プレスリリース
“メイドインジャパン”だけでは売れない時代にチャンスを生む「サステナビリティ」 〜 ビジネスに活用できる「認証選び」のポイント〜
「SDGs」「サステナビリティ」「エシカル」といったキーワードが世間一般にも広まるようになり、消費活動にも変化を及ぼしている現代。企業でもSDGsへの注力や諸問題への言及が目立つようになった。
しかし、こうした流れをうまくビジネス成長に繋げている企業もあれば、リソースや戦略の不足により、対応できていない企業も数多く、まだまだ途上という段階だ。
取り組みを進めていく企業にとって、自社の活動やプロダクトに対して社会的な「お墨付き」を得られるかどうかは重要なポイントになる。そうしたニーズや消費者にとっての判断基準を生み出すために、さまざまなマークや認証制度が存在するが、その認証自体の信頼性や意義については意外と見落としがちだ。
今回は一つの視点として、そうした認証制度の「認定」の役割を担う独立行政法人 製品評価技術基盤機構(通称:NITE)から見る、これからの企業とサステナビリティのあり方を紹介する。
情報過多の時代に重要となる「認証選び」
「日本に比べて消費者意識が高まっている海外では、SDGsへの取り組みがブランド価値に直結するようになっています。」
NITEでサステナブル関連の認証制度の認定に関わる大内、大西はそう語る。
NITEは1928年に誕生した絹織物の品質検査を行う輸出絹織物検査所を前身とした経済産業省の所管の組織体であり、製品・化学物質などの安全性や認定・評価技術分野を担う団体だ。ニュース番組で流れる製品事故などの映像提供が日常生活でのわかりやすい接点かもしれない。
そんなNITEが行っている活動の1つであるNITE認定センター(IAJapan)が開発する認定プログラム「ASNITE(アズナイト)」では、認証制度を扱う機関、すなわち認証機関に対して、認定を行っている。つまり、ある商品の認証を行っている事業者に問題がないかを認定し、その信頼性に「お墨付き」を与える存在だ。
情報が溢れる時代、安全性の担保や製品訴求に用いられる「第三者評価」として重宝され、さまざまな分野で数多く存在する認証機関を評価・認定する機関ということになる。
サステナブル関連の認証制度の認定をはじめたのは2019年とつい最近のことだが、企業のSDGs、サステナブルやエシカルな活動に注力することの意義と企業側の課題感の高まりをNITEとしても感じているという。今は”メイドインジャパン”ということだけでは売れない時代になっていると言える。
そこにはサステナブルな活動に取り組まないことによるリスクはもちろん、取り組むことでの新たなビジネスチャンス、という面でのメリットにも注目されてきた側面があると語る。
「環境や人権に配慮しないことは、消費者や社会からの信頼を失うリスクになります。一定の認証をとっていないと調達や生産販売に影響が出る場合もあり、リスクヘッジとしての側面もありますが、逆に取り組みによる訴求効果やブランド価値の向上など、長期的な価値創造の面も見逃せません。また最近では、自社の取り組みによる従業員エンゲージメントへの好影響という面も注目されています。」
とはいえ、企業としてSDGs、サステナブルな活動に取り組むにはある程度の人的リソースも必要となる。専門の部署を立ち上げられるような大手企業は一握りで、中小企業にとっては手が回らない部分もある。
そうした企業こそ認証制度を活用することで、工数を抑えながら製品についての信頼性の担保が獲得できる。このような観点で日本における代表的な成功事例となっているのが消費者にも馴染み深い「エコマーク」だ。
エコマークは、1989年に生まれた、「生産」から「廃棄」にわたるライフサイクル全体を通して環境への負荷が少なく、環境保全に役立つと認められた商品につけられる環境ラベル。国内では「グリーン購入法」の調達基準として活用されている品目も多いため、製品にエコマークをつけることは、新たなビジネスチャンスの創出につながる。
2023年3月には、NITEがエコマークの認証機関である公益財団法人日本環境協会を認定し、エコマークのさらなる信頼性向上にも貢献している。
NITE、国内唯一のエコマーク認証機関を国際規格により認定|独立行政法人製品評価技術基盤機構のプレスリリース (prtimes.jp)
重要なのは「サプライチェーン全体」へのまなざし
SDGsへの関心が高まるなかで、大きな問題として取り上げられるようになった観点として、製品の製造過程、サプライチェーンに対しての問題、原料の生産での過重労働・児童就労などが、国際的な課題として受け止められている。
SDGs、サステナブルやエシカルな活動に取り組む上での重要なポイントは『一企業だけでは完結しない』ということ、すなわち原料の採取から廃棄までのライフサイクル全体や、原材料から流通までのサプライチェーン全体を見ていく必要があり、そのための適切な指標を設定する必要がある。
こうしたリスクをきちんと捉え、社会的信頼性を保ちながら対応していく手法の1つとして、信頼できる認証の利用がある。
「『Textile Exchange認証』は、アメリカ発の持続可能な繊維産業・リサイクル産業への貢献を目指して作られた国際的なサステナブル認証の1つで、特徴的なのは“部分的な製造”ではなく“サプライチェーン全体”を対象としている点です。つまりサプライチェーンを通じて製品が適切に管理・加工されていることを証明する認証制度であり、現代の問題意識に即した制度と言えます。」
アパレル業界では、一部の大手アパレル企業がTextile Exchange認証取得を調達条件として課しており、企業成長にとって対応が非常に重要なものになってくる。
海外展開に向けた認証制度の重要性と、その上で考えるべきこと
海外進出を考えている企業にとっては、冒頭に引用した通り、海外の消費者意識としてサステナビリティ、エシカルへの配慮が消費行動に与える影響が大きいことはもちろん、認証を取得していないことが障害となる可能性があり、認証取得の必要性を事前調査することも重要になってくる。
ただ、Textile Exchange認証のような国際的な認証制度は、全て外国語の専門的な規格になるため、規格の文脈を理解するのが非常に難しい。
また、日本の認証機関が存在しておらず、企業の申請の手続きのハードルが高かったことが課題であった。NITEは国内で初めて、日本の認証機関を認定したことにより、企業の認証取得のハードルを下げることができ、競争力確保につながっている。
そうした活動を通して海外の状況のキャッチアップと日本国内への展開のハブのような存在になっているNITEだからこそ考えていることがあるという。
「海外からの信頼性を担保することはもちろんですが、EUを筆頭にした諸外国の”ルールメイキング”の上手さを学び、従うだけでなく渡り合える存在になることが重要だと考えています。我々の役割は、社会ニーズの変化に合わせた認定プログラムを構築することと共に、海外の状況に対し積極的な参加を促し日本企業が”ルールメイカー”になること、そのための競争力強化に向けた積極的なサポートをしていくことだと思っています。」
国際的にも目まぐるしく変化するニーズに対応していかなければならない中で、NITEが担う役割は大きく、特に日本企業が今後海外ビジネスを展開していく上で、認証制度とその信頼性を担保する認定に対する理解はより重要なものになっていくだろう。
(左から、NITE認定センターの大西、大内)