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芝浦工業大学、量子科学技術研究開発機構

世界初の完全非破壊コンクリート遠隔打音検査手法を開発 コンクリート構造物のひび割れをレーザーで素早く視覚化

(@Press) 2022年02月22日(火)14時00分配信 @Press

芝浦工業大学(東京都港区/学長 山田 純)工学部機械機能工学科・細矢 直基教授、機械工学専攻 若田 祥氏、国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構(千葉県千葉市/理事長 平野 俊夫)量子ビーム科学部門関西光科学研究所・長谷川 登主幹研究員、錦野 将元研究統括らの研究チームは、コンクリート構造物の欠陥をレーザー誘起プラズマから発生する衝撃波で検出する、世界初の完全非破壊な遠隔打音検査手法を開発しました。

コンクリート建造物の健全性診断は専門の技術者による目視・打音検査で行っていますが、今後予測される需要に対して技術者不足や診断に掛かる時間の改善が必要とされています。本手法では、コンクリート構造物の表面近くにレーザー誘起プラズマでレイリー波を発生させ、欠陥部分を特定できます。建造物に直接衝撃を与えず、打音検査より計測点数が少ないことで、非破壊・遠隔で素早くコンクリート欠陥を検出します。
※この研究成果は、「International Journal of Mechanical Sciences」誌オンライン版に掲載されています。

<ポイント>
打音検査に代わる完全非破壊コンクリート遠隔打音検査手法を開発
コンクリート表面近くにレーザー誘起プラズマでレイリー波を発生させて検出

画像1: https://www.atpress.ne.jp/releases/298416/LL_img_298416_1.png
図. 遠隔非破壊検査に使用した実験装置、測定位置、レイリー波の伝播

■研究の背景
橋梁やトンネルなどの大型コンクリート構造物はその安全性を保つために、長期間の荷重によるひび割れなど、欠陥がないか定期的に検査する必要があります。通常、専門技術者による目視検査・打音検査が行われますが、構造物が大きくなるほど検査に時間がかかります。また、その検査の効果は検査員の技量に左右されます。今後増え続けるインフラの老朽化に対処するためには、検査の効率化と信頼性が課題となっています。この課題を解決するために、今回レーザー誘起プラズマから発生する衝撃波を用いて欠陥を特定する新たな方法を開発しました。この新しい手法は、より速く、遠隔でコンクリート構造物の評価を行うことが期待できます。


■研究概要
ハンマーを使った打音検査に代わる検査方法として、コンクリート構造物の表面近くに衝撃波を発生させる方法があります。この衝撃波が構造物に振動を与え、その振動を解析することで欠陥を検出することができます。そして、このような検査では、構造物に損傷を与えない衝撃波を発生させる必要があります。そこで期待されているのが、レーザー誘起プラズマ(LIP)衝撃波の発生です。この技術は、パイプから果物の表面まで、さまざまな構造物の欠陥を検出するために使用されています。この方法では、コンクリート表面近くにレーザーでプラズマを形成します。そして、このプラズマにより衝撃波を生成します。この衝撃波はハンマーで叩くことと同じ役割を果たします。

研究チームは、新しい手法を評価するため、人工的に欠陥を形成したコンクリートブロック表面近くに高出力レーザーで衝撃波を発生させました。そして、欠陥部分の内側と外側のコンクリート表面の複数の点で振動を分析しました。解析の結果、欠陥のある部位には振幅が大きなレイリー波が発生していることがわかりました。これは、他の衝撃波よりも速い速度で動く表面波です。このレイリー波が観測された箇所を検出することで、内部に埋没されたものも含めて、欠陥箇所を特定することに成功しました。
レイリー波を可視化することで、振動を解析する他の遠隔測定手法に比べて構造物の欠陥をより早く検出、固有振動モードの測定に比べて測定点数が少なく済みます。LIP衝撃波を用いたコンクリート構造物のひび割れの評価は、安全かつ迅速な方法であり、インフラの維持や構造物の破壊防止に活用できます。
今後は、本方式の社会実装を目指した改良・開発を進める予定です。


■語句説明
<レイリー波>
固体の表面を伝わる表面弾性波の一種で、伝播方向に対して平行な方向に振動します。表面近くに空洞や境目があるとその一部が反射する性質を持ち、水面に立つさざ波のように打撃点を中心として均等に広がるため、これを利用することで広い範囲の検査が可能です。

<打音検査>
検査対象をハンマーなどで叩くと、内部の状態に応じて様々な音や振動が発生します。この音や振動を検知することで、内部の状態を検査する検査方法です。現在のインフラ構造物は、全てこの手法を用いて点検が行なわれています。


■研究助成
本研究はJSPS科研費(JP21H01279)の助成を受けたものです。


■論文情報
著者 :芝浦工業大学工学部機械工学専攻 若田 祥
芝浦工業大学工学部機械機能工学科 教授細矢 直基
量子科学技術研究開発機構量子ビーム科学部門関西光科学研究所
主幹研究員 長谷川 登
量子科学技術研究開発機構量子ビーム科学部門関西光科学研究所
研究統括 錦野 将元
論文名:Defect detection of concrete in infrastructure based on
Rayleigh wave propagation generated by laser-induced plasma
shock waves
掲載誌:International Journal of Mechanical Sciences
DOI :10.1016/j.ijmecsci.2021.107039


■芝浦工業大学とは
工学部/システム理工学部/デザイン工学部/建築学部/大学院理工学研究科
https://www.shibaura-it.ac.jp/

日本屈指の海外学生派遣数を誇るグローバル教育と、多くの学生が参画する産学連携の研究活動が特長の理工系大学です。東京都とさいたま市に3つのキャンパス(芝浦、豊洲、大宮)、4学部1研究科を有し、約9千人の学生と約300人の専任教員が所属。創立100周年を迎える2027年にはアジア工科系大学トップ10を目指し、教育・研究・社会貢献に取り組んでいます。

プレスリリース提供元:@Press

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