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プレスリリース

IEEEが提言を発表 宇宙ベース太陽光発電は未来のエネルギー源になりうるのか?

(@Press) 2023年06月27日(火)13時00分配信 @Press

IEEE(アイ・トリプルイー)は世界各国の技術専門家が会員として参加しており、さまざまな提言やイベントなどを通じ科学技術の進化へ貢献しています。

宇宙ベース太陽光発電は、実用化が間近に迫っているのか、あるいは無駄にコストのかかる取り組みに過ぎないのでしょうか。しかし、このアイデアは多くの技術者を魅了し、壮大な考えを巡らすテーマとなっています。


●宇宙空間はいつでも晴れています。それならば地球のエネルギー源になるのでは?
SFではお馴染みの宇宙ベース太陽電池アレイは、数十年にわたって技術者や研究者の想像力を掻き立ててきました。このアイデアには、軌道上に配置された広大な太陽電池パネルのアレイがエネルギーを集め、必要な場所へビーム送電する技術が含まれています。

SFの枠を超えて、宇宙ベース太陽光発電(SBSP)の実用化に向けた取り組みが現実のものとなっているのです。
IEEE終身上級会員のラウル・コルチャー氏(Raul Colcher)は次のように述べています。「この技術に関して非常にアグレッシブな研究プログラムがあるのは、米国、中国、日本、ロシア、韓国、インドなどの諸国です。」


●明るい未来なのか
2023年初頭には、カリフォルニア工科大学の宇宙太陽光発電プロジェクト(SSPP)が軌道上のソーラーファームで使用できるプロトタイプコンポーネントパッケージの稼働を開始しました。中国では、早ければ2030年代に商用発電能力を備えるステーションを建設する計画が策定されています。

米国では、エネルギー価格が高騰していた70年を通じて、軌道上の太陽電池に対する研究が行われてきましたが、資金の問題に技術面の課題が加わったことで、2000年初頭にこの取り組みをほぼ断念しました。その後、2つのトレンドが新たな関心を呼びました。1つ目は、2050年までに二酸化炭素排出量を実質ゼロにする動きです。2つ目は、将来実現すると思われる月面基地です。SBSPは、特に重要な月面基地の初期段階において、車両や構造物に動力源を提供できるでしょう。

SBSPの推進派は、実用化にはまだ数十年かかるかもしれないが、いくつかのメリットがあると主張しています。実現すれば、地上では不可能な夜間や曇りの日でも太陽光発電が利用できるようになります。太陽放射の約30%は地上に届いていません。さらに、太陽光発電の規模も圧倒的です。宇宙空間の太陽光は無尽蔵にあり、地球上の太陽光発電の規模とは比較になりません。

IEEEのシニアメンバーであるインタープリート・カウル氏(Inderpreet Kaur)は次のように述べています。「宇宙空間では、太陽はいつも輝いており、地軸の傾きが集電を妨げることもなく、太陽光を弱める大気もありません。だからこそ、宇宙に設置するソーラーパネルの可能性に大いに魅力を感じるのです。」


●地上まで届けられるのか?
推進反対派は、このようなプロジェクトを実現するには、克服しなければならない膨大な数の技術的障害があると指摘しています。宇宙で太陽電池アレイを組み立てる技術や、地球にエネルギーを送る技術、さらには費用対効果とエネルギー効率の良い方法で資材を軌道に打ち上げる技術などです。

IEEEフェローのパナギオティス・シオトラス氏(Panagiotis Tsiotras)は次のように述べています。「宇宙ベース太陽電池アレイのアイデアは昔からありましたが、技術的な課題は依然として残されたままです。現時点では、電力効率や、このような大規模な太陽電池アレイの製造と組み立てに関しては、経済性が成り立たないと考えています。SBSPを推進させるには、資材の面だけでなく経済性の面でも進化させる必要が有ります。」


●想像力に火をつける
それでもプロトタイプの開発は進められており、多くの注目を集めています。カリフォルニア工科大学の実験の1つは、DOLCE(Deployable on-Orbit ultraLight Composite Experiment:軌道上展開型超軽量複合材料実験機)と呼ばれ、自己組み立て型太陽電池アレイのモジュール式コンポーネントを研究しています。

研究者らは、電力を地球に送るために、太陽光をマイクロ波またはレーザーのいずれかの形態に変換することに注力しています。ほとんどのマイクロ波の設計では、大容量の送電を想定していることから、地上に数キロメートルに及ぶ受信機が必要になります。一方、レーザー技術では1〜10メガワット程度の小規模かつ集中的な適用が可能です。しかし、そのためにはマイクロ波ベースのシステムよりもはるかに多くの衛星が必要になります。レーザーベースシステムは、たとえば地球上の遠隔地で大量の電力が必要な採掘作業などに役立つ可能性があります。

宇宙ベース太陽光発電の実用化はすぐそこまで来ているのか、あるいは無駄にコストのかかる取り組みに過ぎないのか、その答えは尋ねる人によって異なります。しかし、このアイデアは世界中の技術者を魅了してやみません。そして、このプロジェクトの研究は、数十年後には予想もしない結果をもたらすかもしれません。

2023年のIEEE次期会長で終身フェローのトーマス・コフリン博士(Thomas Coughlin)は次のように述べています。「宇宙ベース太陽光発電は実現可能です。宇宙ベース太陽電池アレイは、宇宙空間での産業の発展や資源開発を支える電力として利用されることになると確信しています。それにより、地球に住む人々にとって恩恵がもたらされることでしょう。」


■IEEEについて
IEEEは、世界最大の技術専門家の組織であり、人類に恩恵をもたらす技術の進展に貢献しています。160カ国、40万人以上のエンジニアや技術専門会の会員を擁する非営利団体で、論文誌の発行、国際会議の開催、技術標準化などを行うとともに、諸活動を通じて世界中の工学やその他専門技術職のための信用性の高い「声」として役立っています。
IEEEは、電機・電子工学およびコンピューターサイエンス分野における世界の文献の30%を出版、2,000以上の現行標準を策定し、年間1,800を超える国際会議を開催しています。

詳しくは http://www.ieee.org をご覧ください。

プレスリリース提供元:@Press

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