• トップ
  • リリース
  • 1冊の本が完成するまでには膨大な時間が隠されている。村上春樹さんの「装丁」が出来るまで

プレスリリース

  • 記事画像1
  • 記事画像2
  • 記事画像3
  • 記事画像4
  • 記事画像5

1冊の本が完成するまでには膨大な時間が隠されている。村上春樹さんの「装丁」が出来るまで

(PR TIMES STORY) 2023年09月25日(月)10時02分配信 PR TIMES


株式会社玄光社が刊行する雑誌『イラストレーション』は、1979年創刊の専門誌です。これまでにプロのイラストレーターやプロを目指す人、イラストレーションに興味がある人に向けて、話題のイラストレーターの作品紹介をはじめ、そのテクニックなどを紹介してきました。


2023年7月18日(火)に刊行された『イラストレーション』2023年9月号 No.239では、村上春樹さんの著作の“装丁”に焦点を当て、約70ページにわたって特集を組みました。村上作品の愛読者はもちろん、イラストレーターやデザイナーなど、装丁に携わる仕事をされている方々からも反響を呼んでいます。このストーリーでは、村上春樹さんの「装丁」を特集した本誌が出来るまでの裏側をお伝えいたします。

大きく取り上げたかった、最新長編『街とその不確かな壁』(新潮社)の装丁のこと


かねてより実現出来たらと考えていた、村上春樹さんの装丁を特集する企画。事務所をとおして、初めて村上さんに本特集のご相談をしたのは2022年11月でした。その後、企画の調整をさせていただきつつ、2023年7月18日発売号での特集が決定。ただ、その時には2023年4月に6年ぶりの新作長編が刊行されることなど知る由もなく、もちろん当初の企画書にも、この作品の装丁に関する取材は盛り込まれていませんでした。


2023年2月1日、村上さんの書き下ろし長編小説が4月13日に新潮社より刊行されることが発表。また3月1日には、『街とその不確かな壁』というタイトルと装丁が公開されます。表紙には、力強さの中にどこか疼きを感じるような白色の文字。そして、これまでの長編にはない黒色の背景に、イラストレーターで版画家のタダジュンさんの絵が金色に光っていました。多くの読者が待っていた、6年ぶりの長編作品。その装丁は、ざわざわと気持ちが掻き立てられるような不思議な魅力をまとっています。新刊発売のまたとない機会に、ぜひその制作の裏側を知りたいと思い、追加で取材をさせていただきたいとお願いしました。


取材をさせていただいたのは、同書の装丁を手がけた新潮社装幀室の黒田貴さん、40年近く村上作品を支えてきた新潮社の担当編集・寺島哲也さんです。お二人へは、村上さんとのやり取りや、タダさんへ装画を依頼した背景を中心に話を聞きました。


これまで村上作品の装丁を考える際は、まず村上さんから何かしらのビジュアルイメージが伝えられていたといいます。ただ新作の装丁に関して、村上さんは「まずは考えてみてください」と言い、編集の寺島さん、装幀室の黒田さんに最初のアイデア出しを委ねたそうです。作品の中に手がかりを探しながら、黒田さんと議論を重ねてラフ案を考えていく過程を、寺島さんは「一番楽しくて、苦しい時間」と振り返ります。そして二人が考え抜いたいくつかの案から、村上さんが選んだのが、寺島さんと黒田さんの一押しでもあったタダジュンさんの絵が入ったデザインでした。そのほかにも本作の装丁は、タイトルの書体、カバー裏の箔押しなど、小さなこだわりの積み重ねの上に完成しており、制作プロセスそのものが一つの物語のようでした。


また、同書の装画を手がけたタダジュンさんにもお話を伺いました。創作の「きっかけ」を掴むのに苦労したというタダさんですが、試行錯誤の末、画面にある形を置いた時に「バシッとハマった感じ」がして、「描いた絵が呼吸を始めたような、命が宿ったような気持ち」になったと教えてくれました。誌面では原画のほか、制作に使用された貴重な銅版も掲載。多くの読者がいる村上作品の装画に挑む、一人のイラストレーターのひりひりとした制作の裏側を伝えています。


