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日本電信電話株式会社

世界最大14.1THz帯域での長距離一括光パラメトリック増幅中継伝送に成功 〜IOWN/6Gにおけるオールフォトニクス・ネットワークの波長資源拡張技術として期待〜

(Digital PR Platform) 2023年06月16日(金)15時00分配信 Digital PR Platform

 日本電信電話株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:島田 明、以下「NTT」)は、光パラメトリック増幅(OPA)(※1)を用いた広帯域一括増幅中継器を世界で初めて構成し、OPA中継器としては世界最大(※2)となる14.1THz帯域を実現、波長多重信号の一括光増幅中継伝送実験(以下本実験)に成功しました。
  本実証では、NTTが独自に開発を進めてきた技術を用いて、伝送容量を低減することなく光増幅中継間隔 80kmを保ち、400kmにわたる長距離一括光増幅中継伝送を実現しています。光増幅中継においては、光パラメトリック増幅の帯域を最大限活用可能な光増幅中継器を構成し、さらに増幅帯域制御技術を融合することで光増幅帯域を従来の3倍以上の14.1THzまで広帯域化することができました。
 今回の成果は、光ファイバ上で使用可能な波長資源を、従来増幅中継器の3倍以上に拡張する技術の実現可能性を示したものであり、IOWN(※4)/6Gにおけるオールフォトニクス・ネットワークの拡張につながる将来の基盤技術として期待されます。



[画像1]https://user.pr-automation.jp/simg/2341/72630/700_427_20230615201223648af2174979f.PNG

図1:光パラメトリック増幅中継伝送における本成果の位置づけ

1.研究の背景
 現在の光ネットワークでは、約4THzの増幅帯域をもつ光増幅器(EDFA)が広く用いられており、波長多重されたデジタルコヒーレント(※5)光信号を、中継間隔約80kmで光のまま増幅中継し、目的地まで長距離伝送しています。従来は、既存の光ネットワークと同じ中継間隔を保ちつつ、伝送する1波長あたり光信号を高速化することによって伝送容量の拡大をはかってきました。NTTが提唱するIOWNの基幹網となるオールフォトニクス・ネットワークにおいては、豊富な波長資源を活用したフレキシブルな光ネットワークの実現をめざしており、1波長あたりの光信号の高速化に加えて、利用可能な波長資源(光帯域)の拡大が求められています。NTTでは、PPLN導波路[2]を用いた光パラメトリック増幅を用いた広帯域増幅中継の可能性を世界に先駆けて実証(※6)してきましたが、その中継間隔は30kmであり、増幅帯域と中継間隔の両立が技術課題となっていました。

2.研究の成果
 今回、光パラメトリック増幅の帯域を最大限活用可能な光増幅中継器を世界で初めて構成し、従来の一括増幅帯域の2倍以上であるOPA中継器としては世界最大の14.1THzの一括増幅帯域幅を実現し、中継間隔 80kmで最長400kmの広帯域一括光増幅中継伝送に成功しました(図1)。
 本成果は、NTT独自のPPLN導波路モジュール技術と光パラメトリック増幅の帯域制御技術の融合により達成されました。本成果は、2023年3月5日から3月9日に米国カリフォルニア州サンディエゴで開催された光通信技術に関する国際会議OFC2023(The Optical Networking and Communication Conference & Exhibition)の最難関発表セッションであるポストデッドライン論文[1]として発表されました。

2.1 PPLN型光パラメトリック増幅中継器
 本成果の光増幅中継器は、中継間隔80kmに対して十分な増幅利得を得るためプリアンプ部とポストアンプ部からなる2段構成を採用しました。また、光パラメトリック増幅で波長多重(WDM)信号を増幅する場合、WDM信号を基本波長(λF)を中心に2つの波長帯域に分割して増幅する必要があるため、各増幅段は、長波長帯と短波長帯の信号増幅用の偏波多重信号に対応した特性のそろった増幅部で構成する必要があります。今回試作したOPA光増幅中継器では、NTTの独自技術により実装した特性の揃った複数のPPLN導波路モジュールを実現・適用しました。さらに、光パラメトリック増幅の帯域制御技術を適用し、増幅利得のピーク波長を基本波長から遠ざかる方向にシフトさせ、長波長側では、7.5THz以上、短波長側では、6.5THz以上まで光増幅帯域を拡大しました。結果、一括増幅帯域としては14THz以上の光増幅帯域(図3)を実現し、従来の実験例(※6)と比較し、2倍以上の広帯域化を達成しました。



[画像2]https://user.pr-automation.jp/simg/2341/72630/700_215_20230615201602648af2f214961.PNG

図2:本成果で用いた光パラメトリック増幅中継器の構成とPPLN導波路モジュール



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図3:光パラメトリック中継器における各増幅部の広帯域特性

