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新型コロナウイルス(COVID-19)治療薬候補化合物リストを発表:世界最高水準のコンピュータシミュレーションによる医薬品分子設計方法論で成果

(@Press) 2022年09月22日(木)11時30分配信 @Press

分子機能研究所(埼玉県三郷市)の辻一徳(ツジ モトノリ)は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の病原ウイルスである新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に効果が期待される既存医薬品249品目と生物活性化合物184品目を、生物活性化合物データベース約200万化合物から見い出し、その成果が2022年9月17日、International Journal of Molecular Sciences誌(インパクトファクター:6.208)に受理され*、オープンアクセスでオンライン出版することが決まりました。
発表した既存医薬品リストには、レムデシビル(商品名:ベクルリー)、ファビピラビル(商品名:アビガン)、ペンシクロビル(商品名:ファムビル)などの抗ウイルス薬も実際の実験結果を再現する形で含まれており、確度の極めて高い予測結果となり、加えて本研究では、世界最高水準のコンピュータシミュレーションによる高効果で安全性の高い治療薬デザインに関する最先端の方法論を展開しており、COVID-19特効薬に結び付く成果として注目されます。

*COVID-19治療薬候補化合物についてはインシリコ創薬による予測結果だけでは学術論文として受理されなくなっています。実際にウイルスへの効果を確かめなければ論文投稿の段階で査読されることなく拒絶されますが、今回、インシリコ創薬における医薬品分子設計方法論の新規性と進歩性が評価され、受理されました。


【背景】
新型コロナウイルス(重症急性呼吸器症候群-2(SARS-CoV-2))はCOVID-19の病原ウイルスとして同定されました。SARS-CoV-2はその強力な飛沫、接触、あるいは空気感染力により世界中に蔓延し、パンデミックを引き起こしました。国内では、ワクチン接種が進んでいますが、現在は最大感染者数を記録している第7波にあると推定され、変異ウイルスの蔓延もあり、第8波が懸念されています。COVID-19に対して特例的に承認されている医薬品はいくつかありますが、いずれも効果が顕著ではなく、安全性にも問題点を抱えており、安全で経口投与可能な国産の特効薬が強く待ち望まれています。


【成果】
今回の研究では、欧州バイオインフォマティクス研究所(ChEMBL)が管理運営する生物活性化合物データベース(約200万化合物、内13,000個以上の前臨床、臨床、承認薬を含む)を対象にSARS-CoV-2のRNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRp)の活性中心に特異的に結合して阻害する既存医薬品をコンピュータ上でドッキングシミュレーションし、阻害剤候補となる医薬品をバーチャルスクリーニング(インシリコスクリーニング)技術で249品目まで絞り込みました。
絞り込んだ医薬品の中には、レムデシビル(商品名:ベクルリー)、ファビピラビル(商品名:アビガン)、ペンシクロビル(商品名:ファムビル)(論文投稿後に実際に結合することが報告され、予測に成功しました)など、すでにSARS-CoV-2のRdRpとRNAの複合体構造(RdRp complex:dsRNA)に「不可逆的」に結合してウイルス複製・増殖を阻害する抗ウイルス薬も実際の実験で分かっている複合体構造を再現する形で含まれていました。また、得られた阻害剤候補化合物には医薬品として毒性試験、薬物動態試験や臨床試験は行われていないものの、生物活性を有する化合物が多く見つかっており、このうち、特に184品目の既知生物活性化合物については、RdRp complex:dsRNAと強く結合して阻害する可能性が高いと予測されました。
これら184品目の生物活性化合物は標的とする疾患は異なるものの、構造的特徴が類似しており、メジャーグルーブバインダーやマイナーグルーブバインダーと呼ばれるウイルスRNAの溝にはまり込む仕組みで、複製や転写を「可逆的」に阻害できる阻害剤として作用することが分かりました。
加えて本研究では、代表的な生物活性化合物について、世界最高水準のコンピュータシミュレーションを駆使し、生体高分子システム全体を量子化学計算と呼ばれる手法で解析し、結合自由エネルギーと呼ばれる阻害剤が生体高分子とどれくらい強く結合できるかの指標となる数値を予測するとともに、今回の阻害剤候補化合物がRdRp complex:dsRNAのどの部分とどの程度の強さで認識されることが重要か、言い換えれば、生物活性化合物をどのようにデザインすればより有効な医薬品になり得るかの解析にも成功しました。
見い出された、249品目の既存医薬品は様々な疾患に対する治療薬であり、ドラッグリポジショニングの観点から早期に適用拡大できる可能性があります。これらの既存医薬品や生物活性化合物にCOVID-19治療薬としての効果が認められれば、新薬開発するよりも、迅速な開発が期待できます。


【成果の応用】
分子機能研究所の辻一徳は、独自に研究開発した構造ベースインシリコ創薬システム(「Homology Modeling Professional for HyperChem(HMHC)」及び「Docking Study with HyperChem(DSHC)」)を用いて、2020年3月に新型コロナウイルス治療薬に関する世界初の大規模仮想スクリーニング(インシリコスクリーニング)を実施し、国内最初の抗新型コロナウイルス治療薬医薬品候補リストを欧米の学術誌に論文発表しています。加えて、オーラルケア製品に含まれる成分にCOVID-19感染予防効果が期待できることを学術論文で発表しており、今回の研究成果でも辻一徳が研究開発したインシリコ創薬基盤技術が活かされました。さらに、未発表ではありますが、既に実際に新型コロナウイルス複製抑制活性を示す化合物も見い出しており、今後の研究成果が期待されます。
一刻も早く特効薬を探し出すため、広く国内外の団体または個人からの研究支援と援助を求めていきます。


