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ワールド・ファミリー バイリンガル サイエンス研究所

公立小学校でイマージョン教育に取り組む意義「グローカル」視点の重要性

(@Press) 2022年07月26日(火)10時00分配信 @Press

「ワールド・ファミリー バイリンガルサイエンス研究所」(※以下、IBS)<東京都新宿区 所長:大井静雄>は2022年6月13日(月)に愛知県豊橋市立八町小学校にてイマ―ジョン教育の授業視察および豊橋市内の小中学校教員を対象とした講演を行いました。この活動は日本の英語教育の発展のためIBSが継続的に行っている取り組みです。

■ <まとめ>
・英語と日本語を使って教科を学習することによって、子どもたちが「使える英語力」を効果的に身につけている様子が観察された。
・イマージョン教育の成功には中学校〜大学を含む長期的なプログラムが不可欠であること、イマージョン教育の教え方・学び方をほかの学校でも活用できることなどについて、原田哲男教授が講演を行った。
・八町小学校の取り組みには「グローカル」(グローバル+ローカル)の視点があり、公立学校がイマージョン教育に挑戦する意義が感じられた。

■ はじめに:視察の経緯
八町小学校は、2020年度より、国語と道徳以外の教科は主に英語を使って学ぶイマージョン学級を開設。公立小学校によるイマージョン教育の導入は、国内初の取り組みであり、開始から3年目を迎えています。
IBSは、イマージョン教育の研究を行う原田哲男教授(早稲田大学教育・総合科学学術院/IBS学術アドバイザー)とともに、研究活動および社会貢献活動の一環として、2021年度から授業視察や意見交換を実施。
今回は、豊橋市内の小中学校の教員を対象に授業が公開され、IBSも第3回目となる授業視察を行いました。

■ なぜ市内の小中学校教員に授業を公開?
この授業公開は、市内全体の英語教育の質を向上させるため、「授業で用いる言語(日本語/英語)の違いにかかわらず、楽しく、わかりやすい授業をつくる」という八町小学校の取り組みや成果をほかの小中学校に共有することが目的です。豊橋市は、2005年度に「『国際共生都市・豊橋』英語教育特区」に認定され(文部科学省, 2009)、全国に先駆けて、コミュニケーションを中心とした英語授業や小学校からの英語教育を推進してきました。

豊橋市教育委員会によると、文部科学省が重視している「言語活動」を中心とした授業は定着してきたものの、中学校の学習指導要領(文部科学省, 2017)に明記されている「授業は英語で行うことを基本とする」という規定の実践には課題を抱えているとのこと。特に日本人の教員のみで授業を行う場合は、英語の使用割合が少ないため中学校の先生方に「英語で英語を教える」という指導スタイルを八町小学校の授業を通じて学んでもらいたいという想いにより、今回の授業公開が実施されました。IBSはこの取り組みに協力するべく、授業視察後、イマージョン教育の実践や知見をどのように英語授業の改善に活かすことができるか、などについて原田教授が20分間の講演を行いました。

■ 授業視察〜子どもたちはどのように英語を身につけているか?〜
3限目〜6限目にわたり、主に高学年の算数や社会の授業を視察。前回の視察時(2021年12月)は、高学年の児童たちが抽象的な概念を日本語と英語の両方で理解できていること、その背景にはさまざまな指導の工夫があることが観察されました。今回は、特に、英語学習と教科学習がうまく統合されている様子が観察されたため、CLIL(内容言語統合型学習)の理論の一つ「the language triptych(言語の三点セット)」に当てはめて、子どもたちがどのように英語を身につけているかを考察します。CLILは総称的な名称で、外国語を使って教科を学ぶイマージョン教育も典型的なCLILの一つと考えられます。日本では比較的新しい教育アプローチです。

CLILの教師は、教材を扱ったり指導案を考えたり実際に指導や評価をしたりする際には、以下の3種類の言語(外国語)を頭に入れておくべきである、と言われています(笹島, 2020)。
1. language of learning(学習の言語)
2. language for learning(学習を行うための言語)
3. language through learning(学習のなかで培われる言語)

