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学校法人明治大学

情報開示された男女の賃金格差をどう読むか?

(PR TIMES) 2023年07月11日(火)17時15分配信 PR TIMES

明治大学政治経済学部 原ひろみ教授が男女の賃金差異の算出・公表に関する提言を発表

明治大学政治経済学部 原ひろみ教授は、女性活躍推進法改正により企業に義務付けられた男女の賃金差異の算出・公表について、関連する統計情報の分析および論点の整理を行ったポリシー・ディスカッション・ペーパーを発表しました。
●ポイント
1.2022年7月の女性活躍推進法改正により、従業員数301人以上の企業は、男女従業員の賃金差異の公表が義務付けられました。今回、原教授が、厚生労働省が定める計算方法*1により日本企業の平均を計算したところ、全ての労働者の男女の賃金差異は65.4%でした。また、正規労働者の男女の賃金差異は73.6%、非正規労働者は88.2%でした。


2.企業各社の実情が社会に正しく認識されるためには、開示情報の値が自社のどのような要因が反映された結果なのかを各社で分析し、より詳細な情報や補足的な情報もあわせて公表することが不可欠です。本発表では、そのための分析の際の主なチェックポイントとして、以下の5点を示しました。
1.実労働時間の男女差 2.勤続年数の男女差 3.事業所の女性割合 4.女性労働者に占める非正規割合 5.管理職に占める女性割合


3.日本では、男女の賃金情報の開示を求める政策は始まったばかりですが、諸外国では以前から導入されています。本発表では、この政策に男女の賃金格差縮小効果があることを報告している複数の国の研究を紹介しています。


●発表内容
 2022年7月の女性活躍推進法改正により、日本でも常用労働者数301人以上の企業は、厚生労働省が定める計算方法*1で算出した各社の男性従業員と女性従業員の平均賃金の格差(厚生労働省の定義する情報公表項目名は「男女の賃金の差異」)を、公表することが義務付けられました。


 男女の賃金格差という観点では、2022年8月に「人的資本可視化指針」*2 が内閣官房より発表され、有価証券報告書を発行する約4,000社の大手企業は、中長期的な企業価値判断に必要な項目として、2023年3月期決算から有価証券報告書の中に人的資本に関する情報開示が義務付けられ、男女の賃金格差も、企業の多様性に関連する情報として開示を求められる項目の一つとなっています。
 男女の賃金格差に関する情報を把握・開示するにあたり、自社の実情を理解し、正しく発信するためには、他社との比較という視点が欠かせません。また、格差がある場合は、その理由・原因を把握し、社会に説明することが、企業にとって重要になってきます。しかし、男女の賃金格差の情報を把握・開示することは簡単にできることではないので、データを収集し、分析のための準備が必要になります。
 
 本発表では、厚生労働省が定める計算方法で算出する「男女の賃金差異」の平均等の統計情報を提供し、各社が他社の状況との比較に使える統計情報を提供しています。
 
 厚生労働省が定める計算方法*1に則って集計した結果、2021年の全ての労働者の男女の賃金差異は平均で65.4%でした。「全ての労働者」には正規労働者と非正規労働者の両者が含まれ、この値は、日本の平均的な企業では、男性の平均賃金を100とした場合、女性の平均賃金は65.4であることを意味します。
また、正規労働者と非正規労働者を別に集計した値では、正規労働者の男女の賃金差異は73.6%、非正規労働者は88.2%でした。図は、労働者の区分別にその分布を示したものです。なお、産業別・企業規模別のより詳細な集計結果はポリシー・ディスカッション・ペーパー本文に掲載されています。

図 労働者の区分別、男女の賃金差異の分布


[画像1: https://prtimes.jp/i/119558/27/resize/d119558-27-4c892d5cb4f96e1e982b-0.png ]

[画像2: https://prtimes.jp/i/119558/27/resize/d119558-27-58ac26daa03240795614-0.png ]


[画像3: https://prtimes.jp/i/119558/27/resize/d119558-27-b0ed3b1d6d4db76422e4-0.png ]

注:縦軸の値は、男女の賃金差異の値10%ごとの事業所の割合を表す。たとえば、全ての労働者の男女の賃金差異が60%台の事業所の割合は0.2(20%)である。使用データの関係上、事業所単位での集計になっている。
データ:厚生労働省『賃金構造基本統計調査(2021年)』

 各社の男女の賃金差異には、人的資本や働き方の男女差が反映された格差が含まれます。よって、各社の実情を社会に正しく認識してもらうために、開示情報にある値が自社のどのような要因が反映された結果なのかを各社で分析し、より詳細な情報や補足的な情報もあわせて公表することが不可欠ですし、厚生労働省も推奨しています*1。本文では、各社の分析の際の主なチェックポイントとして、以下5つの要因を提案しています。
1.実労働時間の男女差、2.勤続年数の男女差、3.事業所の女性割合、4.女性労働者に占める非正規割合、5.管理職に占める女性割合


 日本では、男女の賃金情報の開示を求める政策は始まったばかりですが、2000年代以降、英国やデンマークなど諸外国で既に導入され、複数の国でこの政策によって男女の賃金格差が縮小したことが研究結果として報告されています。
 諸外国の報告結果を鑑みると、賃金情報開示政策の導入は男女の賃金格差の縮小につながることが現時点では期待されますが、将来的には、日本のデータを用いた効果検証が必要であることは言うまでもありません。


[注釈解説]
*1 例えば、厚生労働省「女性活躍推進法に基づく男女の賃金差異の情報公表について」を参照のこと。https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000970984.pdf
*2 例えば、内閣官房から公表された「人的資本可視化指針」を参照のこと。https://www.cas.go.jp/jp/houdou/pdf/20220830shiryou1.pdf

●ポリシー・ディスカッション・ペーパー情報
原ひろみ (2023) 「男女の賃金情報開示施策:女性活躍推進法に基づく男女の賃金差異の算出・公表に関する論点整理」, RIETI Policy Discussion Paper Series 23-P-009.
URL: https://www.rieti.go.jp/jp/publications/summary/23070007.html
※本研究は、独立行政法人経済産業研究所(RIETI)におけるプロジェクト「日本の労働市場に関する実証研究」の一部です。
また、JSPS科研費(22K01541,22H00057)の助成を受けた原教授の研究活動の成果の一部です。
※本研究は、厚生労働省の承諾をうけて『賃金構造基本統計調査』の調査票情報を利用しました。



プレスリリース提供:PR TIMES

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