【用語の説明】
オープンアクセス:投稿者が出版費用と購読費用を全額負担することで全世界の誰もが自由に無料で閲覧できる論文出版形式。

査読審査:学術論文は投稿者とは無関係な複数人の専門分野の研究者が論文審査を行い、受理か拒絶かが決定されます。ピアレビューと呼ばれる手法で、査読者の利権が絡むため公平性を欠くことも多く、問題点も多いが、正式な学術論文発表のためのほぼ唯一の方法。複数の学術誌に同時に投稿する(査読者を変更する)二重投稿などが厳しく禁止されており、また、無査読のまま公開した場合は学術論文として認められなくなるため、査読者の対応によっては、学術論文として受理出版されるまでに数年かかることも少なくありません。

インシリコ創薬:コンピュータ上で医薬品の創生に関わる学問分野。

RNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRp):ウイルスRNA複製に関わる酵素(タンパク質)で、触媒コアユニットであるnsp12とアクセサリーサブユニットであるnsp7及び2分子のnsp8から成る巨大タンパク質複合体システム。

RdRp complex:dsRNA:RdRpに二重鎖RNAが結合した巨大生体高分子複合体システム。

活性中心:酵素機能を担う中心部分で、RdRpではウイルスRNA複製が起こる中心部分。

阻害剤:酵素機能を失活させる医薬品などの化学物質(化合物)。

不可逆的・可逆的:現在、COVID-19に対して特例的に承認されている医薬品のほとんどは生体高分子と共有結合と呼ばれる結合を形成して阻害活性を示す。これを不可逆的阻害剤と呼び、様々な副作用や毒性の原因となり、医薬品としては望ましくなく、疾患による重症度や患者のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)を考慮して特例的に使用される。また、反応性が高いことから経口薬にはなりにくく、保存方法や使用方法などで制限も多い。一方、可逆的阻害剤は生体高分子と共有結合することなく阻害活性を示し、効果を示したのちに速やかに代謝・分解されるため、副作用や毒性の原因となりにくく、医薬品として好ましい物性を示す場合が多い。

構造ベース:タンパク質分子や核酸分子などの生体高分子の立体構造情報を利用する方法。

ドッキングシミュレーション:コンピュータ上で医薬品などをタンパク質などの生体高分子と結合させ、エネルギー計算に基づいて阻害剤などの医薬品になりうるかを予測する技術。

インシリコスクリーニング、バーチャル(仮想)スクリーニング:数万化合物以上を一気にドッキングシミュレーションし、エネルギー計算に基づいて医薬品候補化合物を絞り込む技術。

ドラッグリポジショニング:ある疾患の治療薬に別の疾患に対する治療効果が認められ、代用する方法で、すでに医薬品として承認されているため、臨床試験が簡略化でき、短期間のうちに適用拡大して、目的疾患の医薬品として利用することを可能とする方法。

量子化学計算:インシリコ創薬は計算量が膨大なため、分子力学計算と呼ばれる古典力学によって実施されている。これに対して、量子化学計算はシュレディンガーの波動方程式を厳密に計算する量子力学計算であり、その膨大な計算量のため、生体高分子を取り扱うインシリコ創薬で利用されることは現在のところ少なく、今後の技術革新によって主流の方法になると予想される。


【図の説明】
SARS-CoV-2のRdRpはウイルスRNAを鋳型としてRNA自己複製するが、阻害剤がRNAの溝にはまり込み、ウイルスRNA自己複製に必要なヌクレオシド三リン酸が活性部位に結合してRNAが伸長するのを阻害する。

画像1: https://www.atpress.ne.jp/releases/327063/LL_img_327063_1.jpg
図1. COVID-19治療薬候補化合物のRdRp阻害機構

【関連リンク】
分子機能研究所:
https://www.molfunction.com/jp/

International Journal of Molecular Sciences誌:
https://www.mdpi.com/1422-0067/23/19/11009/htm

分子機能研究所Facebook:
https://www.facebook.com/MolecularFunction/

辻一徳URL:
https://www.molfunction.com/tsuji_jp/

辻一徳YouTube:
https://www.youtube.com/channel/UCjZxRYJVvE-Nus45s0I82GA/videos?view=0&sort=dd&shelf_id=0

ドラッグリポジショニングの観点に基づく世界初大規模仮想スクリーニングによる抗新型コロナウイルス治療薬医薬品候補リストに関する資料:
https://febs.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/2211-5463.12875
https://www.dreamnews.jp/press/0000214649/

口腔内における新型コロナウイルスの主要感染経路阻害に関する資料:
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0257705
https://www.dreamnews.jp/press/0000245154/
https://www.atpress.ne.jp/news/278898


【本件に関するお問い合わせ先】
分子機能研究所(Institute of Molecular Function)
〒341-0037 埼玉県三郷市高州2-105-14
TEL : 048-956-6985
FAX : 048-956-6985
E-Mail: support@molfunction.com

プレスリリース提供元:@Press

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