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ワールド・ファミリー バイリンガル サイエンス研究所

バイリンガリズムは学習障害児にとってもメリットがある

(@Press) 2022年09月22日(木)11時30分配信 @Press

「ワールド・ファミリー バイリンガル サイエンス研究所」(※以下、IBS)<東京都新宿区 所長:大井静雄>ではグローバル化社会における幼児期からの英語教育の有効性や重要性に関する情報を定期的に発信しています。
今回は、バイリンガル児の言語発達、発達障害児のバイリンガリズムについて研究されている、イタリア、ウルビーノ・カルロ・ボ大学のMirta Vernice(ミルタ・ベルニーチェ)教授にインタビューを行い、記事として公開しました。今回のインタビューは、第二言語を学んでいる小さなお子さんや発達障害のあるお子さんについて親御さんや先生が抱えるかもしれない疑問にお答えできる内容になっています。

■ <インタビューサマリー>
・ヨーロッパでは、0〜6歳の子どものマルチリンガリズムを支援する研究プロジェクトが進んでいる。
・乳幼児期からほかの言語を学ぶことに対する教育関係者や保護者の誤解を解くためには、一人ひとりと対話することが有効。
・子どもが外国語を学ぶときには、「0〜3歳」「4〜6歳」それぞれの時期に重点的に伸ばすべき能力を意識する必要があり、研究結果に基づいたアクティビティは効果的であることがわかった。
・バイリンガルであることが、ディスクレシア(発達性読み書き障害)の結果として生じる特定の認知機能の低下を防ぐことが明らかになった。
・子どもをバイリンガルに育てると、言語的な観点だけではなく、認知的な観点からもメリットを得られる。

■ ヨーロッパ各地の幼稚園におけるマルチリンガル教育を支援
Vernice教授は、EU主催の「EDUGATE プロジェクト」に参加し、0〜6歳の子どもに適したマルチリンガル(多言語使用)教育について研究・促進する活動をしています。大学のあるウルビーノという地域は、モノリンガルとして育つ人が多く、多くの親が外国語(特に英語)を子どもに学ばせたいと思う親御さんたちが多いとのこと。多言語社会と言われているヨーロッパであっても、日本の状況と似ている地域があることがわかりました。

「EDUGATE プロジェクト」の目的は主に二つ。一つは、ヨーロッパ各地の幼稚園の先生や親御さんが「バイリンガリズムに対してどのような意識をもっているか」を明らかにするための調査。二つめは、小さいころから第二言語に触れることの効果について、研究結果に基づく情報を提供すること。 そして、研究結果に基づいた教材やアクティビティを開発して、実際に幼稚園で使ってもらったそうです。

■ 乳幼児期の英語学習に対する誤解を解くためには、対話が効果的
幼稚園の先生のアンケート回答の中には、「まだ小さい時期に、どうしてわざわざほかの言語に触れさせる必要があるのか?」といったびっくりするような回答もあったそうです。「子どもは第二言語に触れ始める前に第一言語が完全に発達している必要はない、ということを理解してもらうのは、一番難しかったですね。子どもたちが複数の言語で混乱したり、ことばの発達が遅れたりするのではないか、という点は、先生たちが一番心配していることの一つだったんです。」とVernice教授は言います。

そこで、Vernice教授たちは、科学的知見を説明する前に、先生たちが質問したり経験談を話したりできる機会を設定。すると、バイリンガルの子どもに関して何か苦労した経験があると、そのたった一度の経験がバイリンガリズムに対するネガティブなイメージを定着させてしまうことがわかりました。先生たちの個人的な質問に耳を傾けて答えることが、バイリンガリズムに対する誤解について伝える上で一番効果的だったそうです。

■ 子どもの言語が発達していくプロセスを考慮したアクティビティは効果的
EDUGATE プロジェクトでは、科学的文献で発表されている情報を幼稚園の現場で実践できるようなアクティビティに落とし込んで教材を開発したそうです。多くのアクティビティが研究の実験で使われたものが基になっています。Vernice教授によると「実験で効果的だったアクティビティが、実際の教室でもうまくいくかを確かめます。また、子どもの第一言語に関係なく、あらゆる国での実施や組み入れが可能な内容に開発をしました。このアクティビティは、外国語(英語など)のさまざまな要素を習得させるうえで有効であることがわかりました」とのことです。