八町小学校のイマージョン学級では、これら3種類の言語を先生が効果的に指導し、子どもたちが自然と身につけている様子が観察されました。単に子どもたちを英語漬けにすることで英語力の向上を目指すとなると、英語力が不十分な子どもは授業についていくことが難しくなりますが、八町小学校では、授業内容を理解するために必要な英語力が身につくような指導も計画的に行われています。
※詳しい考察についてはIBS公式ホームぺージをご覧ください。

■ 原田教授による講演「学習環境と英語学習〜イマージョン教育と従来の英語学習〜」
原田教授によると、イマージョン教育を受けている児童は、「言語」と「それを使う状況」の関係を無意識のうちに理解している、英語を使うことに慣れている、などの特徴があります。しかしながら、小学校卒業の段階では、英語を理解する能力(聞く、読む)は優れているものの、発信力(話す、書く)は発展途上であることから、中学校以降の教育をどうするかも考えなければならないとのこと。

イマージョン教育を成功させるためには、日本語と英語の両方をバランスよく使いながら教科を学ぶ環境が小学校で終わらず、中学校、高校、できれば大学まで続く長期的なプログラムが不可欠、と話した原田教授。
八町小学校の取り組みを成功させるためにも、また、その成果を豊橋市内の英語教育に還元するためにも、中学校以降における「英語を使って何かを学ぶ」環境づくりが重要であることがわかりました。

■ おわりに:イマージョン教育が「地域への還元」につながる可能性
今回ご紹介した通り、子どもたちは、英語を使って教科を学ぶことで、概念(意味)と英語が直接結びつく、実際に使われている英語を状況の中で理解する、自分の考えを英語で伝えようとする、という経験を日常的にしています。また、必要に応じて日本語も使いながら思考してアウトプットさせることが、効果的に英語を学習する機会につながっています。このような「英語を使う力」につながる指導・学習方法は、他教科と連携させたり、活動内容を工夫したりすれば、イマージョン教育を実施していないほかの小学校や中学校でも応用することができるため、豊橋市全体の英語教育の質向上も期待できます。

今年度から八町小学校の校長を務める山本先生からは、愛知県の中でも特に豊橋は外国籍の人が多く住んでいることから、共生社会を実現する、という意味でも地域にとって良い取り組みであることを地元の方々に知ってもらいたい、という想いを伺いました。八町小学校の取り組みには、豊橋の子どもたちが英語力を身につけてグローバルに活躍できる人材に育つように、という「Global(グローバル)」の視点と、より良い地域づくりに貢献する人材に育つように、という「Local(ローカル)」の視点の両方があります。

このような考え方は「Glocal(グローカル)」と呼ばれており、教育やビジネスなど、さまざまな分野で重視されるようになってきましたが、ここに公立学校がイマージョン教育に挑戦する意義があるのではないでしょうか。

■ ■なぜ公立小学校でイマージョン教育?〜豊橋市立八町小学校の視察から見えてきた「グローカル」の視点〜
https://bilingualscience.com/english/2022072501/

【開催概要】豊橋市立八町小学校の授業視察・市内教員向け講話
日 時:2022年6月13日(月)
13:50―14:35 公開授業(第5時限)
14:45―15:30 公開授業(第6時限)
15:40―16:00 講話(多目的室)
講師: 早稲田大学教育・総合科学学術院 教授 /IBS学術アドバイザー 原田哲男氏
他、IBS研究員同席
対 象:中学校英語担当教員/小学校英語専科教員/他参観希望者

■ワールド・ファミリーバイリンガル サイエンス研究所
(World Family's Institute of Bilingual Science)
事業内容:教育に関する研究機関
所 長:大井静雄(東京慈恵医科大学脳神経外科教授/医学博士)
所 在 地:〒160-0023 東京都新宿区西新宿4-15-7
パシフィックマークス新宿パークサイド1階
設 立:2016年10 月
U R L:https://bilingualscience.com/

プレスリリース提供元:@Press

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