▲『街とその不確かな壁』(新潮社)の校正刷り。タダジュンさんの絵に使われた箔の色は、何種も校正を取って検討された。最終的に村上さんが選んだのは、落ち着いた色合いの金色だった。

元新潮社装幀室の橋千裕さん、文藝春秋デザイン部の大久保明子さんへの取材も

近年の村上作品の「装丁」を語る上で、欠かすことの出来ない二人のキーパーソン。それが元新潮社装幀室 室長の橋千裕さんと、文藝春秋デザイン部の大久保明子さんです。


1972年に新潮社に入社した橋千裕さんは、2014年に同社を退職されるまで2000冊以上を手がけ、『ねじまき鳥クロニクル』(新潮社)をはじめ、多くの村上作品の装丁を担当されています。今回は、橋さんの新潮社時代の仕事である『1Q84』(新潮社)、退職後に担当された『騎士団長殺し』(新潮社)の装丁についてその意図や狙いをお聞きしました。


▲『騎士団長殺し』(新潮社)は、装画を手がけたイラストレーターのチカツタケオさんと共に当時の制作を振り返ってもらった。表紙を飾る「架空」の剣には、読者を喜ばせる仕掛けが施されている。


また文藝春秋デザイン部の大久保明子さんには、近年装丁を担当された『猫を棄てる 父親について語るとき』、『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』、『一人称単数』、『女のいない男たち』(すべて文藝春秋)の4作品について取材。装画を手がけたイラストレーターや漫画家からのコメントと共に、それぞれの装丁が完成するまでの背景を紹介しています。


▲『猫を棄てる 父親について語るとき』(文藝春秋)の装画を手がけたのは、イラストレーター・漫画家の高妍(ガオ・イェン)さん。高さんは村上作品の愛読者でもあり、依頼が来た時のことを「いま考えても夢のような瞬間」だったと振り返った。


▲ 本誌の表紙と扉絵は、高妍さんの描き下ろし。


このほか本誌では、村上作品の全著作の書影を掲載した「村上春樹 装丁クロニクル」や、イラストレーターと絵本作家9名が村上作品をテーマに絵を描き下ろした「村上春樹作品へのオマージュ」など、〈デザイン〉や〈イラストレーション〉の観点から村上作品に光を当てたさまざまな企画を掲載しています。


1冊の本が出来上がるまでの膨大な時間と、隠されたたくさんのこだわり。イラストレーター、デザイナー、編集者など本の制作に携わる方々の声をとおして、村上作品の豊かで多様な「装丁」の魅力を改めて感じていただきたいです。


▲「村上春樹 装丁クロニクル」のページ。早稲田大学国際文学館(村上春樹ライブラリー)協力のもと、村上さんの翻訳を除く全著作の装丁を12ページにわたって紹介している。


『イラストレーション』(1・4・7・10月の18日発売/発行:玄光社)

雑誌『イラストレーション』は、1979年創刊の専門誌です。イラストレーター、マンガ家、絵本作家など、さまざまな作家を特集しています。

【公式サイト】https://illustration-mag.jp

【公式Twitter】https://twitter.com/illustration_g

【公式Instagram】https://www.instagram.com/illustration_mg


【商品概要】

書名:イラストレーション 2023年9月号 No.239

発売日:2023年7月18

定価:本体1,600円+税

仕様:A4変型判 118ページ

JAN:4910016790931

アマゾン:https://amzn.to/44zRv3z

出版元:株式会社光社


【会社概要】

商号:株式会社光社

所在地:〒102-8716 東京都千代区飯橋4-1-5

設:1931年

事業内容:出版

URL:https://www.genkosha.co.jp







このページの先頭へ戻る