとめる
委員構成:学識経験者2名(専門は人的資源管理論、タレントマネジメント)、企業の人事担当者4名程度。その他、経済産業省よりオブザーバー参加あり
開催時期・開催回数:2021年3月〜9月の間に全6回開催

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