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株式会社イデアラボ

在宅勤務は男性の育児参加を促す

(PR TIMES) 2022年08月18日(木)19時15分配信 PR TIMES

夫婦のコミュニケーションや育児環境に関する研究成果

株式会社イデアラボの児玉(渡邉)茉奈美、浅野昭祐、ユニ・チャーム株式会社 共生社会研究所の菅文美、成戸洋介の研究グループは、夫婦へのインタビューや夫へのアンケート調査をもとに男性の育児参加を促す要因を明らかにしました。

本研究は、夫が「在宅勤務である」「子どもの笑顔や成長を見て幸せを感じる」「自分が育児や家事をしたことに対して肯定的な評価を受けていると感じる」という点が父親の育児参加を促進することを示したものです。
コロナ禍で企業の勤務体系が子育て家庭に与え得る影響が明らかになり、社会で注目される「男性の育児参加」に対して新たな知見を提供しました。

本研究成果は、日本家政学会誌の73巻6号にて公開されました。

[画像1: https://prtimes.jp/i/105596/1/resize/d105596-1-ce1eeb2679c5315c0cf1-2.jpg ]




研究成果のポイント



コロナ禍での夫の家事育児を促進/阻害する要因を整理した
主な促進要因:在宅勤務、子どもとの幸せな時間、妻や友人から育児や家事への称賛・感謝がある
企業や社会からの働きかけとして,可能な限り在宅勤務を認めること、夫にできるだけ子どもの笑顔や成長を見る機会を設けることの必要性が示された




研究の背景

 内閣府が掲げる少子化対策の重点課題として「男性の家事・育児参画の促進」が挙げられており(内閣府, 2022)、長時間労働の是正やテレワーク推進、2022年10月からは男性育休制度が新設されるなどの対策が始まっています。男性の育児参加が社会の重要課題とされつつも、実態としては既婚女性が1日4時間55分家事に費やしているのに対して既婚男性は49分であり、依然として大きな差があることが課題です(総務省, 2019)。

 研究データを取得した2020年8月は新型コロナウイルスの蔓延によって家族以外との交流の制限があり、家庭外からの育児のサポートが少ない状態で、妻や子どもにとって夫の育児参加がより重要な状況であったと考えています。また,在宅勤務の普及により家にいる時間が増え,事前の育児参加に関する意志に関わらず育児に参加する状況になったことも考えられます。本研究は、そのような状況下で第一子の育児を行う父親の育児参加を促進/阻害する要因を明らかにするために行われました。


研究の内容

本研究は2つの研究結果をまとめたものであり、研究1では10組の夫婦を対象に行った半構造化面接(インタビュー)から夫の育児参加についての仮説モデルを生成し、研究2では360名の夫を対象に質問紙調査(アンケート)を実施して、研究1で生成されたモデルの検証を行いました。研究のまとめとして、夫の育児参加を促進/阻害する要因を整理したモデルを生成しました。

[画像2: https://prtimes.jp/i/105596/1/resize/d105596-1-505afc65136b267dc1ec-0.png ]

[画像3: https://prtimes.jp/i/105596/1/resize/d105596-1-5d908f4efd5f23fff9a7-1.png ]



研究の結果、夫の育児参加を促す要因として(1)夫が在宅勤務であること、(2)夫が子どもの笑顔や成長を見て幸せを感じること、(3)妻や友人から夫の育児に対する称賛・感謝があること、の3つが示されました。



社会への影響

父親が育児に参加することは、共に育児を行う妻だけではなく子どもや夫自身にとっても重要な意義があると考えられています(桐野ら, 2011; 加藤ら, 2002; 森下, 2006)。また,これまで子どもから父親への働きかけが育児参加に影響を与えていることは知られていましたが(森下, 2006)、それとは別に父親が子供の笑顔や成長を肯定的に評価しているかどうかも重要な要因であることが新たにわかりました。

 総務省の調査によると、コロナ禍で在宅勤務を導入した1209社のうち、約8割が収束後も在宅勤務を活用する予定または検討中と回答しています(総務省, 2021)。今後感染症対策が必要でなくなったとしても、本研究の結果からは勤務体系を柔軟にすることが子育てを支援することにつながる可能性が示されています。

 企業や社会が男性の育児参加を促すためには、可能な限り在宅勤務を認めたり、できるだけ子どもの笑顔や成長を見る機会を設けたりするよう働きかけることが必要なのではないかと考えます。



研究員からのコメント

 本研究からは,次の三点が明らかになりました。第一に,コロナ禍状況下でも出社していることは,父親の育児参加の大きな障壁となることが示されました。コロナ禍状況下で,多くの企業が在宅勤務の体制を整えました。今後も,できる限り在宅勤務を許容する社会づくりが期待されます。第二に,子どもの笑顔や成長を見ることが,父親の育児参加のモチベーションを高めることが示されました。例え出社していたとしても,スマートフォンなどを通して,日々の子どもの笑顔や成長を見る機会を与えることが父親にとって必要なのかもしれません。第三に,妻や友人から夫への称賛や感謝も親の育児参加を促すことが示されました。(本研究では検討対象にしていませんでしたが、普段育児をしている母親に対して称賛や感謝をすることも、もちろん大切なことだと思いますので)是非夫婦間で,一日一つでもポジティブな言葉をかけ合うルールを作ってみてはいかがでしょうか。

 今後も,コロナ禍状況の継続や,新たな社会状況の変化が生じる可能性は否めません。そうした中で,本研究から得られた知見を参考に,夫婦で前向きに育児に向かっていただけると,本研究の大きな意義の一つになると考えております。

児玉(渡邉)茉奈美
株式会社イデアラボ 研究員
博士(教育学)


原論文情報

児玉(渡邉)茉奈美・浅野昭祐・菅文美・成戸洋介(2022). コロナ禍という特殊な状況下での第一子に対する父親の育児参加の阻害/促進要因の検討: 在宅勤務の増加と家庭外からの支援のなさに着目して 日本家政学会誌, 73(6), 306-320.

論文は下記リンクからオープンアクセスでご覧いただけます
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jhej/73/6/73_306/_article/-char/ja/



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