0〜3歳と4〜6歳の子どもでは言語発達面で大きな違いがあり、「3歳までは『理解』に重点を置いた活動 (ことばの音声やリズムを聞かせる)、4歳以降は『産出』に重点を置いた活動(語彙や構文を口に出させる)を行わなければなりません」と言います。言語に含まれる一つひとつの音を意識する、聞き分ける、リピートする、というような能力が十分になければ、その後、読み書きを学ぶときに苦労する傾向にあるそうです。

さらに、幼児がどのように新しいことばを獲得していくか、ということを考えると、「完全な英文を文脈や状況・場面とともに提示して、子どもたちが単語に気づき、その意味を推測できるように手助けすることが重要」とVernice教授。インタビューではVernice教授たちが開発したアクティビティの事例を、実際に使用するイラストなどとともに紹介してくださいました。(アクティビティの詳しい内容は本文をご覧ください)

■ 学習障害のある子どもが外国語や第二言語を学ぶメリット
Vernice教授は、モノリンガルだけではなくバイリンガルの子どもも対象としたディスレクシア(発達性読み書き障害)の診断方法について研究されています。そこで、学習障害のある子どもは外国語や第二言語の学習からどのような影響を受けるのか、という点についてお話をうかがいました。「私たちは、言語聴覚士のみなさんと『戦って』います。なぜなら、子どもが学習障害や言語障害、注意欠陥障害などの診断を受けた親御さんに、ほかの言語に触れさせるのをすぐにやめるようにアドバイスする方々がまだいるからです。」とVernice教授。

バイリンガルは、状況に応じて一方の言語を抑制して、もう一方の言語を選択する、という作業を脳が常に行うことにより、脳の実行機能(※1)が高まることがわかっています。
そこで、イタリアの小学生を対象に共同研究を行ったところ、「ディスレクシアのあるバイリンガルの子どもは、ディスレクシアのあるモノリンガルの子どもよりも、実行機能を調べるテストではるかに良い成績だった」そうです。さらに、バイリンガリズムがディスレクシアの子どもたちにとって認知的な負担になるどころか、認知機能を強化し、子どもを障害による困難から守る(保護因子になる)ことも明らかになりました。
「子どもをバイリンガルに育てると、二つの言語を知っているという言語的な観点だけではなく、認知的な観点からもメリットを得られる、と言えるかもしれません」、「ですから、特に学習や発達面で困難を抱える子どもの親御さんには、第二言語に触れる環境を継続することをお勧めします」とVernice教授は言います。

Vernice教授のインタビューからは、イタリアの人々も、日本人と同じように「子どもに英語を学ばせたい」と考えている一方で、「早くから英語を学ぶことで何か悪影響があるのではないか」という心配しているものの、何度も議論を交わすことで科学的な知見を理解してもらえることがわかりました。
また、Vernice教授の発見は、「言語をもう一つ学ぶことは、学習障害や発達障害のある子どもにとって負担がかかる」という一般的な認識に反し、発達段階にある子どもはバイリンガリズムによって認知機能が強化される、ということを裏付けるものです。

(※1)あらゆる認知機能(情報の知覚や記憶、推理、判断など)の働きをコントロールしながら複雑な状況下で目的を実行することを可能にする高次脳機能の一つ。目標の設定、達成方法の考案、必要な作業の維持、状況への柔軟性、効果的な戦略の選択などに関わる(福井, 2010)。

詳しい内容はバイリンガル サイエンス研究所で公開中の下記記事をご覧ください。

■ ■イタリア、ウルビーノ・カルロ・ボ大学のMirtaVernice氏へのインタビュー
前編: https://bilingualscience.com/english/2022092001/
後編: https://bilingualscience.com/english/2022092101/


■ワールド・ファミリーバイリンガル サイエンス研究所
(World Family's Institute of Bilingual Science)
事業内容:教育に関する研究機関(https://bilingualscience.com/
所 長:大井静雄(東京慈恵医科大学脳神経外科教授/医学博士)
所 在 地:〒160-0023 東京都新宿区西新宿4-15-7
パシフィックマークス新宿パークサイド1階
設 立:2016年10 月
URL:https://bilingualscience.com/

プレスリリース提供元:@Press

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