2.2 14.1THz帯域一括光増幅中継伝送
 今回、提案構成の光パラメトリック増幅中継器およびシングルモードファイバを用いて図4に示す中継間隔 80kmの周回伝送評価系(※7)を構築し、広帯域光増幅中継伝送実験を実施しました。評価用広帯域波長多重信号は、チャネル間隔137.5GHzを想定し、OPAの基本波長から短波側に48チャネル6.6THz、長波側に55 チャネル、7.56THzを配置しました。103チャネルの波長多重信号としての合計帯域は14.16THzとなります。また、各波長のデジタルコヒーレント信号として、シンボルレート(※8)が132ギガボーの偏波多重 PCS-QAM信号(※9)を採用し、増幅中継伝送後の信号特性を評価しました。図5に示すように、400km(80km×5中継)伝送後では、全波長で600ギガビット毎秒以上のビットレートかつ総容量70.4テラビット毎秒を得ており、中継間隔80kmの光ファイバ伝送路においてPPLN型光パラメトリック増幅中継器を用いて14.1THzの広帯域一括光増幅中継伝送に成功しています。



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図4:広帯域光増幅中継伝送実験系



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図5:14.1THz広帯域光増幅中継伝送結果

3.今後の展開
 本技術を用いることで、シングルモード光ファイバ上の波長資源が従来の3倍以上に拡大されることが期待されます。特に、波長資源拡大技術は、図6に示すように波長当たりの高速化(マルチテラビット化)技術(※10)と融合することで、伝送容量と距離のスケーラビリティを大きく拡大する技術としても期待されています。NTTでは、2030年代のIOWN/6Gにおけるオールフォトニクス・ネットワークの実現に向けて、独自のデバイス技術、デジタル信号処理技術、光伝送技術の融合を深化させ、研究開発を進めていきます。



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図6:本成果と今後の展開

<参考文献>
1. T. Kobayashi, S. Shimizu, M. Nakamura, T. Kazama, M. Abe, T. Umeki, A. Kawai, F. Hamaoka, M. Nagatani, H. Yamazaki, and Y. Miyamoto, "103-ch. 132-Gbaud PS-QAM Signal Inline-amplified Transmission with 14.1-THz Bandwidth Lumped PPLN-based OPAs over 400-km G.652.D SMF," in Proc. Optical Fiber Communication Conference (OFC) 2023, paper Th4B.6, 2023. https://doi.org/10.1364/OFC.2023.Th4B.6

2. T. Umeki, O. Tadanaga, and M. Asobe: "Highly efficient wavelength converter using direct-bonded PPZnLN ridge waveguide," IEEE J. Quantum Electron., Vol.46, No.8, pp.1206-1213, 2010.

<用語解説>
※1 光パラメトリック増幅技術(OPA:Optical Parametric Amplifier)
物質中で生じる非線形光学効果を利用して、異なる波長の光同士を相互作用させることで、特定の
波長の光を増幅する技術です。非線形媒質として、高非線形ファイバやニオブ酸リチウムが知られ
ています。

※2 2023年6月現在。NTT調べ。

※3 周期的分極反転ニオブ酸リチウム(PPLN:Periodically Poled Lithium Niobate)
非線形媒質であるニオブ酸リチウム(LiNbO3)において、自発分極と呼ばれる結晶内の正負の電荷
の向きを一定の周期で強制反転させた人工結晶です。周期的分極反転ニオブ酸リチウムは、元の
ニオブ酸リチウム結晶よりも圧倒的に高い非線形光学効果を得ることが出来ます。

※4 IOWN:
NTT ニュースリリース「NTT Technology Report for Smart World:What’s IOWN?」の発表について
http://www.ntt.co.jp/news2019/1905/190509b.html120

※5 デジタルコヒーレント:
デジタルコヒーレント技術とは、デジタル信号処理とコヒーレント受信と組み合わせた高効率な光伝
送方式です。コヒーレント受信とは、受信側に配置した光源と、受信した光信号を干渉させることに
より、光の振幅と位相を受信することが可能な技術です。偏波多重や位相変調などの変調方式に
より周波数利用効率を向上させるとともに、デジタル信号処理を用いた高精度な光信号の補償と、
コヒーレント受信により、大幅な受信感度向上を実現します。

※6 NTT ニュースリリース「世界初、光パラメトリック増幅器による広帯域光増幅中継伝送に成功
〜従来光増幅器の2倍超の大容量化が可能に〜」
https://group.ntt/jp/newsrelease/2021/01/28/210128b.html

※7 周回伝送評価系:
光増幅器や伝送路ファイバをループ状に接続し、光スイッチで光信号の入出力タイミングをコントロ
ールすることで、少ない機材で、長距離の光増幅中継伝送を試験できる実験方式

※8 シンボルレート:
1秒間に光波形が切り替わる回数。132ギガボーの光信号は、光波形を1秒間に1320億回切り替
えて情報を伝送しています。

※9 PCS-QAM信号
PCS(Probabilistic Constellation Shaping)とは、情報理論に基づき信号点の分布と配置を最適化す
ることにより、信号伝送に必要な信号対雑音比の条件を軽減する技術です。QAM(Quadrature
Amplitude Modulation)とは、信号光の振幅と位相の両方に情報を乗せる変調方式です。PCS技術
をQAM方式に適用することにより、伝送路条件に応じて信号品質を最適化することが可能となりま
す。本成果では、PCS-36QAMとPCS-16QAMを評価信号として用いています。

※10 波長当たりの高速化(マルチテラビット化)技術:
NTTニュースリリース「世界最高速、1波長あたり毎秒2テラビット超の光伝送実験に成功
〜IOWN/6Gにおけるオールフォトニクス・ネットワークの大容量化・長距離化技術として期待〜」
https://group.ntt/jp/newsrelease/2022/09/22/220922a.html

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